表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/69

恋敵VS恋敵、ロゼリス推しカプの愛を守り抜く

夜のアーバートン邸。

カーテンの隙間から差し込む月明かりが、机いっぱいに広げられたノートを照らしていた。

そこに並ぶのはびっしりと書き込まれた“乙女ゲーム《運命と君と》攻略メモ”。

ロゼリスは真剣な顔でページをめくりながら、うんうんとうなっていた。


「……まずいわ……このままだと、推しカプが危ないですわ……!」


彼女の“推し”とはもちろん、ルチア様とシルビア殿下の尊き恋のこと。

だが今、その尊き均衡を揺るがす存在が現れたのだ。


エルバーノ・リリネ・フォード。


その名を口にした瞬間、ロゼリスの眉間に深いしわが寄る。


「まさかこのタイミングで転入してくるなんて……!リリネ嬢、あなたという人は、ほんっとうに厄介だわ!」


ペンを握る手に力がこもる。

そして彼女は、自らの“前世の記憶”を頼りに、頭の中でゲームのストーリーを再生し始めた。


◇◇◇


エルバーノ伯爵家、王国の中でもアーバートン家に並ぶほどの有力貴族。

リリネ嬢はその一人娘として生まれ、幼い頃からシルビア殿下の婚約者として育てられた。


だが問題はその性格だった。


「……遊び癖、虚言癖、男癖、全部そろってるわよね……」


ロゼリスはため息をつきながら、ノートに書き足す。


【リリネ嬢:表向きは優雅で完璧、内面は嫉妬と虚栄の塊】


婚約期間中も浮ついた噂が絶えず、シルビア殿下を幾度となく困らせた。

そして極めつけはー


「……“あの事件”ね」


学院入学前、シルビア殿下に迫ったリリネ嬢。

拒絶された腹いせに、自らの“純潔を奪われた”と嘘を広めたのだ。

それが国王陛下の耳に入り、婚約は破棄。

リリネ嬢は一族の恥として三年間、辺境に幽閉された。


ゲームでは

三年後、学院に転入し、ルチア様とシルビア殿下の関係を知って再び暗躍を始める。


「自分の隣にいるはずだった殿下が、別の女性を愛している……そりゃ、リリネ嬢も逆上するわね。

でも推しカプを壊そうとするなんて、赦せませんわ!!」


バンッ!

ロゼリスは机を叩き、勢いよく立ち上がった。


◇◇◇


紅茶を注ぎながら、執事のキースが小さくため息を漏らす。

「また“尊み任務”ですか?」

「そうよ! 今回は特級任務よ! リリネ嬢の初手は“悪評ばらまき”から始まるの。

ルチア様を孤立させて、そのあとトイレで水をぶっかけるの!」

「……いじめですね」

「そう! 乙女ゲーム界の定番イベントよ! だから阻止するの!!」


ロゼリスはペンをくるくる回し、ノートのページに新しい項目を書き込む。


【緊急任務:推しへのいじめ阻止計画】

目標:ルチア様の名誉と尊厳を守る!

敵性対象:エルバーノ・リリネ・フォード

作戦:悪評拡散阻止 → トイレ水事件の防止

危険度:★★★★★


「ふふ……いい? キース。この恋の戦争、私は絶対に勝つわ」

「お嬢様、それは“恋”ではなく、“戦争”です」

「愛も戦も、やるからには勝たなくちゃ意味がないの!」


そう言い放ち、ロゼリスは夜の帳の中へと駆け出した。


◇◇◇


翌朝の学院。

ルチア様はいつも通り、花壇の手入れをしていた。

そこに、取り巻きを連れたリリネ嬢が現れる。

微笑みを浮かべたまま、毒を仕込むように言葉を紡ぐ。


「まぁ……平民の方でも、こうして学院に通えるなんて素敵ですわね。

シルビア殿下もお優しいこと」


「……ありがとうございます」

ルチア様は穏やかに返す。

だが、その背後で取り巻きたちがひそひそと囁くのをロゼリスは見逃さなかった。


(出たわね、悪評ばらまきイベント……!)


ロゼリスは木陰から飛び出し、リリネ嬢の前に立ちはだかる。


「――おや、何やら愉快なお話をしているようですわね」


紅の髪を揺らしながら、にっこり微笑む。

だが、その笑みは氷のように冷たい。


「ルチア様を悪く言うなんて、趣味が悪いですこと。

あら、もしかして“嫉妬”かしら? ご自分が殿下に選ばれなかったことへの」


「……なっ」

リリネ嬢の完璧な笑顔が、わずかに揺らぐ。


「ご安心なさい、リリネ嬢。殿下は優しい方ですもの。

貴方のような方でも、きっと“哀れ”とは思ってくださるわ♡」


中庭がざわつく。

リリネ嬢が言葉を失う中、ルチア様はぽかんと口を開けていた。


(よし、第一段階クリア! 推しの孤立フラグ、回避成功!!)


ロゼリスは内心ガッツポーズを取ると、そっとルチア様の手を取って微笑んだ。

「ルチア様、参りましょう。花壇の続きをなさるのでしょう?」


その姿は、まるで本物のヒロイン。


◇◇◇


その頃、離れた校舎の窓から二人を見ていたアーロンがぼそりと呟く。

「……また何かやってるな、あいつ」

「“推し防衛任務”だそうです」ルミナスが笑う。

「……ほんと、放っておけねぇ奴だ」

アーロンは苦笑しながらも、どこか誇らしげだった。


◇◇◇


その夜のロゼリスのノートには――新しい報告が増えていた。


【本日の尊み任務:成功】

内容:悪評拡散阻止。推しの尊厳を守る。

副作用:リリネ嬢の敵意MAX。

次回予定:トイレ水事件絶対阻止!

絶対阻止。


「ふふ、恋敵リリネ嬢……覚悟なさって。

推しの平穏は、この私が守り抜いてみせますわ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ