表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/69

恋の暴走ーロゼリス、まさかの誤解!

昼下がりの学院の廊下。

アーロンは腕を組みながら、ため息をついていた。


(……隣にいても、意味ねぇんだよな)


どれだけ近くにいても、ロゼリスの視線はいつも別の方向――つまり、ルチア様。

これまで我慢してきたが、そろそろ限界だった。

何かしら強い行動に出なければ、このまま一生「背景」扱いされそうだ。


(もう、何かしら“行動”を起こすしかねぇ)


そう心に決めて歩き出した、そのときだった。


「アーロン殿下ぁ♡ お暇でしたら、私とお茶でもいかがです?」


香水の甘い香りとともに、金髪の令嬢・ランビーズ嬢がアーロンの腕に絡みついた。

胸元は大胆に開き、視線を誘うような仕草。

その距離、近すぎる。


(……出た。苦手タイプ。

“男は色気で落とせる”って思ってる女……マジで無理なんだよな。)


とはいえ、第二王子として冷たく突き放すのも角が立つ。

どうにかやんわりかわそうとしたその瞬間――。


「ランビーズ嬢、殿下が困っておいでですわ」


涼やかな声が響いた。

振り向けば、そこにはロゼリスが立っていた。

姿勢は堂々と、表情は優雅に。


「なによ! あんたはアーロン殿下に婚約破棄した女なんだから黙ってなさいよ!」


ランビーズ嬢の棘ある言葉にも、ロゼリスは眉ひとつ動かさない。


「確かにそうですわね。ですが、皆様お忘れのようですが――私、これでも風紀委員ですの」


そう言って、ロゼリスはランビーズ嬢の胸元に手を伸ばし、器用にボタンを留めた。


「こんなに胸元が開いていては、殿方も目のやり場に困ってしまいますわ。

それに“服装の乱れは心の乱れ”とも言いますもの。どうぞお気をつけあそばせ。」


完璧な微笑と共に、優雅に一礼。

周囲の女子たちは「さすがロゼリス様……」とざわめき、ランビーズ嬢は顔を真っ赤にして逃げ出していった。


その一部始終を見ていたアーロンは、胸の奥がじんわり熱くなるのを感じた。


(……やっぱ、こういうところが好きなんだよ)


思わず、口が勝手に動いた。


「――俺は、ロゼリス以外に興味はない!」


…しん。


その場にいた全員の動きが止まる。

そして次の瞬間、爆発したような歓声が上がった。


「きゃーーっ! ロゼリス様への愛の告白ですわーっ!!」

「まさか、復縁宣言!?」

「ロマンチックすぎるぅぅ!!」


 アーロン:「……は?」


 ロゼリス:「……あっ!なるほど!!」


(なるほどってなんだ!?)


キラキラした瞳でロゼリスが言った。


「殿下、今のは“演技指導”ですのね!? 新しいロマンス劇の練習でしょう!?

“第二王子の愛の告白”なんて、素敵な題材ですわ!!」


「どんな劇だよ!!? 俺の人生、いつから舞台になった!?」


ロゼリスは完全に勘違いしたまま、真剣な顔でアーロンの手を取った。


「それでは、相手役を務めますわ! せっかくですから練習、いたしましょう!」


「れ、練習!?」


「ええ、“感情を込めて言葉を伝える練習”ですわ! さぁ、台詞をどうぞ!」


(やめろ、そのキラキラした目で言うな……!)


もう止められない。

ロゼリスはアーロンの手をぎゅっと握り、まっすぐに見つめる。

紅い瞳が真剣に揺れて――。


「……あなたを、愛していますわ!」


ー沈黙。


アーロンの脳内、真っ白。

心臓はとんでもない速度で暴れ、顔が一瞬で真っ赤になる。


(……待て。演技って言ってたよな? これ、演技なんだよな?

…でも声が甘すぎるし、距離近いし、息、当たってるし……やばい、これ……本気で倒れる……)


アーロンは咳払いをして、どうにか正気を取り戻そうとした。

だが、ロゼリスは満足そうに微笑んでいる。


「殿下、とてもよい練習でしたわ!

ああ、“演技”とはいえ、殿下の情熱が伝わってまいりました!」


「……演技じゃねぇんだが……」


「次はキースにも見てもらいましょうか? 感情表現の練習として!」


「やめてくれ頼むからぁぁぁぁ!!!」


ロゼリスは本気で“劇の稽古”だと信じて疑わない。

一方、アーロンは顔を覆いながら呟いた。


「……この恋、攻略難易度、地獄級だな……」


そして、遠くから聞こえてくる生徒たちの囁き。


「ロゼリス嬢、やっぱり殿下と復縁するのかしら……?」

「“演技”って言ってたけど、どう見ても本気の告白よね……!」

「次はキスシーンの練習かしら……!!」


それを聞いたアーロンの耳がさらに真っ赤になったのは、言うまでもない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ