箒星軍艦
宣言した瞬間三人はそれぞれ変化する。
グレイヴは赤い筋繊維がむき出しの7m代の巨人の姿になり、その上から獅子の意匠がある金色の装甲を装着、魔力の力によって巨大化したランスを構えていた。
ノーマンは緑色の鎧を装備し襟部分、手首部分、足首部分から白い炎が燃え上がっており頭上には赤い炎の輪が浮かび、背中には複数の炎の十字架が重なってできた翼が備え付けてあった。
そしてヴォルフは彼自身の姿は変わらなかったものの、彼は握っていた杖を上に放り投げるとそれは瞬く間に形状を変化していき中央部に巨大な訪問を備え、両側方には複数の魔導具が入っていると思われるコンテナを流線型ボディを持つ20mサイズの小型個人魔導戦艦、箒星軍艦の姿へと変わる。
ヴォルフは下から伸びてきた取っ手付きのワイヤーを掴み引き上げられて内部操縦席に乗り込むとそれととに魔法を纏ったグレイヴ、ノーマンもヴォルフの箒星軍艦を掴む。
「これより風の邪精霊を討伐する………!!
ヴォルフ・カラレス!!」
「グレイヴ・アースラウド……!!」
「ノーマン・エルシニア。」
『出る(ぞ)ッッ!!!』
ゆっくりとした動作で箒星軍艦は軍の魔導戦艦から離れていき、魔導戦艦が衝撃緩和用の結界魔術を張り巡らせると、一気に速度を上げ、巨大竜巻を暴風圏を無視して、邪精霊がいる竜巻の方へと向かうのであった。
その光景を見ていたミストは僅かに息を吐く。
(あれが騎士団と教会のボスの頂纏魔法。それにヴォルフの最高傑作魔導具、箒星軍艦。魔法連の横やりがなければ量産すら可能とされる近代魔術の中でも別格中の別格………)
「………チッ、まだまだ遠いな。………でも」
「ミストさん!!」
思案するミストの後ろから声をかけたのはサファイヤ。彼女はミストを休憩室に案内しようとしていたのであるが、ミストは僅かに後ろに目を向けた後、待機させていた翠星の鞍に乗ると、翠星はミストの操作なく羽ばたき飛び上がる。
(何ですか、あの魔道具……?!今ミストさんの操作なしで動いた?!いやそれよりも!!)
「ミストさん何をやっているんですか?!」
「ヴォルフにその仲間達の戦闘、闘い自体にはそこまで興味があるわけじゃないけど、私自身も見ておきたい。悪いけど休憩は必要ない。このままいかせてもらうよ。
………それに、翠星の性能テストはしておきたいしね」
「……これは作戦中、そんな勝手は許されません……!!ハイドロ・バインド!!」
サファイヤが床に掌を置くと飛んでいる翠星の真下から水でできた触手が現れミストと共に拘束しようとする。だが瞬間、翠星から緑の炎が発火しミストごと機体を包み込んでいくと共に、巻き付こうとした水の触手を蒸発させる。
(手加減したとはいえ、属性不利の火属性の魔法で私の水魔法をあっさり破った……?!)
「そんじゃ言って来る。………ミスト・クリアランス。機工旗龍、翠星、出る……ッ!!」
再び緑の炎の龍の姿となった翠星は翼を大きくはためかせ、まっすぐ伸ばした尻尾に炎輪を生み出してそこから推力を生み出し、周りの蒸気を吹き飛ばしながらヴォルフ達を追いかけていくのであった。衝撃によって姿勢を崩したサファイヤであったが、すぐさま立ち上がり通信魔道具を起動させる。
「全くあの子は………!!提督、申し訳ありません!!ミストさんですが、そちらに向かっていますっ!!」
*
頂纏魔法を発動させたグレイヴ、ノーマンを乗せ箒星軍艦を使って超高速航空していたヴォルフであったが、突如届いたサファイアからの報告を聞き操縦しながら思わず頭を抱える。
「………我が孫ながらなぜゆっくり休むことができんのだミストは………!!」
「お前も昔は似たようなものだったろう。新型魔導具を作ったら試し打ちにワシやシズカが何回付き合わされたことか………」
「それよりも、今はあの子がいないのだから、キリア、と本当の名前を言ってあげてもいいのですよ?」
「………これはあの子と俺とのケジメのようなものだ、今更変える気はない。………それよりミストから得た対象魔力の残滓を確認、後20秒で攻撃圏内に入る。
一撃で仕留めるのがベストだができなかった場合、反撃が来るだろうが二人にはその迎撃を頼む」
「心得た」
「お任せを」
箒星軍艦はどんどん加速していき、それと共に機体上方に取り付けられた吸引機に大気中の魔力が入り、先端に取り付けられた巨大な主砲に魔力が充填されていく。そしてついに、
「!!目標攻撃範囲に突入!!作戦開始!!」
「「了解!!」」
ヴォルフの掛け声共に箒星軍艦張り付いていた二人は離れそのまま空中に滞空する。それと共に箒星軍艦は吸引した魔力を圧縮し生み出した特大のエネルギーに指向性を持たせ、極太のレーザーとして発射した。
それに対し狙われた竜巻の中にいたイーウィニャは元々魔力の高まりによって後ろから迫ってくるヴォルフ達の存在に気が付いていたのか、そば二つの大竜巻を盾としてレーザーを受け止めさせたが、
ジジジジジジジジッッッーーーーー!!!!ボォアァッッッーーーー!!!
『?!!!ギュアアアアアアアアアアアーーーーーーーー!!!!!』
二つの竜巻を貫き、イーウィニャがいた竜巻に直撃、人の物とは思えない絶叫をまき散らすのであった。だがそれでも竜巻は消えず、盾となっていた二つの竜巻は箒星軍艦へと向かって行く。
「あたりが浅かったか………!!グレイヴ、ノーマン頼むぞ!!」
「分かっている!!アレス・ドリル・バスター!!」
「もちろんです!!ウリエル・ジャッジ・グラディウス!!」
空中に滞空していた二人はそれぞれ魔法を発動させる。
グレイヴはらせん状の溝が入った巨大なランスを魔力を纏わせながら投げつけ、ノーマンは体の前に炎でできた無数の両刃剣を生み出し射出し迫りくる竜巻に大穴を開けた、その一瞬のスキを突いて箒星軍艦は加速して突破、イーウィニャがいる竜巻に接近する。
「今度は逃がさん!!レイドビッド全機射出ッッ!!」
箒星軍艦の側方のコンテナが展開されると、そこから先端が尖った流線型の形をとった魔道具が出現し左右それぞれ5基ずつ発射され、あっという間にその場に立ち止まった竜巻を取り囲み一基につき5本の魔力のレーザーを発射、直線的に照射し続ける物から降り周り竜巻内にいる何かをなます切りしようとなます切りしようなぎ払っている物もあった
レイドビット。ミストが作ったタクトビットの元となった魔導具であり、ヴォルフは箒星軍艦の制御魔術でこれらを最大で10基まで精密操作しレーザーの発射や魔力刃での遠隔攻撃、特攻攻撃などを行うことができるのだ。
そんな凶悪魔導具で攻撃を行ったヴォルフであったが、その顔はあまり芳しいものではなかった。
(魔力反応はまだある……どういうことだ、ここまでやってまだ殺しきれないなどありえるのか?どこかに逃げた、いやそんな暇は与えていない大体奴は自分で作った魔法の竜巻のせいで側面からは逃げられない。逃げるとしたら上方だけだが、それならすぐにわかる。
ということは、もし可能性があるとすれば……!!)
「………下か!!」




