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若飛竜の記憶 その2

『●●●ッッーーー!!!』

『!!チィ!!』


 長個体が咆哮を上げると共に飛び上がると同時に、空中に飛んでいたワイバーン達は一斉に豪火球を放ち、アヴィーラ達を攻撃する。アヴィーラは自身の体に旋風を纏わせ豪火球を散らすがさすがに一体で街を滅ぼせ成龍ワイバーンの本気の連続攻撃、防御し続けるのはややきつそうではあった。

 一方そばにいたザビジランデは呆れたように息を吐くと魔法で自分の体を浮遊させる。


『これはお前の責任だ。処理はお前がしろ』

『?!おい!!ザビジランデ!!俺を放って逃げる気か?!』

『………今の人間界で、私達の魔力総量は10分の一以下にまで下がっていると説明したはずだ。私は馬鹿の後始末に大切な魔力を使いたくはない。生きていたら目標ポイントで落ち合おう』


 それじゃあな、とザビジランデは言い終えるとその姿を瞬時に消してしまう。アヴィーラは引き留めようとするもその隙を突かれ旋風のバリアを突破され四方八方から火球による攻撃を受けて体が炎上してしまった。

 体が燃えて悶えているアヴィーラを見下ろしつつ長個体は冷酷な声を上げる。


『我が首だけで満足していればよかったものの………我ら誇り高きグリンワイバーンを愚弄した罪、その身で償ってもらうぞ。()()()()()()()()()()よ』

『………!!!テ、メェ………!!!今、ライン越えたぞ、クソッタレトカゲ共がぁぁぁぁ!!!!

 エンニル・インカ―ネイション・ハリケーン!!!!!!』


 アヴィーラは体から旋風を生み出し自分に点いていた炎を消すと自分を中心とした巨大な竜巻を生み出す。竜巻は瞬時に巨大樹を破壊しつつさらに長大巨大化していき、周りの木々や地面、飛んでいたワイバーンを吸い込みすり潰していく。

 長個体と成龍達は魔法で竜巻を攻撃するが、効果は薄くこのままでは自分達含めて吸い込まれ全滅するのは目に見えていた。それゆえに長は決断する。


『おい!!ゴガ!!今すぐ他の若者、幼子たちを連れて逃げるのだ!!』

『?!何言ってんだ、俺も戦うぞ!!』

『こいつには勝てん!!若いとはいえ魔将を侮った儂の過ちだ!!このままでは全員死ぬ!!それだけは絶対に会ってはならない!!!』

『………くっそぉ!!!』


 ゴガ、ミスト達がボス個体と呼ぶ成龍になりたてのワイバーンは吸い込まれないように翼を何度もはためかせつつ、姿勢を制御しながら叫ぶが長個体からの一喝を食らったことで覚悟を決め背を向ける。それを見た長個体は口元で笑みを作ると体に炎を纏わせ自分の体を巨大な炎の龍にへと変えていく。

 これはボス個体が使っていた魔法であるが、その規模は比較にならないもので超大型竜巻を前にしても劣らない迫力があった。


『はっ!!!それがどおした!!!テメェのちんけな炎なんざ俺の嵐で消し飛ばしてやんよぉ!!!』

『ただでは飛ばされぬぞ……!!行くぞ皆の者!!!』

『『『■■■■■■ッッッ』』』


 長個体の号令のごとき咆哮により残ったワイバーン達も覚悟を決め体に炎を纏って勢いをどこまでも増していく巨大竜巻にへと向かって行く。勝てないことはボス個体にも分かっていた、それでも彼は長や大人たちの犠牲を無駄にしないため隠れていた若い個体や幼龍達を引き連れ、生まれ育った住処を逃げていく。

 そんなボス個体が最後に振り返った時に見た光景は、


 炎の龍とかした長個体が竜巻に呑まれ、バラバラにされている姿であった。



 ボス個体の記憶の干渉が終わり、一同が思わず静まり返っている中、ヨハンは右手を顎に当てつつ思案するようにミストに問いかける。


「………今の記憶は、大体何日ぐらい前なのかね?」

「詳しい日にちは分からないけど、呪符の消耗具合を見る限りおおよそ10日から15日ぐらいだ」

「……大体このワイバーンの群れが人里に現れ始めた時期と大体一致しているね」

「つーかおい今はそれより大事なことがあんだろうが!!

 今人間界にいる魔将は、アイツだけじゃねぇってことだ!!」

「それに、さっきのを見た感じ………仲間、というか戦力を集めてたよね……?!」


 ガイウスとシンシアが言う通りあの映像にはアヴィーラとほぼ同等に対応していたもう一人の魔将、ザビジランデの姿があった。しかも立ち振る舞いを見る限りどう見ても彼よりも格上の存在と思われる。

 そんな敵が無敵と思われた結界の中に侵入し人間界の魔物を戦力として引き入れようとしている、というのは彼らを焦らせるには十分な情報であった。


「ただ悪い情報ばかりじゃない。さっきの会話で連中も相当無茶して結界の中に侵入しているようだ。魔力が10分の1以下、か。なるほど()()に比べて随分弱いと思ったらそういう事か」

「確かミスト君がいた軍の部隊は魔将に壊滅させられたと聞いたね?……そこまで違うものなのかね?」

「もしも本来のスペックの魔将があるのなら、今の装備じゃ絶対に勝てない。あんた見捨ててさっさと逃げてるっての。………まぁもう終わった話だ。

 後はもう提督ドノに任せて私らは休も………!!」


 と、その時であった。


 ガタ、ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタッッッ!!!!


 アトリエの鍵が激しく揺れ始める。その様子にシンシアら他三人はもちろん、ミストも今まで見たことがない異常事態に驚き隠せないのか狼狽える。

 ミストが慌てて外の様子を確認するため外の映像を映し出すと、その様子に思わず彼女達は絶句する。 

 その光景は、荒れ狂う竜巻により村、というより山が破壊され木々や地面、討伐隊、ワイバーンの死体が巻き込まれぐるぐると旋回し続けているという異常なものであった。

 


「これは、風、違う……竜巻の中……?!」

「つーかさっきのワイバーンの記憶に会った巨大竜巻じゃねぇか!!」

「………!!ミスト君!!」

「分かってる!!」


 ミストはすぐさま記憶魔法の呪符を取り出すとそれをアトリエの鍵に張り付け、彼女達がボス個体の記憶を鑑賞している時に何が起こっていたのかを確認し始める。




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