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惨状

「!!ワイバーンが堕ちたぞ!!やった俺らの勝ち………!!」

「馬鹿野郎!!まだ堕ちただけだ!!完全に息の根が止まったのを確認したわけじゃねぇ!!

 ここにいる面子を分ける!!お前らは村に行って奴らの根城を制圧!!あとワイバーンの幼龍は殺すなよ!!冒険者規則の罰則になりかねねぇからな!!

 残り半分は撤退組に連絡後こいつを拠点救護施設に護送しろ!!」

「な、何を……?!」


 ガイウスがてきぱきと指示をする中、自分を下がらせようとする指示を出した時ルイスはそれに反応しようとするが、突如彼女の膝から力が抜けると尻もちを付いて倒れ座り込んでしまった。


「おめぇが飛竜型魔導具の加速や姿勢制御、さっきの最高火力魔法でかなりの魔力を使ったのは分かってんだよ。

 ドクターストップってやつだ。後は俺達に任せろ」

「ちょ、ちょっと立ち眩みを……しただけです……!!少し、休めば……すぐ動けるように……!!ってきゃぁ?!」


 ルイスは力を入れた立ち上がろうとするが、その前にガイウスはルイスを俵を持つかのように持ち上げてしまう。またこの時、ルイスの頭の方に羽織っていたコートが掛かってしまった。

 驚愕羞恥嫌悪、様々な感情を抱いたルイスは腕を何度も振り回し、フリル付きのミニスカートがめくれタイツの下にある下着が丸見えになるのも関係なく足をばたつかせ抵抗する。しかしガイウスは特に何の反応もすることがなく、残っていた面々の中にいた冒険者組、彼の仲間達に彼女を渡す。


「そんじゃ、こいつのこと任せたぞ」

「おう任せろ兄貴!!ところで、兄貴は制圧の方に行くんすか?」

「俺は……あのクソワイバーンの堕ちた地点を確認する。万が一あの化け物が生きていればそれだけでなにっもかもひっくり返されかねねぇからな……!!

 さぁ、お前ら!!話は終わりだ!!動くぞ!!」

『はいッ/おうっ!!!』

「だから、おろせぇぇ!!!」



「………なんか今、ルイスちゃんの叫び声が聞こえなかった?」

「いや?特に聞こえなかったような気がするがね?」

「あんた達、集中切らさないでよ。まだ、終わったわけじゃないんだから」


 一方山岳部の森林地帯に堕ちたミスト、シンシア、ヨハンの三人はミストを前衛、残り二人を後衛にした状態で探索を行っていた。その対象は当然。


「………見つけたぞ、間違いないあのワイバーンだ」


 ミストは声を潜めつつ前方にいる存在を指さす。その先にいたのは先ほどまで戦い、ルイスの電磁魔法によって撃墜されたワイバーンのボス個体であった。魔法が直撃した右翼と右足は完全に消し飛び、体は左側を中心に黒焦げ、右目玉も蒸発したのか眼窩には何も収まっておらずぽっかりと穴外開いていた。さらに体中に機工龍の残骸の破片が鱗を砕き、表皮に突き刺さっていた。

 どう見ても生きているとは思えない姿、しかしミスト達は一切油断することなく戦闘態勢を整える。


「ヨハン、アイツは生きているか地面から訊いて」

「……生きていている。が、鼓動も呼吸音ももう弱くなっている。死ぬのはもう時間の問題、とのことらしいね?」

「生きてるのが分かれば十分だ。とどめを刺す」


 ミストはコートのポケットから赤い指揮棒を取り出すと、その先端を瀕死のワイバーンに向け鋭い刃状の火の礫を発射する。そのまま着弾するかと思われたが目を見開いたボス個体は口を開き、自分の前方に炎の壁を形成、攻撃を遮断する。さらに炎の壁は消えずボス個体の体にまとわりつくと炎でできた右翼と右脚を生み出しフラフラと立ち上がる。

 あくまで傷を治したわけではなくただ完全に死ぬまで戦えるようにしただけ、いまだ死にに掛けには変わらないはずであるが、その目からは一切の戦闘意欲は削がれていなかった。


「………認めるを通り越してもはやちょっとドン引きしてるわ。右の手足、目玉吹き飛んで全身に大やけど、鉄片により刺傷。………死んどけよな、生き物として……」

「ど、どうする?!また飛ばれたらどうしようもないよ?!」

「流石に先ほどのように自由自在な飛行はできないはずだが………念には念を入れて飛ばれる前に討伐しよう」


 ミストは左手に先端から1メートル程度の細い火柱を生み出した指揮棒を順手持ちに持ち直し、右手にはヒドゥンエッジを持ち戦闘態勢を取り、シンシア、ヨハンもそれぞれ自身の最大クラスの魔法が放てるよう準備する。またそれを察したのかボス個体も傷口から血が噴き出るにもかかわらず体に力を入れ、目の前の敵を殺そうする。

 圧倒的な殺気に支配された風の音以外無音の領域と化したこの場所。ミスト達とボス個体がほぼ同タイミングで地面を踏みしめ目の前に駆けだそうとしたその瞬間。



『『『■■■■■■■■■■■■■■■ッッッーーーーーーー!!!!!』』』


 劈くような生物の悲鳴が森中に響き、悍ましい何かが、彼らの体を走る。


「「「ッッッ?!!!」」」

『ッッッ!!!!!』

(なんだ今の悲鳴は、人間じゃない、いや動物、魔物か……?それに今の悪寒………似ている、あの怪物に………?!)

『!!!!!がぁッッッ!!!』


 突然の異常事態にミスト達が固まる中、ボス個体は跳ねるように反応しさっきまで敵対していたはずの彼女達に背を向けて飛び上がる。正気に戻ったミスト達は炎の礫、特大魔力玉、精霊の水魔法を放ち、その一部はボス個体に命中するがボス個体はそんなことにも目を向けず、飛び去ってしまった。


「あの方角は、村の方……?!一体なぜ?」

「おい!!大丈夫か?!」


 ミスト達が先ほどの異常事態やボス個体の様子に固まる中、彼らに場所へという点いたガイウスが現れた。4人はそれぞれ何があったのかの情報交換を行った後、ガイウスは焦り始める。


「ボス個体が村の方に行っただと………やべぇぞ、村に言った連中があぶねぇ!!」

「今すぐ行こう!!そうしないと取り返しがつかなくなる!!」

「いや、だったらどうして村制圧に行ったメンバーから連絡が来ない?それにあの悲鳴と悪寒……何か異常なことが起こっているのは間違いないね?」

「……なら突撃する前に状況は確認した方がいいか。シンシア渡しといた物は持ってる?」


 ミストが問いかけるとシンシアは制服のブレザーの裏のポケットに入れていた板状の魔道具を取り出し、ミストに「はい、どうぞ」と差し出す。ミストはそれを操作すると10枚の映像が映る。今の魔導具はミストが予め放っていたシーカースパイダーによって集められた映像を見ることができるのであるが、それらを見た時、四人は思わず喉が干上がっていくのを感じてしまう。なぜならば、


 シーカースパイダーの10体の画面ほぼ全部に血痕が付着し、村はボロボロのぐちゃぐちゃになっていたからだ。見える範囲には血塗られたワイバーン幼龍や人間の体の部位と思われるが散乱されていた。

 

「何なの………何が起こってるの?!」

「こ、この服は……村の制圧に向かった、あいつらの……!!」

「………ミスト君。映像を巻き戻すことはできるかね?」

「…………ああ、分かってる……!!」

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