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混迷の戦場

だいぶ遅くなって申し訳ありません。これからも不定期にはなりますが頑張って投稿していきたいのでよろしくお願いします。

おのれ連続夜勤……!!


 ミスト達が機工龍によって飛竜たちの根城へと向かうことを決めた時間から遡ること約5分ほど前、討伐隊本体は村唯一の出入り口である一本道にてワイバーン達と戦闘を行っていた。教会の魔法使いが前衛で防御魔法を張りつつ後衛の魔法連魔法使いが強力な魔法で空呼ぶワイバーン達目掛けて魔法を放っていた。ワイバーン達は空中にいたためか放たれる魔法を余裕を持って躱すことができていたが、自分達の攻撃も防御によって阻まれてしまい届かせることができず、一種の膠着状態となっていた。

 普通の魔補使いとワイバーンではそのスペックには大きな差があるがそれでも彼らがワイバーン相手にここまで善戦できているのはやはり根本的に頭数の差が一番大きい。今この場に来ている討伐隊の面子は勇者候補たちと指揮官たちが選定した武闘派62名。それに対し現在ワイバーンの数は21体。ワイバーンの約3倍近い人数差を誇っている。それに加え、


「撃て」


 誰かがわずかに呟いた後に彼の人差し指から放たれた青色の魔力レーザーが加速しながら伸びていきはるか上空にいたワイバーンの翼膜に直撃、大穴を上げ落下するのであった。それでも流石は龍種、まだ息があり起き上がろうとするがそれを隠れていた魔法を使えない冒険者たちが鋭い武器の一閃で体を刻んでいき息の根を止めるのであった。


「やれやれ、これでやっと5匹目か。これじゃあ、いくらやってもきりがないね?」

「ですが確実に数は減らすことができています、このままいけば……!!」


 討伐隊の後方にいた勇者候補の三人、ヨハン、メーリル、シンシアは戦況を確認していた。彼らはそれぞれ討伐隊指揮官から指示をもらっていた。

 ヨハンは先ほどのように狙撃魔法でワイバーンを打ち落とすことと、討伐隊全体への魔法防御バフを。

 メーリルは討伐隊全体に身体能力強化、魔力総量強化の魔法を。

 そしてシンシアは二人の背中に手を触れ、自分の魔力を連携スキルによって無害化させたうえで供給し二人をサポートすることを、それぞれ指示された。


「メーリル様、ヨハン様。ごめんなさい、本当は疲労や体の怪我も回復できるはずなんですけど、できなくて………!!」

「構いません。連携スキルが発動できているということは、シンシアさんが私達を信頼してくれている証。むしろ私達が感謝を伝えなければなりません」

「………そうだねぇ。君はむしろよくやってくれている。気にしないでくれたまえ」

(と口では言っているが、少しまずいねぇ……)


 ヨハンは額に流れた汗をぬぐいつつ回りを見る。メーリルは50人近い人間への広範囲強化魔法によりかなり体力を消耗しているのか、肩で呼吸をしており表情こそ取り繕っているが、かなり厳しい状況であった。

 またヨハン自身も味方全員に防護魔法を張りつつ専門外の超遠距離魔法を使って高速で動き回るワイバーン達を打ち落とすという行為により体力はもちろん精神も中々に削られていた。


(やれやれ、これなら無理やりにでも戦力の分散はやめさせるべきだったね……)


 ヨハンは率先して前に出ながら指示と攻撃を行っている討伐隊指揮官に冷めた目線を向ける。彼としてはミストによって手に入った情報からワイバーンの戦力がずっと低いことを知り、さらに主力の一部をミストが引き付けたことにより、今ならばこの戦力でもワイバーン達の根城を墜とせると考えたのであろう。しかしそれが甘いとしか言えなかった。


(まぁ考えてみれば、元々これはただでさえ忙しいはずであるヴォルフ提督に回ってきた案件。いくらワイバーン達が若くとも、主力の一部を引きはがした程度で突破できるなら、苦労はしないね)

「………司令官殿、一度撤退しましょう。死傷、重傷者なしで既にワイバーン達にかなりのダメージを与えられている。これは十分な戦果です。今からでも撤退してミスト班のサポートに行きましょう」

【………!!ダメに決まってる!!ミストからの情報でここのワイバーン達はずっと弱いことが分かったんだ!!今日!!ここで倒せるはずなんだ!!宮廷魔法使い殿ももっと真剣に取り組んでください!!】


 ヨハンは通信魔法で前線の指揮官に撤退を呼びかけるが、向こうには効果がなく一切聞く耳を持たないその様子に、ヨハンはため息を吐く。

 彼としてはこの作戦っを取った手前、成功せずに逃げかえれば魔法連や騎士団、または同僚達の嘲笑の的になるためか意地でも成功させようとというあまりにも斜め上な覚悟を持ってしまっているようであった。


(もしくは………噂の後継者問題かね?まぁどれもくだらないと断じれてしまうがね……)

「……巫女様。おそらくあと5.6分もしない内に、前線にケガ人が出る。そのタイミングで私が殿となるから、討伐隊を可能な限り逃がしてくれ」

「………!!ですがヨハン様……!!」

「何、向こうだって敵が減れば、引き撃ちをやめるだろう。そうなれば 私なら一人で殲滅できる、むしろ大規模魔法は人がいたのでは使えない。………頼んだよ」


 有無を言わせないヨハンの言葉に彼の隣にいたメーリルと後ろから見ていたシンシアは何も言うことができなかったが、そんな時シンシアの通信魔導具から着信音が響く。


「これ、ルイスちゃんに貸してもらったやつの……!!もしかして!!」

「………シンシアさん、ここは私達が抑える、君は通信を聞いてくれ。もしかしたら、朗報かもしれないしね」

「………」


 分かりました!!とシンシアは返事をした後通信魔導具を起動させ、耳元に当てる。そこから風切り音が響きつつも聞き覚えがある声が聞こえてくる。


【………もしもし】

「もしも……!!ミストちゃん?!!ミストちゃんなの?!!」

【……シンシアか……うん、大丈夫。そっちは?ワイバーンの本陣に突っ込んでるって聞いたけど?】

「うん、かなり押されてて……。でもよかったぁ……。こうして通話できるってことは、ミストちゃん主力のワイバーンに勝てたんだよね?!」


 比較的穏やかな語調のミストに安心しつつ、シンシアはできる限り声をトーンを上げて質問する。もし、ミスト達が敵の主力を撃破したのであれば大変ではあるだろうが、こっちに戻ってきてもらい戦線に参戦してもらえばこっちの士気を挙げ、誰一人欠けずに撤退戦に持ち込めるし、もしかすればこのまま制圧できるかもしれなかったからである。だが、


【………シンシア、()()()()()()()()()()()()()()()()()()?()

「ッッッ………!!」


 通信機から響いた声を聴き、思わずシンシアは身震いする。シンシアは確信する。

 ミストは完全にキレている、だがそれと同じくらい強い決意を感じることができた。ならば、シンシアの答えは一つであった。


「………もちろん、任せて!!友達だもん!!!」

【……………ありがとう】


 そうしてミストからの連絡が切られると、シンシアは元のポジションに戻りヨハン達に声をかける。


「シンシアさん!!ミストさんは何を……?!」

「メーリル様、ヨハン様!!通信魔法でみんなに伝えてもらえませんか?!」

「………何を、伝えるんだい。分かりやすく、簡潔に」


 ヨハンから言われたことでミストは僅かに思案しつつ、シンシアははっきりと宣言する。


「ふぅー………。

 これからミスト・クリアランスがこの戦いに勝つためにトラブルと一緒に戻ってくる!!だけどみんなで生き残るために、全力でサポートしましょう!!」


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