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ドッグファイト その2


 機工龍に乗ったミストと、ボス個体含めた計七体のワイバーン達との追跡戦は、現在熾烈を極めていた。機工龍は待機に含まれる天然の魔力を吸収し動力に変えるマナエンジン試作品を積んでおり疲れ知らずに飛ぶことができるため、持久戦となれば有利になるはずであるがワイバーン達もボス個体が強化魔法を発動して仲間たちの運動性能を補助し、仲間たちは隙間ない練度で火球を放ってミストを徐々に追い詰めていた。

 ミストも空中での大回転や急ブレーキ+急発進などで何とか追跡を躱す、もしくは防御一辺倒の現状を攻めに変えようとするが、それには毎回ボス個体が気づき的確に対処されどれも不発に続いていた。


(………あのボス個体……!!今まで見たワイバーンの中でもかなり強く、そして恐ろしく賢い!!おそらくあと数年経てば並みの奴じゃ手を付けられない個体になる!!ここで仕留める!!)

「タクトビット、オープン!!」


 ミストが叫ぶと彼女の両太ももに付けられた長方形のケースが展開、万年筆サイズの小型指揮棒が合計8本が現れ射出される。いきなり飛ばされた正体不明の棒に一瞬面喰いながらもワイバーン達はそれを火球で打ち落とそうとするが、指揮棒8本は青色の十字剣を思わせるオーラを纏うと空中を縦横無尽に動き火球を回避、さらに先端から青い魔力のレーザーを発射しワイバーン達を攻撃し、被弾させていく。


『■■■■■■ッ……!!』

『!!■■■■ァァァァ!!』

『■■■■ァァ!!』


 ワイバーン達はボス個体の強化魔法の鎧でダメージ自体は最小限に抑えることができたが、その隙に指揮棒が一斉に急スピードでボス個体を突き刺そうと飛び出してきた。指揮棒に気が付いたワイバーン2体は飛び出しボス個体を指揮棒から庇うが指揮棒に纏われた魔力の刃は深々と突き刺さり、ワイバーン達が苦悶の表情を上げたのも束の間、指揮棒が赤く光り始めそして。


ボォン!!ボォン!!ボォン!!ボォン!!ボォン!!ボォン!!ボォン!!ボォン!!


 決して小さくない爆発を起こし突き刺さっていたワイバーン2体の体を爆散させ、その体を地面へとまき散らしていくのであった。その姿を見たボス個体は一瞬唖然としたように目を見開くが、すぐそれを怒りで塗りつぶし他4体のワイバーンと共に再び急加速、作ったはずの距離アドバンテージを潰し、再びミストへと追いつきかける。


「くそッ……!!タクトビットを半分ほど使ったってのにやれたのはたった二匹か……!!」


 ミストは太もものケースを外しつつ悪態をつく。

 『失敗傑作』タクトビット。魔導具の中で最もポピュラーとされている魔術指揮棒をミストが改造を施し人造念動魔法によって遠隔操作できるようにしさらに魔法弾による遠距離攻撃だけでなく魔力刃による特攻自爆によって中型程度の魔物なら一発で殺すことができる。ミストの中では傑作中の傑作に分類される魔導具であるが、専用のモノクルグラスがなければ操作できないこと、操作の際の脳処理が極めて複雑で常人ではまともに扱えないことが原因で正式採用されなかったのだ。またこれを可能な限りデチューンし常人でも使え、達人ならば自由自在に使えるようにしたのがサイコプレートなのである。


(残りのタクトビットで仕留めきれるか……いや無理だな。あれは初見殺しだったからこそうまくいっただけ、見られた以上あのボスワーバーン相手じゃ牽制にしかならない。使うタイミングを見極めなけなければ……とそろそろだな)


 ミストはもうすぐ指定したポイント、木々が固まった森林地帯に到着することを確認すると、わずかに喉を鳴らす。連絡で援軍を要請したものの果たして来てくれるのか、という心配はあった。今でこそ自分は勇者候補とされているが戦犯であるという事実も変わらない。囮として切り捨てられる可能性もある程度は覚悟していたが、そんな彼女の不安を吹き飛ばすように森林地帯から赤い光の点滅が輝く。

 統一軍で使われる光信号、その意味は、「部隊配置完了」「合図求む」。その光を見たミストは、他人が言えば彼女自身全力で否定しただろうが、金属マスクの下で安心そうに笑みを浮かべた。


「……合図求む、ね。仕方がない、シンシア……合わせろよっと!!」


 ミストはポケットの中に入れていた宝玉を後方に投げる。ワイバーン達もそれに気が付き視線を併せつつ宝玉から離れるが、その宝玉は砕け、周りに激しい光を放った。もろに光を見てしまったワイバーン達は空中で悶えるが、ボス個体が回復効果のある強化魔法を全体に掛け、すぐさまパニック状態から回復、追跡を続行しようとするが、もう視線の先にはミストと機工龍の姿は見られなかった。当然ミストを探そうとしたワイバーン達であるがそれを阻むようにしたの森から声が響く。


「こっち向けやトカゲどもぉ!!バトル・ハウル!!」


 そんな大声と共に挑発効果を持った方向が響きボス個体を除く4体のワイバーンが目の色を変えいつの間にか現れていた大男、ガイウスへと一直線に向かって行く。

 ボス個体は慌てて強化魔法を強め仲間達を正気に戻そうとするが、瞬間右方向から殺気を感知し急上昇、さっきまで自分がいた地点にあの跳ぶ指揮棒、タクトビット4本分のレーザーが通っており、さらにタクトビットは銃事件の魔法刃を纏いながらボス個体を追ってきていた。ボス個体はそれらを更に飛行しながら躱し火球で4本のタクトビットを全て破壊するがその隙にボス個体の上をとっていたミストの機工龍の鞭のような鉄尻尾の打撃がヒットし、ボス個体は怯んでしまう。

 そんな間に一気に戦況は動いた。


「おうおう来たなぁ!!アイギス・シャープソーン!!+スキル決闘!!」


 ガイウスは向かって来るワイバーン達に対し、まず自身の前方に無数の棘が生えた盾を生成し突進攻撃をガード、そうして彼らが怯んだ隙にスキル決闘を発動し1VS1を強制させる赤いドーム状の空間を生成させる。この空間により5体の内側近ワーバーン2体が拘束させた。

 痛みやスキル発動により挑発状態が解けたワイバーン達は今の状況や光の輪で拘束され地面に墜落した仲間などの状況に混乱していたがその状況を逃さないとでも言わんばかりに、隠れていたルイスが姿を現す。


「この高度なら問題なく当てられる……。スキル下金+……マグネ・チャクラム!!」

『『■■■■■■ッッッーーー?!!』』


 ルイスは金貨から生み出した大量の砂鉄を自分の体を同じ程度の巨大な二つの鉄輪に変形させそれを投擲する。紫電を纏いながら外周に鋸刃を出現させた鉄輪は高速回転しながら動けるワイバーン2体の翼に直撃し、それをあっさり切断、二体を墜落させる。そして、


「タイミングバッチリだぁ!!ちんちくりん!!アイギス・ラッシュインパクトォ!!」


 木々の上を移動したガイウスは拳を引きつつ、自分の前方に10枚の正方形の盾を形成し拳を放つ。その一撃で1枚目の盾を砕くとそれによって生じた打撃以上の衝撃がさらに前の盾は粉砕。それを繰り返していき高まりに高まった衝撃は最後、10枚目の盾が砕けるとともに開放され墜落したワイバーン2体に直撃、体をひしゃげさせる。

 それと同時に拘束された2体のワイバーンの拘束が解放される。今衝撃波を受けた2体が即死したことを悟った二体は怒りの声を上げつつ翼を広げ飛び上がろうとする。

 ………彼らはここで気が付くべきであったさっきまで展開されていた決闘の領域を隔てる赤いドームがきれいさっぱり無くなっていることに。そしてそれが致命傷となった。


「はぁッッッーーー!!」

「オラァぁッッ!!!」


 飛び立とうとした瞬間木々の隙間を縫って二人の男性、統一軍と王都ギルド責任者が飛び出した。

 統一軍責任者は手に作りだした氷の剣でワイバーンの胸部を一閃、傷口から氷を侵食させ彼の体の表皮を完全凍結させる。

 ギルド責任者は手に持った両手斧を思いっきりワイバーンの首筋に振り下ろし、頸動脈を切られたことによって生じた多量の血しぶきを上げさせた。

 2体ともすでに致命傷であったが、少しでも足搔こうと暴れ出すが、そんなことは許さないとばかりに統一軍、冒険者ギルドの者達も飛び出しそれぞれの魔法や武器で攻撃、容赦なくワイバーン2体を絶命させるのであった。


「………戦闘の意志を持つ非敵対者が敵対者の数を超えると自動的に解除されるという事ですか。そのスキルやっぱりどうしようもなくポンコツですね。後ちんちくりんじゃないってますよね?人の話を聞きなさい、猿」

「テメェだって貴金属を卑金属にするだけのスキルじゃねぇか!!あと人のこと猿とか呼んでんじゃねぇよちんちくりん!!」


 「はぁ?」「あ?!」と威嚇し合うルイスとガイウスであったが、二人とも戦闘態勢は全く視線は空中にいるボス個体のワイバーンと機工龍に跨るミストへと向けられていた。

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