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怪蟲の召喚士 オルトラント・トルキシオン その2

「赦さない?確かに女性を四六時中監視は少しデリカシーがありませんでしたね。仕方がありません、

 君たちを斃して、許してもらうほかありませんね……!」


 オルトラントが指を鳴らすとカブトムシは結界の壁から角を引き抜き目をミスト達へと向けると、そのまま彼女達に向かって突進する。さらに蝶も再び激しく翅をはためかせ魔力を拡散させる効果を持つ鱗粉を更にばらまく。これにより並大抵の魔法や結びつきが弱いただの魔力放出は拡散されてしまい効果を発揮することはできない。

 巨大な蝶型魔蟲「ジャミング・バタフライ」によって魔法を封じ、巨大なカブトムシ型魔蟲「バスタービートル」の突破力で敵を倒す、オルトラントの魔法戦における基本戦略の一つ。一流魔法使い程度ならば、これで1分かからずミンチにすることができる。だが、

 目の先にいる彼女達はそのレベルで収まるような者達ではなかった。


「シンシアッッ!!ぶっつけだが、()()()、行けるか?!」

「もちろん!!ミストちゃんこそ、カブトムシ止めれる?!」

「言われるまでもないッッ!!」


 二人は口少なく互いにコミュニケーションを取り合うとそれぞれ行動を移す。ミストはヒドゥンエッジを構えて猛進してくるカブトムシに向かって行き、シンシアは左手で掴んでいる右腕をまっすぐ伸ばし、さらに右人差し指を真っすぐカブトムシの背後にいるであろうオルトラントに向かって伸ばす。さらにシンシアがつけていた手袋にも変化が生じ、手袋に描かれていた赤い魔方陣や文様が消えたかと思うと、右人差し指の生地が血のように真っ赤に染まっていった。

 この間僅か数秒、それにより全ての準備が完了され、彼女達の反撃が始まった。


「ハァッッ!!!」 

『●●●●●●●●●ッッーーー?!!』


 ミストはカブトムシとの衝突直前に体を左側にそらし、それと同時にストームブーツの出力を最大にし一気に駆け抜け一閃、正確にカブトムシの右側の脚3本を両断しカブトムシを転倒させる。そのままオルトラントに向かって走っていく。

 一方シンシアの方には点灯しつつも勢いを殺しきれずカブトムシが向かって来るが、シンシアは心の奥底から湧き上がってくる恐怖をかみつぶしながら息を吸い込み、カブトムシに隠れていたオルトラントの姿が見えた瞬間、放つ。


「キャノン………スピアッッ!!!」


 ジジジジッ、ビョォォォォーーー!!!


 シンシアが構えた人差し指から放たれた収束された魔力の光線は発射され、攪乱する鱗粉によって威力は弱まりながらもオルトラントの元へと向かう。前からはシンシアの光線が、右サイドからはミストからの迫撃と二方向同時攻撃となったが、オルトラントに焦った様子は見られなかった。オルトラントは手に出していた手のひらサイズの蚊を魔力光線に向かって投げるとそれと同時に蚊は暖かな光に包まれ、一瞬にしてその姿をカブトムシの姿に変換、シンシアの光線を腹部裏側で受け止め、体液をまき散らして爆散するのであった。

 突然の光景にシンシアは固まってしまうが先ほどまでカブトムシが倒れていた場所にあの蚊が出現しており、シンシアの姿を見つけると目を赤くしてそのまま彼女に向かって襲い掛かる。その鋭い針のような口は真っすぐシンシアの胸部を狙い討とうとするが、彼女はそれを躱し、全ての指の生地が赤く染まった手の指から赤金色の魔力を圧縮放出し、そして。


「消えろ、このッッ出歯亀虫ッッーーー!!!ネイル・キャノンッッ!!!」


 計十本の爪刃により、バラバラとされるのであった。だが蚊の体が切り裂かれその体液がバラまかれた瞬間、それは一瞬にして蒸発すると共にシンシアの視界が暗転する。


(………何、これ………視界が……力も入ら………!!)

「…………スゥ―……クゥ―………」


 シンシアが考える暇もなく彼女の体は地面に倒れ、そのまま彼女の瞼は閉じ、彼女は眠りの世界へといざなわれるのであった。


「ッッ!!シンシア!!」

「おやミスト嬢、よそ見できる余裕がありますか?」


 一方オルトラントと接近戦を試みていたミストは倒れたシンシアに意識を向けようとするが、時折鱗粉と共に真空の刃を飛ばしてくる蝶とオルトラントが新たに召喚した2メートル前後のカマキリ型魔物によりそんなこともできず防戦一方に追い詰められていた。


「ああ、後言っておきますが、あの蚊の体液は特別製でして0度以上の外気に触れた瞬間蒸発し、睡眠薬としてばらまかれます。つまり彼女は寝ているだけ何も心配はありません。………今はね」

「チィ、クソッタレがぁ!!」


 ミストは懐から赤い球状の宝石を取り出し、それをカマキリに向かって投げつける。カマキリはそれを一刀両断に斬りつけるが、その瞬間宝石から炎が燃え上がりカマキリを炎上させるのであった。


「火の魔法を封じ込めた宝玉ですか……だが魔力由来の炎ならジャミング・バタフライの拡散鱗粉と風で消せる………」

「上等、一瞬怯めば十分だ!!」


 ミストは炎に悶えるカマキリの足元をスライディングで潜り抜け、そのままオルトラントに接近しヒドゥンエッジを突き刺そうとするが、それと共にオルトラントの体から暖かな光があふれさっきまで彼がいた場所に、炎上しているカマキリが出現しミストの攻撃に合わせて両腕の鎌を振り回す。攻撃は何とか盾で防ぐことができたがカマキリとオルトラントに前後を上空を蝶に囲まれる絶体絶命の状態になってしまった。


「チッ、厄介な力だね、アンタのそのスキル……!!」

「ふふふ、おほめに預かり光栄です。スキル『交換』。私と私が触れたモノ、もしくは私が触れたモノ同士の位置を入れ替えることができる中々便利な力です。ですが厄介云々を言うならアレの方がよっぽど便利で厄介だと思いますがねぇ?」


 オルトラントは眠らされてしまったシンシア、正確には彼女がつけている赤い魔方陣や文様が描かれた白い手袋に視線を送る。

 あの手袋、「ボルトレッド・グローブ」は昨日、ミストがシンシアのために作った彼女専用の魔導具である。その効果は魔力放出部位の制限することで魔力を収束、噴出力をアップさせることができるというもの。人差し指一本に放出部位を限定させれば魔法拡散状態のこの場でも一撃で上級魔物を爆散させることができる魔力光線を放てるし、指に限定すれば魔力の爪を生み出すことができる。戦闘経験のないシンシアでも使いやすいよう作った『傑作』であった。

 もちろん、魔導車で話していたこの情報も、監視していたオルトラントは知っていた。


「私はあなたのようにテクニックに秀でた者より、彼女のようなごり押しタイプの方が恐ろしい。ですからキッチリと対策は取らせてもらいました。彼女はこれで動けない。

 後は物量であなたをゴリ押させてもらいましょう」

「ハッ、調子に乗るなよ。こっちがお前ぐらいの強者を何人ボコってきたと思ってる。お前の緊急回避の手札も見た、次の一合でぶった切ってやるよ」

「フフフ、ハハハハハっ。それはもう無理ですよ。だって、

 もう、王手は撃たせてもらいましたから」

「ッッッーーーーー?!!!」


 ズズボォッ―――!!


 オルトラントの言葉と共に地面から先端にハサミが付いた長い尻尾が現れ、シンシアが眠っている地面にハサミを突き立てる。ちょうどハサミを閉じれば、シンシアの体を真っ二つにできる位置であった。

 ミストはすぐに駆け付けようとするが、それを読んでいたのか蝶は風を起こしミストの動きを緩め、その隙に鎮火させたカマキリは魔力を纏った鎌をミストへと振るう。ミストはそれをヒドゥンエッジを使って受け止めるが、いつの間にか移動していたオルトラントの強化魔法をかけられた掌底突きがミストの脇腹に突き刺さり、彼女は吹き飛ばされてしまう。

 吹き飛ばされてる最中にミストは体勢を整え着地し、吐き気を堪えつつ自分とシンシアの延長線上にわざと立っているオルトラントを激しく睨みつつ、状況を整理する。

 

(新手の蟲……だと?!!一体いつ召喚した?!そんな暇はなかったはず!!………いや、待てよ。あれはまさか最初の………ッッ!!!)

「そう最初にあなたに向かって放った魔法弾……に偽装して放ったハサミムシの魔蟲です。と、まぁ説明を終えたところで少し、ベタなことを言わせていただきましょう。

 ………これ以上動かないでください、動けば彼女の体が真っ二つになります。………流石に胴体から真っ二つになったら死ぬでしょう?」




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