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怪蟲の召喚士 オルトラント・トルキシオン その1


 オルトラント・トルキシオン。24歳。公爵家トルキシオン家の3男。とある身体的理由と基本四属性魔法をロクに使えないこともあり、彼は本来魔法学園卒業後にはトルキシオン家から縁を切られ、遠くの辺境の地に飛ばされる予定であった。しかしそれでなお彼がいまだに王都に残り、末端とはいえ魔法連の幹部に就任できたのはひとえに彼の研究者としての成果と召喚士としての才能のおかげであった。

 召喚士とは自分で服従させた魔物を使役し、自由に呼び出し、操る変わり種空間魔法使いのことを言う。貴族は魔物を嫌っているためほとんどいないこと、さらに彼が使役するのはどれも彼が自分の手で作り出した人工蟲型魔物、怪蟲であったこともあり殆どの者達から忌み嫌われていた。だがそれでもなお彼は、

 魔法男子学園高等部時に行われる学園決闘大会において3連覇を果たした、歴代でも5名といない優秀な成績をたたき出したからであった。

 更にそれとほぼ同時期、家の家督を継ごうと競争を行っていた兄二人が口論をきっかけに殺し合い、二人とも死亡。表向きには急病で亡くなったことにはなっているが結果としてトルキシオン家の家督を告げる条件を持っているのがオルトラントのみになってしまい、彼は王都にそしてトルキシオン家に残ることとなったのだ。

 ただ彼自身はトルキシオン家の家督などどうでもいいと考えており、年が離れた妹のナタリーがやればいいと平然と言う、魔法連の活動も幹部から外されない程度しか行わず、王城の特別実験室に閉じこもって蟲の研究に取り組んでるなど、それらを知っている者達からは「伝統を穢すうつけ」と罵られ、とても公爵子息とは思えない扱いを受けていた。

 最も、そのような軽蔑や失望はオルトラントには全く響いてはいなかった。なぜなら彼には野望があった、そんなちっぽけな凡夫の騒音など聞いてる暇はないからである。ただそれでも、もし彼が興味をもつ存在がいるとすれば。



(勇者の孫娘にして最凶の魔術師と無尽蔵の魔力を持つ少女………2日前の戦いから興味はありました。それが私の勘違いか、それとも私達の野望の一助となるかここで判断させてもらいましょう)

「さぁお嬢さん方、

 ………死にたくなければ、君たちの奥の底まで魅せてくれ」


 オルトラントが指を鳴らすとそれと同時に巨大カブトムシが突進しそれと同時に巨大蝶が飛び上がると翅をはためかせ赤い鱗粉をミスト達に向かって放つ。蟲の魔物はその大半が魔物の中でも下位に位置づけられるがその分体液や爪、角などに毒が付着している場合が多い。それを図鑑を読んで知っていたシンシアはミストが言う前に両手を前に出す。


「シンシッッ……!!」

「言われっっ……なくても!!キャノンバースト!!」


 蟲の恐怖に耐えつつシンシアが叫ぶと共に彼女の前方扇状に赤金色の魔力が放出される。それと共に衝撃波が発生し鱗粉を払いカブトムシを吹き飛ばせるはずであった。しかし放出した莫大な魔力は出た途端にチリチリと拡散してしまい、発生した衝撃波も鱗粉の侵食を数瞬食い止める程度、当然そんなものでは鱗粉は侵食を続け、カブトムシの突進を止めることなどできはしなかった。

 

「………?!な、なんで……?!」

「………!!この鱗粉は魔法攪乱膜か!!チィ!!」


 焦るシンシアに対しミストはサイコプレート4枚を手元に戻して連結、大楯の状態に変形させ左手で持つ。さらに改修を行った鬼筋鎧・零式改め、鬼筋鎧・壱式を一部起動し左腕にのみウーツ鋼でできた手甲と赤黒い筋腱でできた帯がそれぞれ装着し、巻き付く。

 そしてミストは迷いなくカブトムシの突撃を受け止めたのであった。だが


ガァァアアアアアンッッッ!!!ボギィッッ!!!


「……ッッ!!がぁ!!」

「わ、わわわっっ?!」


 自身の腕から鳴ってはならない音が鳴ったミストは鬼筋鎧によって腕を動かしカブトムシの突撃の方向を反らすと、そのまま足を軸にして回転しストームブーツを起動してシンシアと共にその場から移動する。攻撃を反らされたカブトムシの角は結界の壁に深々と突き刺さり周りにひびを生み出していた。


「なんて魔物だ……!!並み以上の攻撃程度なら無傷で止めれる……私の盾と鬼筋鎧を、突破して腕をぶっ壊しやがった……ッ!!」

「………!!ミストちゃん腕を見せて、折れてるでしょ?!」


 離れた場所に移動したミストは一緒にいるシンシアの言う通り左腕を上げて出す。鬼筋鎧によって形が保たれてるとはいえ先ほどの音からして折れていることは間違いない。そのためシンシアは彼女の腕に触り魔力を放出する。もう既に魔法攪乱の鱗粉はこの結界内全域に散布されているため多少風を起こす程度の衝撃波しか生まれなかったが、密着して魔力を放ったことによりミストの腕には問題なくシンシアの魔力が浸透し折れた左腕を再生させていくのであった。


「莫大な生命属性の魔力に、味方への攻撃無効し回復支援を行えるスキル………中々厄介ですね。メタ張っても油断ならない」

「………!!なんで、この人アタシのスキルのことを……?!」

「……オルトラント、一つ聞きたいんだけど。

 ………アンタ、()()()()()()()?」


 ミストの鋭い射抜くような目を向けられてもオルトラントは顎に手を当てて考え込むようなふりをし、数拍後彼は答える。


「どこから………と言われたら、君たちがうちの妹と殺し合ってた(じゃれてた)時から、ですかね?」

「チィッッ!!やっぱそうか……!!」

「ミ、ミストちゃん、どういう事なの……?!」

「………シンシア、アンタが車で後ろ向いてたけど、それってもしかして、視線を感じたんじゃないの?」

「う、うん………!!そうだけど……!!」

「だったら完全確定だ。………召喚士は使役した魔物の視界を見ることができる、コイツ……あの蟲共に私達を監視させてやがった……!!」


 ミストの指摘を煽るようにオルトラントは小さな魔方陣を出現させそこから一匹の豆粒サイズの蚊を召喚しさらに彼が指を鳴らすとその蚊は巨大化、手のひらサイズにまで大きくなるのであった。


「ええ、ナタリーとの戦いのときは私の従者が、それ以降はこの蟲であなた達を監視していました。当然スキルのことも、ミスト嬢の過去のことも多少は知ることができました。実に、色々と有意義でしたよ」


 オルトラントが楽し気に話す中、彼の言葉を聞いたことにより彼女達は体を震わせ凄まじいミストは羞恥に、シンシアは怒りで顔を赤くさせていく。もしオルトラントの言葉が本当なのであれば彼はこの二日の完璧に監視していたことになる。それはつまり、


『ちょ、誤解があるって!!ま、ッ待ってッ……きゃぁ?!!』

『んんっ………ぱぁ!!おいしぃ!!って……あれぇ?これ私のじゃない~?ってことはミストちゃんのぉ?ってこ・と・は~………

 かんせつキッス~~!!きゃぁぁすてきぃーー!!』


 醜態をさらした場面も。


『だって!!まさかレイプ未遂だったなんて、思わなくて……!!』


………他人に触れてほしくないあの場面も。


 全て、目の前の男に見られていたという事だからだ。


「流石に、ライン越えてんぞ、変態仮面……!!」

「人の柔らかい部分に、平然と土足で入って……!!」


「「絶対に赦さねぇ/ない!!オルトラントぉ!!」」


 二人は怒号と共に同時に宣言した。お前を倒すと。そしてこれにより、


 ミスト&シンシアVSオルトラントの決闘の火蓋が切って落とされた。

 

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