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魔術師冒険者 ミスト・クリアランスその2

 ゴブリン達の要塞最奥部。そこには先ほど戦闘から逃げ出したゴブリンがおり、周りにいた重武装された大きなゴブリンと石を削って作られた椅子に座った巨大な魔族に報告をしていた。その魔族は体色は紫色、額辺りから一本の角が生えているなど人間界にて鬼と呼ばれるような姿をしていた。

 ゴブリンはギャイギャイと耳障りな鳴き声を発するばかりであったが、鬼は聞き取れていたのか青筋を立てつつもゴブリンの報告に耳を傾けていた。


「……それで?テメェは人間のメス一匹相手に逃げたってことか?30もの部下を失って……!!」

『ギャ、ギャギャ……!!』

「うるせぇ!!言い訳するんじゃねぇ!!」


 鬼に詰められてなお見苦しく言い訳をするゴブリンにキレたのか鬼は手のひらを向け火球を生み出しゴブリンに向かって発射する。着弾した衝撃でゴブリンは吹き飛び、火だるまとなってじたばたと蠢くがしばらくして死んだのか動かなくなりそのまま焼死体となった。

 鬼はゴブリンが死んだことを確認すると石の椅子から立ち上がり周りにいた側近たちに指示を出す。


「お前ら!!戦闘準備だ!!おそらく、もうすぐここに人間が来る!!全員返り討ちにする!!男は食い殺せ、女は犯せ!!

 全ては偉大なる魔王様のために!!」


 鬼の雄たけびに応じゴブリン達も手持ちの武器を掲げ声を上げ、要塞の最奥部から出て行く。鬼も壁に立てかけてあった巨大な大剣を手に取ると自分もここから出て行こうとする。とその時、一匹のゴブリンがここに入ってきた。

 そのゴブリンは部屋の中に入ると、特に鬼に向かって礼をすることなくゆっくりと歩を進めていく。


「……っチッ……。おいどうした?何かあったか人間どもが来たか?」

「……ハッ、ただのオーガがゴブリン相手に軍隊ごっこか。笑えないね。」


 いきなり吐き出された罵倒に鬼、オーガの怒りは沸騰するがそれと同時にある疑問に気が付く。

 なぜ、ゴブリンごときが、言葉をしゃべることができるのだ?それによく見ればこの部屋の入口近くの壁に何やら魔法の波動を感じる。鬼はこの魔法は知っていた。これは人間が使う、魔物、魔族除けの魔法ーーー!!


「!!まさかっっ!!」

「おせぇよ、ハゲ!!」


 オーガが放った火球を躱したゴブリンはそのまま一気に接近し右腕を大きく振るう。到底オーガに届くような攻撃ではなかったはずである、しかし空間がゆがむと、ゴブリンの手が伸び、持ち手に対し刀身が垂直につけられた剣が出現し、


 シュッ、ブシャァァァァ!!


 剣の切っ先は容赦なくオーガの喉元をつら突き血しぶきを吹き出させた。オーガは叫び声をあげそうになるのを我慢し大剣を叩きつけるがゴブリンはバックステップで攻撃をあっさりとかわす。しかしその隙にオーガは回復魔法で喉の傷を治し怒りに満ちた視線を目の前のゴブリンに向ける。


「フン、さすがは魔族様だな。人間は適性がなきゃ使えない回復魔法をあんたみたいな脳筋でも使えるとか……一周周って普通にムカつくわ」

「………ムカつくだぁ?それはこっちのセリフだ!!俺の部下の姿をまねやがって!!正体を見せろ!!」


 言われなくても解くわ、と吐き捨てた後ゴブリンの姿が歪んでいき、青と黒を基調色とした服を着た黒髪の少女が現れる。少女は左手に持っていた長楯を前に出し右手の剣を構え戦闘態勢をとる。


「変化魔法か………だがどういうことだ、魔力を感じねぇぞ……?!」

「生憎魔族と違って人間は大半、魔法を使うことができないんだよ。まぁ安心しな、

 魔法なんて使えなくてもアンタを潰す程度なら十分だ」

「……!!ざけてんじゃねぇぞ、メスがぁ!!!」


 オーガの叫び共に彼の周りに大量の火球が出現すると、それらは一気に少女に向かって襲い掛かる。前後上下左右ありあらゆる方向から襲い掛かってくる火球の群れ、重鈍そうな長楯では防ぎきることはできないと思われたが、少女が盾の持ち手に取り付けられていたスイッチを押すと長楯は4つの長方形状の縦に分離し空中に浮遊、さらに少女の周りを高速で旋回し攻撃を受け止める。


「念動魔法……?!やっぱり魔法が使え……!!いやでも魔力はやはり感じねぇ……!!どういうことだ?!!」

「おいおい、生死がかかった状態で、呆けんなよ!!」


 少女は火球の攻撃を処理しつつ手に持っていた剣をオーガに向かって投げつける。剣は回転しながらまっすぐに向かっていくがオーガは舌打ちをしつつも大剣を使い弾きつつ足を止めていた少女の方へと突撃する。


「軽い魔法が止められるなら、今度は重い斬撃だ!!ひき肉になれ!!」

「それは、どうかな?!」


 対して少女も体の周りに盾を展開し火球をしのぎつつオーガの突進に合わせるように足を踏み出し突っ込んでいく。よく見れば服の袖から柄にさらしが巻かれ鍔もない簡素な短剣を取り出し逆手持ちで握られていた。

 大剣と短剣、重量や頑丈性など比較することすらできず、使い手の膂力的にも鍔競り合いなど起きようはずもない得物たち。それはこの戦いに置いても同じこと、一撃を以って破壊されるであることは明白だった。

 しかし、


シュゥッ、パキン。ブシャァァァァァァァァァァァ!!


「バ、バカなァァァァァァァ?!!なぜぇぇぇ?!」

「……得物と使い手の差だよ、間抜け」


 少女の短剣とオーガの大剣は鍔迫り合いなど起こすことなく、一発でオーガの大剣が真っ二つにされ、オーガの体には逆袈裟切りの傷が作られ再び血を吹き出している。

 この惨状を起こしたと思われる少女の短剣の周りには長大且つ重厚な光の刃が生み出されていた。

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