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アトリエ

「………?!ここは……?!」


 一瞬目がくらんだシンシアであったが次彼女が眼を開いた時、そこは王城の階段ではなかった。作業台が4つ並び壁には無数の工具が備え付けられさらに奥には魔導具と思われる無数の刀剣や武器がスラリと並んで保管されていた。

 

「………2年前、空間を切り取る魔法を持った魔族を材料に亜空間に作った魔導具工房、通称アトリエ。私が作った作品の中じゃ文句なしで五本指に入る」

「空間って、アタシ確か空間魔法で移動できないんじゃ……?」

「それはあくまで座標移動の話だ。私達は移動しているように見えるが、実際はさっきの場所で誰にも干渉できないこの部屋のドアを生み出して入っていた状態、要するに点移動しているようなもの。それなら問題はない」


 なるほ、ど?あまり理解できていない様子でシンシアが頭を傾かせている中、ルイスは挙動不審にアトリエの中や魔導具を見つめていた。


「ここが、噂に聞いたアトリエ……まさか入れてくれるとは思いませんでしたよ」

「あの話を聞かれた以上、アンタにも話しておく。……その代わりこれから話すことは誰にも報告するな。自分が信じる者に誓って言えるか?」

「……ええ、我が祖父に誓って黙秘を約束します」

「よし、なら話すよ。作業台の下に椅子がある、適当に座って」


 ミストに促されるままシンシア達は椅子を引っ張り出し座る。それを確認した後、ミストは自分の心を落ち着かせるように浅く深呼吸を行った後、1年前のあの日のこと第4大隊でのことを話し始めた。

 自分が身に覚えのない軍物資の窃盗容疑がかかったこと、理知的に反論したら暴行を加えられたこと、牢屋で将軍の側近に洗脳魔法を食らい………犯されかけたこと、その状態から脱し側近の武器を奪って即興で魔導具化させ応戦したこと、そして、


「………で、そのまま魔導具で取り巻きの首を切り飛ばし、逃げた。その時確かに門番二人も切りつけたが手加減はした、あれで死ぬとは思えない。大方逃がした責任を取られ殺され、その罪を私にかぶせたんだろうな。……これが私視点での真実だ、何か質も……?!!」


 突如ミストの体が横から何かに抱き着かれた。その対象はシンシアでありミストは座っていた体勢であったためか、シンシアの胸はもろミストの頭部に当たっていた。もちろんミストはすぐに剝がそうとするが横目で見たシンシアの表情、ボロボロと泣きながらえづく姿を見た時、ミストは動くことができなかった。


「ごめん……ごめんミストちゃん……こんな、つらいこと思い出させて……!!」

「………アンタが言えっていったんでしょ」

「だって!!まさかレイプ未遂だったなんて、思わなくて……!!」

「……………」

「そもそも別に辛くないよ。……でも、あの一件が軍を見限る結論になったのは間違いないな」


 まぁ、もう終わった話だ。と泣きじゃくるシンシア、押し黙るルイスに強引に話を終わらせたミストは、シンシアを引き離してから立ち上がりこの工房の奥、魔導具の保管ケースの方へと歩いていくと一本の魔導具を取り出した。

 それは刀身の幅は広いが厚さは薄い珍しい形をした片刃の剣であった。しかしその刀身にはまばらに赤いさらしが巻かれ、さらしの隙間から見える刃は刃こぼれだらけのガタガタ、切れ味は微塵も感じることができなかった。


「つまらない話に聞かせてしまった礼だ。少し面白い物を見せるよ、ついてこい」


 ミストは革製の鞘にボロボロの剣をしまうと指を鳴らし、奥にあった隠し扉を出現させるとそっちに向かって歩いていく。シンシア、ルイスも彼女につられて隠し扉を通るとその先にはかなり大きなグラウンドに繋がっていた。また上空の風景は様々な色が混ざり合ったかのような不気味な空間であり、ここが亜空間であることを如実に表していた。

 二人が先ほどよりもきょろきょろと周りを見渡す中、ミストは準備運動を始めつつ声をかける。


「今から記念すべき一作目の『失敗傑作』の魔導具、「ヴォーパル」の実演をさせてもらう。それで悪いんだけどルイス、ちょいと手伝ってほしいことがある。今から3回に分けて私に攻撃をぶつけてほしい」

「ええっ?!」

「……私の魔法を実験台にですか。いいですよ。その代わり怪我しても文句は言わないでくださいね」

 

 シンシアが突然の流れに戸惑う中ルイスはグラウンドに足を運び、ミストの前へと立つ。それを確認したミストは準備運動を終え、革鞘からボロボロの剣を取り出しルイスの方へと向ける。ルイスもミストの動作に合わせるように黒革の手袋を改めて付け直すと指先からは紫電がバチバチっと鳴らしていた。

 そしてルイスは腕をまっすぐに伸ばし、指を弾いた。次の瞬間、


バチチチチィッッッーーー!!!


 紫電が一直線にミストを襲う。無詠唱の略式魔法であることも含めまさしく瞬速の一撃そのもの、並の人間なら反応することができず体を撃ち抜かれていることであろう。

 しかしミストはその動きに完全に反応しており雷に向かって剣の刃を構えていた。


(反応はできている。だがどうする気です?雷魔法は他の魔法と違い防御の貫通性のが高い。打ち消せるわけが……)

「だと思うよなぁ?フゥッッ!!」


シュンッ、ビシャァァァァァっっーーー!!


「………なっ……?!」

「す、すごい!!雷を、斬った?!」


 雷がボロボロの剣に当たったその時、雷は拡散されミストが剣を振ると跡形もなく霧散してしまった。その光景にシンシアはもちろんルイスも驚きを隠せていないようであった。ルイスはミストの姿を注視する。

 今のところあの剣以外の魔導具を使っている様子は見られない。つまり何かの魔導具の複合によって今の現象を引き起こしたというわけではなくあの魔導具1本とミストの身一つで行ったという事である。その事実にルイスは戦慄しつつもその顔は獰猛な笑みを浮かべていた。


(……この時まであなたの情けない姿ばかり見ていたから舐め切っていましたが、やはりとんでもない……!!

 さすがは最凶の魔術師……!!)

「………すみませんが、実演テストの手伝いはここまでにさせてください。その代わり、と言っては何ですが。

 あなたに、挑戦状を申し込みます。ミスト・クリアランス……!!」


 左手を後ろにまわし右手でミストを指さしてそう宣言したルイスの背後には突如、莫大な量の紫電を纏った蠢く黒い物質が出現した。その異様さにシンシアは威圧されながらも心配そうにミストの方を見る。しかしミストは一切怯んでおらずむしろ顔に小さく笑みを浮かべ、 

 ルイスからの挑戦状を受け取った。


「いいよ。魔法使いは嫌いだが、イキのいい後輩は嫌いじゃない。お前の力、見させてもらうぞ、ルイス・クラウラー……!!」

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