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謁見 その2


 王城へと到着したミスト達一行は、謁見の間がある最上階へと続く階段を歩いていた。本来空間転移魔方陣が併設され一瞬で行けるはずであるが、シンシアの膨大な魔力によって作動しなかったため、全員徒歩で目指していた。


「………みんなは空間転移して、徒歩はアタシ一人でもよかったのに……」

「気にしないでください、シンシアさん。あなた一人では絶対に迷子になりますから私はついて行っていたでしょうし。」

「そうそう気にしないでよ。大した距離でもないのにあんな仰々しいので移動する必要もない。あんなの使うの腰の曲がったジジババくらいでしょ」

「………ミストさん、言っておきますが絶対に失礼なことを言わないでくださいね?今から会うのはこの国の中枢人物達です。たとえ勇者候補であっても不備があれば何をしてくるか分かりません。ただでさえ今あなたには魔導具がなく、武器はその背中に背負ってる両手剣だけなんです。

 最初の挨拶は私が作った通りに、それ以外は「はい」か「ありがとうございます」で通してください!分かりましたね?!」


 そんなことを話しながら一行が階段を上り続けること約5分、ついに謁見の間を守護する大門へと到着する。大門の前に立っている門番たちは最初武器をこちらに向け睨みつけるが、それと共にサファイヤが前に出て書類を門番たちへと見せる。すると門番たちは武器を収め両サイドに立ち、彼女達が通れるよう道を開けた。

 それを確認した後、サファイヤもミスト達の方を振り返る。


「それでは、後は勇者候補の皆さんだけでお願いします。私は先に軍本部に戻りますので。………頑張ってください」

「はい!!ありがとうございます、サファイヤさん!!」

「ああ、ご苦労さん」

「………」


 言い終えるとサファイヤは改めて礼をし、階段を下っていった。それと共にミスト、シンシア、ルイスは門の前に立つことになった。


「あれ?ルイス…ちゃんはサファイヤさんについて行かなくていいの?」

「シンシア……ここにいるってことはつまり()()()()()でしょ?」

「皆さん、お静かに。……開きますよ」


 ルイスの言葉がまるでトリガーとなったのか大門が奥に開いて行き、一筋の光が門の隙間からあふれてくる。ミスト達はその動きと共に前へと足を踏み出し奥へと進んでいく。奥には一面磨き抜かれた大理石の床に天井一面に張り巡らされたステンドグラス、そして彼女達を迎えるように整列する魔法連、騎士団、教会、統一軍の指導者とその側近たち、

 そして彼女達の視線の先の玉座に座る四大公爵と先王が待ち構えていた。

 シンシアは謁見の間の放つ独特の緊張感に動きが止まりそうになったが、それに気が付いたミストは彼女の手を握る。


(ミ、ミストちゃん……)

(いいから、進むよ)


 自分達のことなど関係なく前に進むルイスを先頭にミスト、シンシアはそれに続く形で前へと歩いていく。一定の位置までに到着すると、ルイスは片膝をついてしゃがみ例の姿勢をとったため、二人もそれに倣い、見よう見まねでルイスの隣でその体勢をとる。


「よくぞ来てくれた、この謁見の間に入った以上間違いはないと思うが、改めて勇者紋を掲げ、名乗ってほしい」

「はい。私は統一軍北部訓練学校から来ました、ルイス・クラウラーです」


 中心の玉座に座る先王、バルカンの指示を聞き、まずはルイスが先陣を切り、前髪を掻き上げ額に浮かんだ勇者紋を見せつつ名乗りを上げた。額に勇者紋が浮かぶという何とも言えないその姿に、魔法連を中心に何名か笑いをこらえるよう口を紡ぐが、ルイス自身と軍の者達に睨まれたことでせき込むふりをしてごまかしていた。

 一方横目とはいえその姿を見たミスト達は強烈な衝撃を感じていた。


(クラウラー………?!それってまさか……?!)

(顔に見覚えがあったが、あのデコを見て完全に理解した。あいつは……)

「ウム。では次の者」

「!!は、はい!!シンシア・ニルフェンです!!よろしくお願いします、陛下!!」

 

 バルカンに促され、右手の甲の勇者紋を見せて挨拶をするシンシアに対し魔法連はざわつき、特にトルキシオン公は射殺すような目を向ける。事前のヴォルフからの報告でシンシアが魔法を使うことはできないものの、魔法に匹敵する能力を手に入れ行使できることは既にこの場にいる者達に周知されているが、それでも魔法を使えないことによるアウェー感はぬぐえなかった。

 それを知ってかバルカンはシンシアに話しかける。


「シンシア………確かお主は1年ほど前に王都に着た後、魔法学校で勉強をしておったそうだが、ここに来たということは魔法を使えるようにはなったのか?」

「………いいえ。アタ、わたしは、先天性の魔力出力不全症のせいで今も魔法を使うことができません。何度も勇者候補を諦めようともしましたが、友人のおかげで私は戦い護るための力を手に入れることができました。

 必ず先代勇者様のようにこの国のために動くことを約束します!!」

「ウム……その言葉を信じよう、期待しておるよ。………それでは最後の者」


 シンシアの名乗りが終わった後、バルカンがミストの方を向くと彼女は僅かに息を吐き改めて吸い込むと、顔を上げる。


「…………『グランゼフ冒険者ギルド出身、ミスト・クリアランスです。陛下、初めてお会いできて光栄でございます。罪の容疑に掛っている私をも受け入れてくださった陛下の懐の広さには、感動を隠すことができません。

 この国のため、尽力し、疑いを晴らすことができるよう精進していきますのでよろしくお願いします』」

「………ウ、ウム……よろしく頼む」

(ミ、ミストちゃん………?!)

(何という棒読み。あらかじめ作った分をそのまま読み上げているのが丸わかりですね)

(キリア……っっ!!)


 ミストの棒読み宣誓を聞いたバルカンは一周回って逆に気圧され、シンシア、ルイス、ヴォルフ達統一軍の面々は内心頭を抱えていたが、ミストにとっては知ったことではない。もとより彼女にとって王への謁見(この茶番)は国に飼われる代わりに自分の罪の帳消しとアトリエ並びに魔導具を返す、という契約の再確認でしかない。

 さっさと終わらせて、アトリエの様子を確認したいというのがミストの正直な気持ちだった。


(後はまぁサファイヤの言う通り脳死で『はい』『ありがとうございます』で乗り切ればいい。さぁ、アトリエを取り戻したら、まずは昨日壊れた魔導具達を修理して……)

 そんな風に既に終わった後のことを考えていたミストであったが、そんな彼女の思考を裂くような声が響いた。


「陛下、公爵の皆様!!宜しいでしょうかッッ?!」

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