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魔術師冒険者 ミスト・クリアランスその1

 真暦1×65年。魔族と人間との戦争がいまだ続く中、去年前線部隊の一つが陥落させられた。幸い上位魔族の侵入は王都の聖女が生み出した結界により抑えることができたが、「一定以上の魔力を持つ存在を弾く結界」をすり抜け、魔族の僕である魔物は国民に牙をむき始めた。

 当然軍隊や騎士団もこれに対応するが魔物の数は多く対応しきれないのが実情であった。そのため現在はとある職業が脚光を浴びていた。


「………事前調査じゃこの辺にコロニーがあるはずだけど」


 月明りのみが世界を照らす暗い森の中、一人の少女は何かを探すかのようにうろうろしていた。少女は黒髪ショートヘアに青いメッシュが入っており口元に付けた鉄製のマスクや黒と青色で統一された服装はボーイッシュな印象を与えていた。また手には黒に青縁が特徴的な金属製の大型のカバンを持っており、それなりに重量がありそうであるが彼女は特に苦も無く持てていた。


「ゴブリンのコロニーの討伐……なんでこんな初心者向けクエストに私が出なくちゃ……ゴブリンなんて気色悪いし魔道具の材料にすらならないっているのに……」


 とブツブツと独り言をつぶやく少女であったがそんな彼女を後ろから見ていた生物たちがいた。その生物のリーダーと思われる個体は少女の頭からつま先までをじろじろと確認すると下劣な声をのどで上げて恐ろしい笑みを作る。と次の瞬間リーダー個体は静かに手を上げて指示を出すと部下個体たちはいっせいに少女に向かって突進していく。

 彼らは知っていた、人間はそのほとんどが自分達と違って夜目が効かないことを、それに魔力もほとんどないことを既に確認している。これであのメスを捕らえることができる、と彼らが確信したその時であった。


「……やっと(疑似餌)に掛ったか、ゴブリンども……!!」

『?!!ギギィ?!!』


 突進に気が付いた少女の表情は一切の恐怖は感じられず、待ってましたと言わんばかりの凶暴な笑みが浮かんでいた。少女は鉄製のカバンの取っ手部に付けられていたボタンを押すと、取っ手部とカバン本体が分離する。

 分離した取っ手部には明らかにカバンより長い刃が取っ手に対し垂直になるような位置に付けられ、少女はその剣を振るうと自分まであと一歩のところまで来ていた小柄で醜い人型の魔物、ゴブリンをバラバラにいていく。

 刃の危険性に気が付いた後方のゴブリンは持っていた木と石で作った手斧や槍をぶん投げ攻撃をするが剣を治めていたカバン本体が変形し鉄製の長楯に姿を変え、せり上がって投擲攻撃を弾く。少女はせり上がった長楯を左手で持つとそのまま剣の切っ先をゴブリンの群れへと向ける。


「さて、狩りの時間だ、魔物ども。一匹残らず生ごみに変えてやるから、かかってこい……!!」


 少女の鋭い一言が開戦の合図となったのかゴブリンのリーダーは叫びをあげて周りの個体に指示を出すと、他ゴブリンたちが一気に襲い掛かってくる。頭部、腹部、脚部など喰らえば戦闘の続行が厳しくなる部位を中心に彼らは狙っていくが少女はある時は紙一重で躱し、ある時は左手で持つ長楯で弾き、ある時は右手の剣で武器を壊しゴブリンの急所を裂いていく。

 おそらく30は越える数のゴブリンに襲われているが少女は一切焦ることなく攻撃を捌き切り着実に敵の数を減らしていく。戦闘に夢中になっていた他ボブリンと違い、後方から指示を取っていたリーダーゴブリンは目の前のメスが今の駒ではどうにもならないことを悟ると、声を潜めその場から逃走する。


『?!ギャ……ギャァァ!!』

「やっと逃げる個体が出たか、待ちくたびれた、よっと!!」


 リーダーゴブリンに気がついた他ゴブリンたちは攻め立てるように逃げたリーダーがいる方向へと声を上げるが、その隙をつき少女は動く。少女は持っていた剣をの長さを短くさせ取り回しをよくすると自分を囲んでいたゴブリンの内、前方の個体を斬りつけると包囲の中に突破口を作り、脱出する。

 当然ゴブリンたちもそんなことはさせないと言わんばかりに追いかけるが、少女はもそれは読んでおり、包囲を突破すると同時に包囲内に落としていた宝石が炸裂し緑色の煙が充満する。宝石の炸裂自体は時にダメージはなかったが、そこから発生した緑色の煙を吸った途端、ゴブリンたちは痙攣し始め泡を吹き地面に倒れてしまったのだった。


(………追手無し、全員毒煙でダウンしたか。よし、これで後はコロニーに逃げたゴブリンのリーダーの追跡に集中できる)


 少女は暗く木々が生い茂る森を音なく走りながら逃げたゴブリンを追跡していると、徐々に周りが山岳部へと変っていた。そして追跡から約5分、少女はついに発見した。


「……ゴブリンのコロニー………。だがこれは、コロニーというよりかは、

 要塞だね……。」


 少女が見たもの、それは木造の壁に覆われた巨大な基地であった。普通ゴブリンは洞窟、もしくは土に穴を作って住処を作る。しかし今自分の眼前にあるのはどう見てもゴブリンが作れる文明レベルの建造物ではない。しかもここまで大きいにも拘らず見つかっていないということはおそらく人除けの魔法がかけられている。

 これら事実が意味するのは、


「おそらく、ここのゴブリン共を指揮しているのは魔族、しかも魔法を使える個体か……これは厄介だな」

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