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愛の巣?


 明朝、朝6時。サファイヤは昨日呼び出されたことを思い出しつつ、ミスト達を起こすため彼女達が宿泊している宿舎の部屋へと足早に歩いていた。


「………」

『………報告は以上です。』

『素晴らしい……!!まさかシンシアという少女がそこまで強いとは!!しかも恩を売ることによって彼女は軍から輩出された勇者候補として扱うことができる!!よくやったぞサファイヤ!!きっと提督もお喜びになるだろう!!』

『それに魔法連の長の娘と騎士団の勇者候補の醜聞も手に入れることもできた!!まさに一石二鳥とはこのことだな!!!』

「……はぁ、なんで昨日のナタリー達といい大佐たちといい、状況が分かっているんですかね………」


 頭痛に耐えながらそのように吐き捨てるサファイヤであった。

 現在教会のトップ、聖女が張った対魔族用結界が後3年足らずで崩壊するということで国は大規模な神託魔法を発動、魔王を倒せる可能性をもつ者に勇者紋を与えた。そしてその者達を集め、育て、正式に選ばれた勇者を中心に魔王討伐隊を結成。世界を救うため魔王に挑むというはずであった。

 そのため本来は各民各陣営各地域一丸になって行動しなければならないのだが、蓋を開ければ各陣営協力体制を築こうとするリーダーたちを無視して、どれだけ自分の陣営に勇者候補がいるのか、どれだけその者達が優秀なのかを競うマウント合戦になっていたのだ。他地域も勇者紋に選ばれた者が欲しければ金を払えだの、税金を免除しろなどかなり言いたい放題言っていた。


(まぁ統一軍(ウチ)は、貴族絶対主義はないから魔法連、騎士団と比べたらマシですが……。そろそろ選抜試験も始めるというのに……)


 内心愚痴りながら歩いていたサファイヤであったがそんな間にシンシア達が寝ている部屋二つの前に到着する。サファイヤはゆっくりと深呼吸を整えると疲れを表に出さないように、コンコン、とシンシアの部屋のドアをノックする。


「シンシアさん!サファイヤです、お迎えに来ました!朝食を食べて王城に向かいましょう!」


 そんなサファイヤの声に対しドアからは特に返事が聞こえなかった。まだ寝ているのかな、と考えたサファイヤはこんなこともあろうかと用意していたマスターキーを取り出し、もう一度ノックをし声掛けをしてからドアを開け、部屋の様子を確認する。しかしそこには、サファイヤの姿はいなかった。最もそれだけなら、朝風呂にでも行った、と考えることもできたがベッドに使用した痕跡が一切見られないのは、あまりにも不自然であった。


(………まさか、また攫われた……?!いや案内兼護衛にルイスさんを付けた、それに今のシンシアさんなら余程の敵じゃなければ正面から勝てるはず……!落ち着きなさい、サファイヤ。ここはまず……!)

「ミストさん、すみませんミストさん!サファイヤです開けてください!」


 サファイヤは隣にミストが止まっている部屋のドアを叩きミストを呼び出そうとする。しかしドアの奥からはミストの声は聞こえてこない。それに歯噛みしたサファイヤは最悪の状況を覚悟しつつマスターキーでドアを開け、中へと入る。そんな彼女の目に飛び込んだ光景は、


 布団もかけず下着姿のシンシアとミストが寝ながら抱き着いている、という光景であった。下着姿のシンシアもそうであるが、ミストも着ていたズボンは膝辺りまでずり落ちており、布面積が少ない黒下着が丸見えとなっていた。そのあまりにも予想しえなかった光景にサファイヤは顔を真っ赤にしていきついに限界を迎えたのか声を上げる。


「な、ななな………‼!ナニをしているんですかあなた達はぁぁーーー?!!」

「?!な、何?!敵襲っっ?!」


 サファイヤの大声に飛び起きたミストは、周りを確認するが敵の姿は見られず、彼女の視界にいた人間は顔を赤くし、ワナワナと震えているサファイヤのみであった。ミストは今自分がどういう状態なのか理解してえないまま、やや不機嫌そうにため息を吐く。


「何だサファイヤか……いきなり大声出さないでよ。せっかく久しぶりによく寝れたってのに……」

「何だじゃありませんよ何だじゃ!!どういうことですかその状態は!!」


 まくしたてるサファイヤに疑問符を打ち続けるミストは立ち上がろうとベッドに手を付けようとしたその時、


ポヨンっ。

「……んんっ……」


 身に覚えはあるがあきらかに記憶にあるそれとは段違いの柔らかさが掌から伝わり、それと同時に色を知っている少女のか細い甘い声が聞こえてきた。

 サファイヤの今の表情や発言。そして自分のさっき感じた感触や聞き覚えのある声の主、それらを統合したミストはすさまじく嫌な予感を持つが、確認しないわけにはいかないため、ブリキのおもちゃのようにギギギと音を鳴らしながら後ろを振り向く。その先には予想通りシンシアが下着姿のまま寝ていたのだ。

 ミストは羞恥に顔を赤くしつつ、それをあろうことかサファイヤに見られたということで顔を青くするというとても奇妙なことを行いつつ、サファイヤに弁明をしようとする。しかしサファイヤはすでにミストは同性愛者(そういう方向)で頭が固まってしまったのか早口でまくし立てる。


「と、とにかく!!朝食の準備ができています!!食べたら王城に行きますからすぐ準備してくださいね!!間違っても第2回戦とかおっぱじめないでくださいね!!それでは!!」

「ちょ、誤解があるって!!ま、ッ待ってッ……きゃぁ?!!」


 急いで逃げていくサファイヤを追おうとベッドから立ち上がったミストであったが、自分のズボンが半脱ぎになっていることに気が付いていなかったため、その拍子に思いっきり倒れ込むように転倒してしまった。

 その音によって寝ていたシンシアもようやく起き、下着にほとんど隠されていない尻を突き出して倒れてるミストの姿を発見するのであった。最初あまりに突拍子もない状況だったため夢と思っていたシンシアであったが頬を引っ張っても痛く、夢ではない時が付いた時、彼女は未だ倒れ込んで震えているミストのそばに駆けよった。


「………?……ッッッ?!!!み、ミストちゃんどうしたの?!そんなお尻上げて倒れて……?!何があったの?!!」

「………まえの……!!」

「え?!何て?!」

「お前のせいだァァァッッッーーー!!!!」

「え、ええええええぇぇッッーーーー??!!」


 涙目になりながら顔を怒りと羞恥で赤くさせたミストは、この状況に訳も分からず困惑していたシンシアに襲い掛かったのであった。

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