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追憶~泡沫の幸せ

 周りの家よりも大きなレンガ造りの豪奢な家、キリアはベルを鳴らすとドアが開きそこから一人の女性が出てくる。出てきた長い藍色の髪の女性はキリアが汚れていることに気が付くとしゃがんで彼女に目線を合わして聞く。


「キ、キリちゃん?!どうしたのこんなに汚れて……?!何かあったの?!」

「……う、ううん!!だ、大丈夫……友達と遊んでるときにちょっと転んじゃって……!!……!!これ、パパの靴だよね?!パパ帰ってきてるの?!」

「え、ええ。仕事が早めに片付いたからって……。ってちょっとキリちゃん?!」


 キリアはイジメられていた事実を見え見えの嘘をで隠していたが、玄関に父の靴があることを確認すると笑みを作り急いで靴を脱いで家の中にあるとある部屋の方へと走っていく。キリアの家の地下一階にある一室、そこに到着するとキリアはトントン、と鉄ドアにノックを行う。


「パパ!!入ってもいい?!」

「!ああ、キリアか!入ってきていいよ」


 中にいる男性に許可をもらったことでキリアは生き生きとドアを開け、何に入っていく。ドアの向こうはかなり広い攻防となっており作業台4つに工作用の道具も多数用意されていた。

 そんな場所の右奥の作業台近くの椅子に黒髪短髪に眼鏡をかけた男性が座っていた。


「パパ!!お帰り早かったね!!」

「はははっそれはそうだよ!!なんたって明日はキリアの誕生日だ!!約束通り、明日は一日中遊ぼうな!!」

「やったぁ!!………あ、それパパの新作魔導具?!」


 キリアが指さした作業台の上には黒い棒がいくつも並んでいた。キリアの父は得意げに鼻を鳴らすとその黒い棒を持ちキリアに見せる。


「これは僕の作った魔法具の中でも最高傑作と呼ぶにふさわしい一品!見ていなよ?」


 そう言うとキリアの父の持っていた黒い棒の先端から金属製のフォークがまるで生えてくるかのように出現した。当然ミストは驚くがそれだけでは終わらない。再びフォークが液状の金属となり黒い棒の中に引っ込むと今度はスプーンが出現、さらに消えるとナイフまで出現したのであった。


「僕が作った形状記憶魔導合金を使った万化カラトリーはどうかな?これがあればいちいちカラトリーを持ち変えなくても食事ができるんだ!それに液状化に伴い浄化魔術も発動するからいつまでも清潔!そして何より製造コストも安い!まさしく最高傑作だよ!」

「パパすごーい!!」

「ハハハ。そうだろうそうだろう、もっとパパをほめていいんだぞ!!………所でキリア?

 その服どうしたのかな、随分汚れてるけど」


 父からの質問にさっきまでの笑みから一転、固まってしまったミストは口ごもりながらもなんとか言い訳をしようとするが、全てを見通してるような父の顔を見ていると口から言葉が出てこなった。そんな中女性、キリアの母が作業場に入ってくる。


「キリちゃん……!!今日こそ説明してもらうわよ……!!なんでそんなに服が汚れてるの、それによく見れば怪我も……!!見せなさい!!」

「だ、だか、だから……その………友、達と遊んでたらこうなって……!!」

「………そっか。お友達と遊んでたらそうなっちゃったのか!だったらしょうがないね。ほらもう湧いてると思うからお風呂に入ってきなさい。今日はパパ特製の薬用ポーション風呂にしていいからね!

 ………あと、今からパパとママは少しお話があるから今日は一人で入るんだよ、いいね?」

 

 そう言うと父はキリアを作業室の外へと案内し促すとキリアも幸いと思ったのかそのまま一階の方へと走っていくのであった。父がゆっくりと息を吐き後ろを向くと、そこには納得のいっていない様子の母の姿があった。


「なんであの子を行かせたの……?!あのここのところ毎日あんな風な様子なのよ!!いじめられてるに決まってるわ!!今すぐキリちゃんをイジメた子を見つけてその親に抗議を入れないと……!!」

「無駄だよ。相手はおそらくみんな要職についてる貴族の子供達だ。………そうでなければ、勇者の孫に危害を加えようなんて考えないはずだ。彼の権力はすさまじい。一魔術省の開発局長程度が何を言っても効果はない。

 ……それにもうすぐだ。この万化カラトリーを含めた多数の生活魔道具の特許申請が通れば、かなりの額の金が手に入る。そうすればもうお金に困ることはない。こんなところ(王都)なんてとっとと出て、魔法信仰の薄い田舎で家族三人、穏やかに過ごそう」

「それを……お義父さんは知っているの……?」

「………明日、食事会の最後に時間を作って来てくれるらしい。その時に話すよ。………局長の座を捨てるのは少し惜しいけど、

 地位なんかよりも、君とキリアの方が大切だ。大丈夫、僕に任せて。」


 そう言うと父は母に抱き着く。母もそれに返事をするかのように優しく抱き返すのであった。



 翌日、キリアは両親と遊びに出かけた。日中は王都にある自然公園でピクニックを行い、夕方には劇場にて歌劇鑑賞を行った。そして夜、父が予約した料理店にて三人は食事会を行っていた。


「それじゃあ、改めてキリちゃん!お誕生日おめでとう!」

「おめでとうキリア!今日はキリアの大好きなものなんでも頼んでいいからね!」

「ありがとう、パパママ!!」


 そんな挨拶の後、ウェイターが次々と料理を持ってくる。普段は母が作る料理が一番おいしいと思っているミストであるが、出された食事はどれもおいしく一心不乱にカラトリーを使って食事を食べていた。父と母もその光景を見ながら優しそうな笑みを作りその光景を眺めていた。

 メインディッシュの皿が下げられ、後はデザートを待つだけという状況になった時、父は話始める。


「………ねぇキリア。ちょっといいかな?」

「ん?どうしたのパパ?」

「実は、ちょっと言いそびれたんだけどね。もしかしたらここを出て別の所に引っ越すかもしれないんだ」

「え…………?!」

「そこは僕の実家があるんだけど……かなり遠い田舎でね。学校の()()()とは多分もう会えないと思う、それでもいいなら、パパとママと一緒に来てくれるかい。………もちろん、王都に残りたいというならできる限り尊重するけ……」

「ううん!!パパとママについて行く!!もちろんだよ!!」


 ほとんど父の言葉にかぶせるように声を上げたキリアはその後「そっか、引っ越しか」や「これであいつ等とも……」などごく小さな声で呟きつつ顔がにやけていた。キリアも王都に未練がないと言えばうそになるが、もうあのお友達(いじめっ子たち)に会わなくていいと考えると心がどこまでも晴れやかとなるというものであった。

 その様子を見つつ笑みを作っていた父であったが腕時計を確認すると、少し顔が曇っていた。


「………父さんまた遅刻だな……。全く少しは顔を出せるって言ってたのに……」

「!!ええ?!おじいちゃんも来るの?!いつ、今来るの?!」

「もうすぐ来るって言ってたんだけどなぁ。まぁ仕方がないデザートを食べたらもうちょっとだけ待たせてもらおう」


 と話していたその時だった。チリンチリン、と料理店のドアベルが鳴る。祖父が来たのかと思いワクワクするキリア、それを諫めつつもドアの方面を向く母であったが、父だけは気が付き総毛立つ。

 強烈な魔力の高まりと、明確な殺意を。そのため急いで二人を立たせ離れようとしたその瞬間、


ドガァァァァァァンッッッッッ!!!


 巨大な大爆発が発生し、キリア達含む多数の客を巻き込みつつ料理店を、消し飛ばしたのであった。

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