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スキル

「私と力比べとは舐めてるねぇ、陰キャ喪女!!このままぶっ潰してやるよ!!」

「ほざいてろッッッ!!金髪豚ぁ!!」


 カチッ!!


 ミストは単純な馬力に置いてイレクトアに勝てないことは重々承知している。だからこそこの鍔迫り合いの状態は本来ミストにとって好ましくないはずであるが、彼女は全く怯んではいなかった。力任せに押していくイレクトアに対し徐々に押されて行っていたが、ミストは口元で小さく笑みを作ると柄の中に仕込んである引き金を押す。そうすると次の瞬間


 キィ――――――――――……!!!

「……ッッ!!」


 空気を振る云わせるような嫌な音が響き渡と、イレクトアは何かに気が付いたのか地面を蹴り上げ後ろへと下がる。純粋なパワープレイに持ち込めていた状況を自ら捨てる不可解な行動であったが、すぐにその理由は分かった。イレクトアは手に持っていた剣の刀身をちょんちょんと指手突くと刀身に真っすぐ一本の線が入り、ポキンと折れ地面に突き刺さってしまった。


「………なるほど刃自身を超振動させ、切れ味を超強化した魔導具か。見た目がさっきの伸縮剣と一緒だから油断したよ」

「だがその油断でゲームセットだ。強化魔法でいくら身体機能を強化しようが強度そのものはその折れた剣より硬いなんてことはないだろ?こっから先はワンサイドゲームだ。死なない程度に掻っ捌いてやるよ……!!」


 ミストは剣先をイレクトアへと向け勝利宣言を行う。もっともミストは実際に勝ち確であるとは全く思っていない。たとえ獲物がなくなったとしてもイレクトアには絶対的なフィジカルと過剰強化による対象物質破壊魔法がある。しかもこれにより先ほどまでの怒りも収まったように見えた。

 むしろここからが、


「むしろ、ここからが本番。とか思ってないかな?」

「ッッ!!」

「ハハッ、図星って顔だねぇ。でもまぁ今の一合で少しは落ち着いたよ。さっきの暴言の数々に言いたいことはあるけど、怒りに任せた状態じゃ、君を殺しきるのは厳しそうだ。だからこちらも、切札を使おう

 ………スキル発動、増殖」


 イレクトアが呟いた瞬間、先ほど彼女が放った魔法とは別の光が折れた剣を包み込むと、異常な光景がミストの視界に入る。なんと折れたはずの刀身の断面から新しい刀身が生み出され、2秒もしない内に完全に修復されてしまった。その様子にはサファイヤはもちろんミストすら驚愕を禁じえなかった。


「な、なんなの、それ……?!アンタは強化魔法しか使えないはず、回復魔法なんてできるはずが……!!というかそもそも生命を治す回復魔法と物体を直す修復魔法とは全く違う!!一体何が……!!」

「………!!……まさか、あれはスキル……?!」

「……ハハッ、正解!!流石サファイヤさん、カラレス提督の秘書官なだけはある!!勇者紋を手に入れた人間が発現させることができる魔法とは違う【異能】、それこそがスキル!!私はこの手に入れたスキル、増殖によって細胞や分子を増殖させることで疑似的な治癒、修復魔法を手に入れることができたわ、けッッッ☆」


 そう説明し終えると同時に獣のように姿勢を低くしながらイレクトアは地面を蹴り抜きミストに向かって突撃、修復し終えた剣を彼女に向かって叩き付ける。その斬撃に対してミストは体を軸移動させて回避し、そのまま体の回転を利用してイレクトアに返しの2連斬撃を叩きこむが、魔力刃の短剣は丸盾に、超振動ヒドゥンエッジは直剣によって防がれてしまった。この攻撃により直剣は再びひびが入り、折れて再び暖かな光が直剣を包むと瞬く間に修復されてしまった。


「……!!また……!!だが無駄だ、そんな鋳造で作った鈍、何度でも切ってやる……!!」

「ふふふ、強がっちゃやーよ♡君だって分かってるんじゃないの?今のキリアちゃんが私に勝ってる部分は武器のスペックだけ、それ以外は全ぇーーー部、私が勝ってる。さらに私の武器は無尽蔵に修復可能、

 分かるよね、もう詰みだよ☆後はその魔導具に限界が来るまでゆっくり叩き潰せばいい。………まぁこの調子ならもう既に出動している別騎士団に捕らえられるのが先かな?」

「………ふん、何勝ち誇ってるわけ?お前こそ忘れるなよ。お前らにはとっておきのスキャンダルを握ってるってことを」

「……ああ、いつの間にかいなくなっているサファイヤさんのことね」


 イレクトアはミストの後ろを見ると、さっきまでいたはずのサファイヤの姿が見当たらなかった。どうやら今の大激突の瞬間にすぐさまこの場を離れて裏口の方へと回っていったのだろう。そしておそらくもう侵入にはもう成功している。


「………拷問されているシンシアを助け出すことができれば、その時点でこっちの勝ちだ。後は自白させればお前の雇い主の悪行は白日にさらされる。なんたって神託を受け取った勇者に暴行だ、貴族特権でもただじゃすまないだろ?………最もそんな裏技は必要ない。なんたって、ここでお前を倒せばその時点でゲームセットだからなぁ!!」


 ミストは両方の剣を伸ばすと体の周りに浮遊盾を配備すると、そのまま地面をブーツの空気噴射とともに蹴り抜き、イレクトアに肉薄すると2本の剣と4つの盾で攻撃を与える。イレクトアはそんな彼女の攻撃を盾と直剣を巧みに使いガードしつつ逆に直剣でミストの体を切り飛ばそうと攻撃を加えていく。どちらも相手の苛烈な攻撃をそれぞれの得物で弾きガードしていく。

 一進一退の攻防のように見えるが、実際は大きく違った。ミストが必死の形相で攻撃を与え続けているのに対し、イレクトアは額に汗こそ掻いているものの、表情は余裕であり落ち着いた判断の下、攻撃を捌き続けていた。

 ミストは元々最前線で斥候、暗殺者として戦っていた軍人、どちらかというと短期決戦に重きを置いている戦い方をしている。それに対してイレクトアはその強化魔法の適正ゆえか反乱鎮圧や長期のダンジョン攻略など長期間の任務が多いため1時間以上闘うことも珍しくない。

 つまりイレギュラー(スキル)によって武器破壊を封じられ持久戦に持ち込まれた時点で趨勢は決まっていたのだ。


「そのそろそろ、フィナーレと行こうかぁ!!」

「くそ、ッッッ!!まだぁ!!」


 強化魔法の力をより強く纏わせた直剣の一閃によりヒドゥンエッジの刃は直剣の刃と相打ちで砕けバラバラに飛び散ってしまう。ただし直剣の方はもう既に修復されており、その凶刃はミストを袈裟切りするために振るわれる。それを回避するためにミストはブーツと併用しバックステップ、そのまま浮遊盾4つをイレクトアに向かって射出する。だがイレクトアもそれと同時に左手に持っていた丸盾をミストに向かって投げつける。

 投げられたその丸盾は、歪に内側から膨らんでいた。


「ッッ?!!不味い!!」

「ハハッ、ナイス判断☆パンクシールド!!」


 ミストは全て察したのか、飛ばした浮遊盾の内、2つを緊急で自分の方へと動かし、膨張する丸盾をガードし、その爆発による破片からミストをガードする。しかしその行動により甘くなったイレクトアへと向かった浮遊盾2つを、イレクトアは流れるような動きでタッチし過剰強化、一瞬にして砂に変えてしまう。

 そしてそのまま、地面に掌を付け、魔法を発動する。


「さぁキリアちゃんの人生と、この戦いのカーテンコール!!派手に行こうか!!

 グラウンドデストロイ!!」


 イレクトアの叫びと共に地面にひびが入っていき、そのひび割れは地面を伝ってミストの方へと届き、それに気が付いた彼女がジャンプして回避しようとしたその時には、


 ミストの足元から魔力による衝撃波が発生し、地面を破壊しミストの体を上空へと吹き飛ばしのであった。

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