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正面突破


 一方その頃、魔法学園の校門前に到着したミストとサファイヤであったが、ナタリーの部下と思われる少女達とどう見ても学生には思えない魔術連合の白ローブを着た魔法使い達の猛攻を受けていた。彼女達は前線の生徒が障壁を生み出し、後方の魔法連合魔法使いが曲射の魔法を乱れ撃ち浮遊盾を展開し防御するミスト達を足止めしていた。


「火の矢よ、穿て!!」

「下賤の軍の犬め……神聖な学園から立ち去りなさい!!」

「ったく……ここの学園の生徒は同じことしか言えないわけ、卒業生さんよぉ」

「……ノーコメントでお願いします!それにしても、まさか魔法連まで関わってるなんて……!!」

「といっても見る限りパパママのおかげで入れたような木っ端のようだけどね……!だが時間をかけると面倒だ、援護頼むぞ!!」


 そう言うとミストは展開された浮遊盾から飛び出し、ヒドゥンエッジと短剣を構えて一気に生徒達の方へと突撃する。


「ついにしびれを切らして出てきたか……!!撃て!!火だるまにしてやれ!!」

『火の矢よ、穿て!!』

「そうはさせません、レインバレッツ!!」


 飛び出し向かってくるミストに対して魔法連の魔法使い達はファイヤアローを集中的に放ち、彼女を串刺しにしようとするが、サファイヤが浮遊壁の後ろから真っすぐ放たれ、その後大きく曲がり火の矢の方へと向かっていった無数の水礫、レインバレットがそれら全てを相殺していく。


「な、略式魔法如きが……私達の魔法を……!!」

「援護……サンキュー!!」


 火の魔法を水の魔法で相殺したことによって発生した蒸気からミストは現れると前線の生徒が生み出した障壁に短剣から生成された魔力刃を突き立て、そのまま貫き生徒一人の肩に魔力刃が刺さった。突き刺さった場所からは勢いよく血が噴き出し、周りの生徒達もパニック状態になってしまう。


「ヒィッ……!!いやぁぁぁ!!」

「血、血血血、血がぁぁぁ!!!」

「き、貴様よくも!!」

「おっと」


 戦闘経験のない生徒達が恐慌状態になる中、魔法連の魔法使いの一人は手のひらに火の玉を生み出しミストへと放つが、彼女は特に焦ることなく先ほど刺した生徒の一人を無理やり起こし前へと突き飛ばし攻撃を肩代わりさせる。そしてフレンドリーファイアによって怯んだ隙にミストは姿勢を低くしすり抜けるような動きで一気に肉薄、刃を縮めたヒドゥンエッジを振るい、

 

 ザシュ、ブシャァァァァ!!


 魔法連の魔法使いの右腕を切り飛ばし、周りに血しぶきをまき散らした。これにより生徒達の精神は限界を迎えたのかその場にへたり込んで叫び声をあげたり障壁を解除して一目散に逃げだしたりと、連携は完全になくなっていた。

 それでも一応のプロの魔法連の魔法使い達はミストを迎撃しようとするが、もう遅かった。


「今だサファイヤ、薙ぎ払え!!!」

「ええ、分かってますよ!!ウォーターソード!!!」


 サファイヤも浮遊盾から出ると前方に巨大な水球を展開し、それをビー玉サイズにまで収縮しさらに両掌で思いっきり叩きつけるさらに圧縮する。そしてそのまま腕を引き絞り振るいつつ重ねた掌の中指部分に超水圧の激流の大薙ぎが放たれる。

 ミストは当然分かっていたため、ブーツとの併用で大きくジャンプし、回避するが魔法連の魔法使い達はもろにその攻撃を受け、魔法防御に優れたローブをぼろぼろにしつつ弾き飛ばされ倒れてしまった。

 全員戦闘不能になったことを魔法で確認したサファイヤは走ってミストの方へと走ってくる。


「……一先ず大きな壁は突破しましたね。……どうしたんですか」

「いや、思った以上に思い切りよく戦闘してくれたな、と思ってね。もっとごねるかと思ったけど」

「………もうこうなった以上、うじうじしていたら逆に失敗しますからね。それに、私自身、あまりこの学校にはいい思い出はありませんからね。

 ……さぁ行きましょう。車で話した拷問部屋がある校舎はもうすぐです」


 吐き捨てるようにつぶやいた後サファイヤは目的地へと走っていき、ミストも軽く返事をした後、彼女の方へとついていくのであった。


「そんで、目的の校舎にはどのくらいで到着する?」

「このままのペースなら3分もしない内に到着できますね。………それより気が付いてますか?」

「……うん分かってる。監視されてるな。しかもさっきの戦闘素人軍団じゃない。本物の戦闘屋、イレクトアの部下だね」

「……こちらを攻撃しようとする意思はないようですね。」

「……そうだろうね、アイツは男に媚びうるクソビッチだが、戦術眼は本物。私らの実力は過不足なく把握してる。プロといってもあいつ等じゃ私らを捕獲できないことを理解してるんだろうね。ということは……」


 そう喋っている中、ついに二人は拷問部屋がある校舎、貴族専用特殊別館へと到着するが、その入り口の階段に座っている一人の少女が待っていた。

 その少女、イレクトアは襲撃時に来ていた黒ローブ姿ではなく緑色のサーマントを羽織りノースリーブにホットパンツ白手袋に白ニーハイが目立つ改造騎士制服を身に纏っていた。また右手には騎士団の直剣、左手には丸盾が握られていた。

 

「やっほー☆キリアちゃんにサファイヤ秘書官サマ♡一体何用でここまで来たんですかな?入場証もないですよね?」

「………別に大した用はないさ。………お前は個人的にブチのめしてやりたいが、お前が攫ったシンシアを渡せ、そうすれば見逃してやるぞ?」

「……私からも同意見です。今回あなた方がやった行為は決して許されることではありません。………この国はもう貴族だけの物じゃありません、特権を振るい理不尽をばらまくなんて、絶対にあってはならないことです……!!」

「………そうだね、絶対にそんなことあっちゃいけないことだと私だって思うよ。でも、そうなるのがこの国だ。

 ………少なくても、ここにいる面々ならそれを理解してるんじゃないの?」


 そう言いながらイレクトアは剣を握りなおしゆっくりと歩を進めていく。あの間に彼女の体には緑色のオーラが発生し、一切乱れることなく包み込んでいく。既にこの後の行動を察したミストは剣を構え神経を集中させ、サファイヤは数歩後ろに下がる。


「どうせこの世界は変わらない。優しい王様が戴冠しようとも、下民出の勇者様が世界を救っても……たとえ貧乏貴族が娼婦に産ませた、強化魔法しか使えない妾の子が新たな魔王を殺せたとしても、魔法と青い血(古き良き伝統)だけを愛する社会は、変わらないんだよ。

 ………私みたいに適応してここは帰りなよ、キリアちゃん?命あっての何とやらっていうでしょ?」

「………生憎こんなクソみたいな世界に屈服(適応)するぐらいなら、まだホームレスジジイの○○○舐めた方がまだましだ」

「ハッ、やったこともないくせにそういうお下品なことは言うもんじゃないよ喪女ちゃん?」

「そっちこそ何だ、その言い草?まるで自分は体験済みって言い方だな?まぁあんたみたいなビッチならやってそうだし、驚くほどでもない」


 一通りの煽り合い続き、ミストの後ろにいたサファイヤがそのあまりにドキツい内容とただひたすらに大きくなっていく両者の怒りにさらに2、3歩後ろに下がった時、ミストとイレクトアは大きく笑い始める。まるでそれは旧友との談話に花を咲かせ、面白おかしく笑っているように見えるが、もちろんそうではなかった。次の瞬間


 ミストはブーツの魔法具のブーストによって、イレクトアは強化魔法によって上がった脚力によって地面を蹴り上げ、学校中に轟音をまき散らしつつ一気に突撃し両者の剣がぶつかった時には衝撃波を周りにまき散らし、植えてあった木や石造りの壁を歪ませ破壊していく。

 魔法で防御したことで何とか踏みとどまれたサファイヤが眼にしたのは、己が持つ剣で鍔迫り合いを行い、相手を切り殺そうとする。


 ………二人の修羅であった。


「………我慢するのはもうやめだぁ……それがお望みならさぁ、きっちり殺してやるよ……魔術師ィ!!!」

「やれるもんならやってみなよぉ、騎士サマよぉ!!!」


 戦犯魔術師、ミスト・クリアランスと蛮騎士、イレクトア・ラスターク。


 勇者紋を持った二人の女戦士の戦いが、ここに幕を開けた。

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