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うるさい


『………残念ですが、キリア様は魔術を使うことはできません。魔力不全者です』


………うるさい。


『ええ、アンタ魔法が使えないのぉ?』

『うっわ近づかないでおこ、私も魔力使えなくなっちゃうじゃん』


……うるさい。


『残念ですがねぇ、いくら勇者様の孫とはいえ、うちの幼年学校にキリアさんを入れることはできません。魔法も使えない子供を入れたとなってはわが校の伝統に傷がついてしまいます』


うるさい。


『おら立てよ貴族女!!お前らのせいで俺ら平民はいつも苦労してんだよ分かってるのか?!』

『なんだやり返してみろよ?!もし問題になっても魔法を使える僕らの方を先生は守るに決まってる!!』


うるさいうるさい。


『………おい見ろよ、あれがカラレス提督のお孫様だとよ』

『……平民の幼年学校で暴力事件を起こしたっていう……?でもなんか魔術師としてスゲェ優秀って聞いたけど……』

『バッカ、そんなもんデマに決まってんだろ。大方提督が世間体を考えて入れさせたんだろ』


うるさいうるさいうるさい。


『がぁッッコイツ………!!』

『なんだあの魔導具……?!稀少な魔物質に魔物の素材で出来てるのか?!』

『提督のコネを使って手に入れたに違いないわ……!!なんて子なの……!!』


うるさいうるさいうるさいうるさい………!!


『………この女を簡易牢屋に閉じ込めておけ。明日の明朝に王都へと証拠品と共に転送し、転送後、我が部隊からの正式追放とする。

 ………どうした早くしろ!!魔術師の不快な顔をこれ以上私の視界に入れるな!!』


うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいッッッ……………!!!!!!



「うるさいっっっっっっ!!!!!」


 そう叫んだミストは知らず知らずに拳を夜空に向かって突き上げていた。それにより今自分が寝ていたことを確認すると彼女は起き上がり、周りを確認する。既に多くの軍人たちが宿舎の現場検証やケガ人の救護を行っていた。


「ミストさん?!すごい声が聞こえましたが、大丈夫ですか?!」

「サファイヤか……私は、ううっ……!!」

「動かないでください。約7メートル強の高さから受け身も取らずに落ちたんです、簡易回復魔法を施しましたが今は安静にしないと……!」

「……私が気絶して……一体、何時間経った……?……シンシアは、どこに行った?」

「………事件発生からおおよそ3時間が経過しています。………シンシアさんは、私が駆け付けた時にはもう居ませんでした……。現在範囲を広げつつ捜索中です」


 シンシアに関してはほぼ予想通りの答えが返ってきたためミストは歯を食いしばりつつ、痛む体を無理やり起こす。


「ちょ、やめてください!!簡易回復魔法のせいであなたの体力はだいぶ減少しているんですよ?!動いたらいけません!!」

「そういうわけにもいかない。………おそらく……シンシアは、アイツをイジメてたっていう主格犯……ナタリーって奴に雇われた……イレクトアに攫われた」

「……?!ナタリー……?!公爵令嬢のことですか?!それにイレクトアって、騎士団第6師団の……?!一体どういうことですか?!」

「分からない。………だが話を聞く限り……やり方は分からないが、どうやら連中は勇者紋を他者に渡す方法を持っているらしい。おそらくシンシアの勇者紋を奪うつもりだ……」

「……!!分かりました、今すぐ提督に報告し騎士団長から彼女らを止めてもらうよう話を付け……!!」


 としゃがみ込み自分と視線を合わせていたサファイヤが立ち上がろうとしたその時、ミストは彼女の軍服を掴み、引き留める。


「無駄だ、この一件には公爵家、貴族のトップが関わってる。あのジジイ共がどう喚こうが止められない。先代勇者だの聖騎士だの、なんだの言っても、所詮下民上がりの名誉貴族だからね」

「そ、そんな………!!」

「だからといってこのまま座して待つわけにはいかない。あのクソ女を今すぐボコしたい、ってのもそうだが、………おそらくシンシアは今拷問をかけられている。あいつがいままでやられたことを加味すれば、下手すりゃ死ぬか、死ぬより悲惨な目に遭ってるはずだ」

「……何が、言いたいんですか?」

「私は、アンタの存在をあの日まで正直忘れていた。だがそれでも思い出せたのがアンタが印象に残る程度には優秀な魔法使いだったからだ。

……サファイヤ・マリンハート。あいつらを追跡するよ。できない……とは言わないでしょ、元魔法学園主席さん?」


 ミストのその言葉にわずかにサファイヤは怯む。もちろん一人の人間として軍人としてシンシアをさらった者達の行いは許せないし助けたいと思うのは至極当然である。しかし仮にミストの話が本当なら、相手は公爵、王の次に偉いこの国の絶対権力者。勝っても負けても自分や軍は決して少なくないダメージを負うのは目に見えている。

 だからこそヴォルフら上司にまず報告し判断を仰ぎたいところではあったが、ここまでのことをする相手に対してこれ以上時間をかけるわけにもいかないことも事実。


「………分かりました、ですが、基本は戦闘をせず、シンシアさんを救出したらすぐに軍本部に撤退。これを徹底してください。今は人魔戦争中、無駄に確執を作るわけにはいきません。

 ……万が一あなたが無意味な戦闘をして騎士団に詰められても私は助けません、それでいいなら力を貸します、いいですね?」

「………分かった。むしろ責任は全部、私に押し付けな。………それじゃ少し待ってよ。ちょっと準備をしてくる。アンタも準備をして、でき次第行くよ」

 さぁ、ブルジョアと蛮騎士に目に物見せてやるか……!!」

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