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追放魔術師 キリア・カラレスその2

 月明りのみが周りを照らす深夜、キリアは目を覚まし周りを確認する。

 まず自分の状況。腕にはもちろんいつの間にか足にも拘束魔法によるリングがつけられていた。現状外すのはやや難しい。

 次に今自分が拘束されているのは大型のテントによって作られた簡易牢屋である。最もテントとは言うものの王国の特級魔法使いが直接付与魔法によって龍のブレスにすら耐え特殊な紋様が記された札がなければ出入りすることすらできない代物である。

 これら情報を統合し、今の自分では、ここからの脱出は不可能と断定した。と、その時だったテントの幕が動きそこから一人の軍人が入ってくる。名前自体は知らないが将軍の取り巻きであったことは彼女も覚えていた。


「………何の用?今王都に送り返された後、どんな報告しようか考えてんの。邪魔しないでくんない?」

「報告?言い訳の間違いではないか?軍紀違反を犯したことのな?」

「……正直ここまで馬鹿だとは思わなかったよ。………この一連の茶番、アンタらンとこのボスの指示でしょ?魔術師のくせに軍にいる私を消すために冤罪を着せた。違う?」

「……だったらどうした?お前のような穢れ者がいるせいでこの部隊は他の部隊と比べ戦果が大きく劣り、閣下や我々は恥をかいているのだぞ!!

 3日前の奇襲作戦でもだ!!あの作戦では地形を利用し敵の前哨部隊を壊滅させろと命令したはずだ!!なのに隊員が何人か死んだ程度で逃げ帰りあまつさえ前線を下げて王都に救援を呼べなどと!!

 ………閣下がお前の存在を許容していたのは最低限役に立つからだ。それすらできんのなら貴様などに価値はないわ!!」


 長々と理非人極まりないことを言い続けている軍人に対し、キリアは怒りを通り越し、いっそ蔑むような視線を彼へと向ける。

 そもそも今この部隊が前線部隊の中で最も戦果が挙げられていない部隊というレッテルを張られているのはおおよそ彼ら将軍と彼らその取り巻き達のせいである。

 彼らは王都を守る騎士団から異動してきた者達であるのだが、戦い方はいつも正面突破の突撃戦のみ。おまけに自分のような斥候や奇襲を専門として行う者達のことを見下しており、特攻、いやほとんど自殺に近いような作戦を何度も提案しやらせてきたのである。それでもキリアによって作戦に多少の支障は出しつつも斥候部隊の面々の死を可能な限り減らしてきた。

 目の前の男が語る3日前の作戦もそうである。確かに事前に準備した罠に誘い込み幹部含め魔族を十数人殺すことには成功した。しかしそこまでだった。

 全身を白い鎧で隠した上級魔族が剣を薙ぐと罠や仕掛けが全て吹き飛び、余波だけで作戦に参加した斥候部隊9名の内4名が殺されてしまった。自分と他4名はただ運がよかっただけであった。キリアと部下たちはすぐに撤退、向こうも深読みしてくれたのか追撃はしてこなかったため何とか助かった。

 明らかに今までとはレベルが違う魔族、この部隊ではもはや手に余ると考えたキリアは撤退と救援を打診したが将軍はそれを跳ねのけ戦闘を開始し、結果は………知っての通りであった。

 キリアは唾を飛ばしながら怒鳴り散らす男を見ながらため息をつきつつ追憶したのだった。


(こんなんでも一応3年間所属した組織、できる範囲で尊重してやってたが、こんなことになるならさっさと逃げればよかった……)

「……で?話は終わった?いい加減うるさいから消えてくんない?」

「………!!このッッ……まあいい誇り高い魔法騎士の言葉など下賤な魔術師に分かるはずがないか……!!

 ………まぁそれでいい。おかげで今からやる行為を一切の情なくできそうだ……!!」


 男は笑みを浮かべると懐から一枚の札を見せる。その札の見たキリアは表情を一変させ、冷や汗を額に流しながら目を見開く。


「お前それは……!!」

「強力な洗脳の魔法が込められた呪符だ。これを使ってお前の記憶を疑似的に改変する。………そうすれば潔く自分が戦犯だと認めることができるだろう?!」


 静止させようとするキリアを無視し男は呪符を彼女の頭へと張り付ける。貼り付けられた途端キリアは白目をむきそのまま気を失ってしまう。男はキリアの腹部を軽く蹴り起きないことを確認すると懐に入れていた豪奢な懐中時計を取り出す。


(記憶の改竄までおおよそ10分。改竄が完了したら最終確認をする。これで私の任務は終わりだ。………だがその前に、

 少し、役得を楽しむとするか)


 男は舌なめずりをしながら気絶しているキリアの肢体をじろじろと見る。大き目なサイズの軍服を着ているせいでわかりづらいが彼女が魅力的なスタイルをしていることを知っていた男はしゃがみ乱暴な手つきでキリアの軍服を破る。するとその先には先ほど蹴られたせいで青あざ等が目立つが、きめ細やかな肌に黒い簡素なブラジャーに隠された形のいい柔らかな胸など、男の欲望を掻き立てる宝が隠されていた。

 男は自分が散々語っていた誇り高い者が見せるとは思えない下卑た笑みを浮かべ彼女の胸に頭をうずめる。


「ふふふふっっ……!!生意気で下賤な女であるが、相変わらず見た目だけはいいものだ!!さぁ短い時間だがたっぷりと遊んでやろう!!

 さぁ尻を見せ……!!」


 男がキリアの下衣を一気にずり降ろそうとした次の瞬間、彼の股間部に凄まじく重い衝撃が生じ、彼は一瞬沈黙、しかしすぐに痛みが生じたのか男は汚い悲鳴を上げ、股間を押さえて蹲ってしまう。

 それに対し、男の股間に対し膝蹴りを食らわしたと思われるキリアはいつの間にか起き上がっており、冷たい視線を蹲る男に向かって向けていた。手足に付けていたはずの拘束魔法はいつの間にか解除されていた。

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