表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/4

2 奥義、ドロップハンカチーフ!

 トキア様は貧民街に粗末な診療所を持っている。

 姉弟子がいた。

 エリザベス様・・・12歳。年下だが偉そうだった。


「フン、貴方、こんなくだらない所にきたの?」

「アリシアと申します。宜しくお願いしますわ!」


 トキア様はエリザベス様を助手に

 日々、診療をされている。


「ゴホ!ゴホ!軽い風邪ですね。ヒールは必要ありません。栄養が必要ですわ。これで、栄養をつけて寝て下さいませ」


 チャリン!


「ゴホ!ゴホ!有難うございます!」


 どっちが、病人か分からない。お金まで渡して大丈夫かしら。




 修行ってどうすればいいのかしら。


「アリシア、エリザベス、ゴホ!食事を作って下さいませ」

「「はい」」



 姉弟子にならいながら。拙いながらも野菜スープを作る。

 パンとスープだけの寂しい食卓だわ。


 しかし、違和感があったわ。


「・・重い。お椀に重りが入っていますわ。スプーンも・・」

「ゴホ!そうですわ。病弱には体力が必要ですわ」

「フン、本当にくだらない!」

「ゴホ!ゴホ!でも、エリザベスちゃんは、ここにいるのでしょう」


 トキア様とエリザベス様は普通に食されている。


 そういうものかしら。私は一時間かかったわ。



「ゴホ!ゴホ!病弱には体幹が必要ですわ。エリザベス、シスターアリシアをつれて、お使いに行って下さいませ」


「はい」


 示された経路は・・・


「え、木場の上の丸太を渡って行けと?」

「ゴホ!はい、そうですわ。でなければ三時間の大回りになりますわ」


 川をせき止めた貯水池に丸太が浮かんでいる。


「ゴホ!ゴホ!手本を見せますわ」


 ヨロヨロ~~とよろけながら、トキア様は丸太の上を渡る。

 案外簡単なものなのかもしれないと一歩前へ出たら・・・


 ボチャーン!


 すぐに池に落ちた。


「ゴホ!ゴホ!まあ、仕方ないわね。エリザベスちゃんお願い」


「フン、くだらないわ!ほ~んとにくだらないわ」


 と言いながら、姉弟子のエリザベス様は、ヒョイヒョイと渡って行く。


「お使いなんて、私独りで大丈夫なんだから!」


「まあ、二人でお使いに行くのよ」

「はあ?」



 結局、3時間の大回りコースになった。


「本当にくだらないわ!路地を抜けていくわ」

「でも、ゴロツキがいたら」

「大丈夫ですわ!」


「イヒヒヒヒ、姉ちゃん。パンツ何色?」


 言っている側からゴロツキが現れたわ。

 どうしたらいいのかしら。

 すると、エリザベス様は。



「ドロップ!ハンカチーフ!」

「はれ?」

「おい、ハンカチ落としたぞ!」


 ハンカチをゴロツキの前で落としたわ。


 ゴロツキ達は、下を見る。中には拾おうとする輩までいる始末だ。



 すると、エリザベス様は。


「釣り目の令嬢の輪舞!」


 手を組んで上に上げて、片足を地面に平行にあげてクルッと回ったわ。

 これは、遠心力で威力が増した蹴りだわ。


「「「ギャアアアーーーー!」」」


 バキ!ボキ!

 ・・・そうだわ。どのような殿方も、令嬢の落としたハンカチーフには必ず目が行く。

 恐ろしい技だわ・・・あえて、戦いの場で、ハンカチを落とすなんて無駄な事をするとは誰も思わないわ。いえ、分かっていても目が行くわ。



「フン、足が届かなければ、届く位置に下げさせれば良いわ!」


 まあ、エリザベス様も変わっているわね。



 お使いに行き。孤児院に慰問、そんな毎日だわ。


 それと、疑問に思っていた診療所の金の出所だわ。

 二束三文の診察代しか取らないわ。


 裏組織にトキア様と一緒に行く。



「おうよ。寄付金じゃ!」

「ゴホ!ゴホ!親分さん有難うございますわ。でも、最近、シスターを襲おうとするゴロツキが多いですわ」

「最近、どっかの侯爵がこの地域を地上げしているのだ。他からゴロツキが多く入って来た・・・少し、手を焼いている」

「ゴホ!ゴホ!なら、私も出入りに参加しますわ」


「「「姉御!有難い!」」」



 姉御と呼ばれている。


 ここで学んで、本当にダミアン様は振り向いてくれるのかしら。

 ふくらはぎと二の腕は太くなり。体力だけはつく。


 それに、木場は渡れないわ。


 やめよう。何とか貧民街を抜け出して、明け方なら、酔っ払いが寝ている程度だから平気だわ。


 と診療所の外に出ようとしたら・・・・トキア様とエリザベス様がいた。



「叔母様、いきなり木場渡はハードル高いですわ」

「そうね。始めは陸地から始めるわ。ゴホ!病弱の道は1日にしてならず。病弱で生きるには体力が必要なのよ」



 え、庭先に丸太を並べたり、立木のように埋めて・・私の練習場を作ってくれている?


 職人たちもいるわ。


「えへへへ、どうです。これで、段階を踏んで木場渡りを出来ますぜ」

「トムさん有難うですわ。ゴホ!」

「いいえ、いつもお世話になっています。あの娘さんもここで羽ばたけばいいですな」



 そうか、私は一人ではないわ。少し、頑張りますわ!




 ・・・・・・


 立木の上に立ち。鶴のように片足になる。一時間瞑想だわ。

 丸太の上に立ち。祈りの言葉を一時間唱える。


「ハ!ハ!」


 食器の重さも感じなくなった。


 ついに、ここに来て三ヶ月後。木場渡りに挑戦だわ。


 ヒョイ!ヒョイ!


「スゲー、あの姉ちゃん。木場渡り出来るようになったぜ!」


「フン、やるじゃない!私は半年かかったわ!」

「ゴホ、ゴホ!シスターアリシア様、合格ですわ!」



 お使いに行く時間が省略出来るようになったので、更に祈りの時間が多くなったわ。

 立木を増やしその上を走る。

 今度はズボンをはいて、逆立ちで木場を渡る。



 次の段階に入った。

 孤児院の慰問だ。これが、難しいらしい。

 少し、意味が分からなかった。



「ゴホ!ゴホ!シスターアリシア、慰問も修行ですわ!」

「まあ、恐ろしい・・・良い子孤児院に行くのね・・・私でも躊躇しますわ」


 エリザベス様も躊躇すると言う。

 エリザベス様と二人で良い子孤児院に行ったわ。そこで、衝撃の光景を見ることになるわ。


 何故なら、この良い子孤児院は慰問潰しと異名がついているからだ。

 その意味が分かったわ。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ