表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/4

1 必殺、病弱の舞!

「お嬢様、ダミアン様から今日のお茶会は中止になると言付けでございます」


「またなの!理由は?」


「はい、従姉妹のミミアン様の病状が悪化したとのことです」



 今回もお茶会を中止にされた。私はアリシア・ゼーム、18歳、伯爵令嬢。

 侯爵家のダミアン様とは政略結婚ですわ。

 12歳の頃に婚約を結びましたの。


 金髪碧眼の絵に描いたようなイケメンでしたけど、婚約の顔合わせの時に、同じ金髪碧眼の美少女を連れてきた。

 それが、ミミアンだったのよね。


 お茶会でもミミアンを理由に中止になる事が多々ある。

 街でのデートでも、ミミアンがついてくる始末ですの。



『ミミアンは滅多に街に出られないから』

『ゴホ、ゴホ、アリシア様、ごめんなさい』



 そろそろ結婚ですのに。


 しかし、とんでもない提案を受けた。



「アリシア、新居にはミミアンの部屋を用意して」

「え、それは・・・」


 新居は我家が用意する契約。

 しかし、政略結婚ですわ。共同事業をやりますのよ。


「それは・・さすがに、困ります」

「何だ。冷たいな!君がそんなに冷たい人間だとは思わなかったよ!父上に言ってこの結婚なしにするぞ!」


 そう言われれば困る。貴族の結婚は政略なのだから。

 共同事業の立ち上げ。私の他にダミアン様と婚約を結びたい家門は沢山ある。



 お父様も肩を落とし。


「アリシア・・・すまない」

「ええ、仕方ないのかもしれませんわ」


 お母様は。


「アリシアの良さを分からないなんて、ダミアン様は本当に目が曇っておりますわ」

「お母様・・・言い過ぎですわ」


 と言ってくれる。


 因みに、私は茶髪にブラウンの瞳、顔はやや細く、精一杯にお洒落をすれば美人に見えなくもない。

 病気も軽い風邪くらいしか罹患していない。


 子供の頃は良く親戚の子と庭木に登って遊んでものだわ。



 そうだわ。私も病弱になれば、ダミアン様は振り向いてくれるのかもしれない。

 病気が理由でミミアン様に構っているのだから・・・



 と言ったところで方法が分からない。伝手を頼り。お金を支払い。

 賢者様に相談をしたら、怒られたわ。



「何という贅沢な悩みですな!・・・・フン、そんなに言うのならトキア様にでも弟子入りをすればいいですな!」



「トキア様とはどのような方なのでしょうか?」

「病弱の聖女ですな!」



 教えてもらったわ。

 結婚まで1年、お茶会を中止にされるくらいなら、もう、予定を立てるのも苦しいわ。


 紹介状を書いてもらって、トキア様の元で病弱の修行をしてもらう事にしたわ。

 何でも、市井の聖女として、有名らしい。



「お嬢様、大丈夫でございますか?」

「はい、これで街娘さんと見分けが付きませんわ」



 王都郊外の寂れた街までメイドと従者に送ってもらって、トキア様の元に行く。

 木造の粗末な街並みだ。



 しばらく歩くと、街の人達に声を掛けられたわ。



「ウシシシ、お姉ちゃん。どこ行くの?馬車から降りた所、見ちゃったよ!」

「見ない顔だな。ちょっとお酌をしてもらおう」

「いいや、俺がお酌をしてやるぜ。濃いのをたっぷりとな」



 無視だ。顔を伏せ。何も答えずに歩くと

 肩を掴まれたわ。


「キャア!」

「キャアだってさ」

「お高くとまっているんじゃねえーよ」

「おい、担げ!」



 しまったわ。誘拐されるわ!



 その時。


「ゴホ!ゴホ!・・・お止め下さい!お願いですわ・・ゴホ!ゴホ!ゴホ!その令嬢をお離し下さいませ。貴方方の汚い顔に驚いただけですわ。ゴホ、ゴホ、この通りですわ」


「あん?」


 頃20代半ばくらいの女性、聖女服を着ているわ。ベールから銀髪がのぞいている。目はアイスブルーだわ。肌は白い。少し病弱に見えるわ。


 彼女はカーテシーをして、ゴロツキ達に私の解放をお願いした。



「あああん??汚い顔?舐めてるの」

「聖女様が代わりに俺らの相手してくれるの?」

「もっと、お顔を拝見させろや」


 ゴロツキたちが彼女の肩に手を掛けベールと取ろうとした瞬間。


「キャアアアア!」


 と聖女様は叫びながら顔をあげ。ゴロツキの顎に頭が当たったわ。


「ウギャアアアーーー!」


 ゴロツキはのけぞってそのまま背中から地面に落ちたわ。後頭部を打ったかしら。


「お止め下さい!私は病弱ですのよ!ばい菌に感染したら死にますわ!!ゴホゴホ!」


 咳をしながら、倒れたゴロツキをつま先で蹴り始めたわ・・・


 ガキ!ボキ!バキ!


「キャアアアアアーーーーー!怖いですわ!ゴホ!ゴホ!」



「おい、とめろ・・・まさか、トキアか?」

「化け物聖女・・・トキア!」


 トキア様?この方が?


 彼女はヨロヨロ~とよろめきながら、ゴロツキの腕を取る。まるで、エスコートのようだ。



「おい、やめろ、関節を極めるな!!」

「お止め下さい!ゴホ!どうか、その令嬢に無体な事はお止め下さい!」

「やめるから、離せ、離して下さい」


 ヨロヨロ~


 と関節を極めたまま倒れて、


 ボキ!


「ウガアアアーーー」


 腕が折れたようだわ。


 もう一人のゴロツキが剣を取ったわ。


「ヒィーーー!来るな!来るな!」

 しかし、トキア様は。


「ゴホ!ゴホ!」



 と咳き込みながらしゃがみ。ヒラリと躱して。

 剣を持っている方の肘を軽く押して、更に剣撃の威力を増して、


 ゴロツキは、勢いに逆らえなくて、そのまま自分の剣で、左肩を斬ってしまったわ。


「ウワーーーー!」


「ゴホ!ゴホ!さあ、もう大丈夫ですよ。ゴホ!ゴホ!」


「あの、私、アリシア・ゼームと申します。これは、紹介状ですわ」

「ゴホ!ゴホ!まあ、そうですの。しかし、今は弟子の募集はしておりませんの」


「お父様より手形でございます」

「ゴホ!ゴホ!まあ、ようこそ、貴方は今日からシスターアリシアよ」


 これが、トキア様との出会いだった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ