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22話  作者: マグciel
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シエルvs襲撃者

 ソイルとゼータを先に向かわせたシエルは、目の前の黒いローブに身を包んだ女性の襲撃者と対峙していた。

「貴方の相手なんてしたくないのだけれど...それよりもさっきの地土族ヒロントの男、すごくいいわ。」

「ラオムディテクション...兄さんに色目を使う奴なんて私は許さないから。」

女性はシエルを睨んだ後、にやけながら頬に手を当てながらソイルのことをを思い出していた。

その様子を見ていたシエルはとても機嫌の悪そうな顔をしており、殺気立っていた。

「妹でありながらまだあの男に伝えられていないのね。でも残念、私に与えられた命は賢者を始末すること。まぁあの男だけは私の夫にして助けてあげるけど。」

殺気に気が付いた女性はシエルが“兄さん”と呼んでいた事をついて煽った。

それと同時にもうシエルが兄と会えなくなるという事に哀れみを抱いていた。

「そういう戯言は私を倒してから言ってくれる?」

「いいわ。私としてもライバルが減るのは嬉しいから。」

しかし殺気立っているシエルはその発言をバカバカしいと切り、それに女性はに少しムカついたが、すぐに余裕そうな表情に戻った。

「でも兄さんを好きになった同士として哀れにやられる奴の名前くらい覚えてあげてもいいけど?」

「貴方のその発言、直した方が可愛く見えるわよ。まぁいいわ、私はペイル。夜陰教団の幹部でフォルカス様の部下、そして貴方を殺す者よ。」

嘲笑うようにして発言したシエルに対して、呆れ混じりに返したペイルはローブを脱ぎ捨て、自己紹介をした。

深紅の瞳と髪、黒のスレンダーラインのドレスに身を包んだペイルは普通に見れば美しい姿をしていたが、シエルにとってはそんなことどうでもよかった。

「ラオムクレアール」

「スパイラルフレア」

シエルが発動させた“なにか”をペイルは理解できなかったが、すぐに切り替えて攻撃を開始した。

螺旋状に放たれた中級炎魔法は一直線にシエルに向けられたが、シエルは軽くその魔法を避けた。

「ツインホーミングメガフレア」

「ツインエアブレード」

自身の魔法を避けられたペイルは次に追尾式の炎中級魔法を放った。

放たれた火球は、空中を飛んでいたシエルに向かっていったが、初級風魔法である風の斬撃により相殺された。

「な!?初級魔法で私の中級魔法を...」

「驚くことでもないでしょ?このくらいは出来るって想定してなかったの?」

「いいわ。それなら貴方に回避や相殺をさせないようにすればいい...ホーミングアレスト」

地上に降りてきたシエルに向けて中級拘束魔法を放った。

シエルは避けることも対処することもなく拘束された。

「スパイラルフレア」

何も対処しなかったシエルを不思議に思いながらもペイルは魔法を放った。

再び放たれた螺旋状の中級炎魔法は、拘束されたシエルを捉えた。

「私相手に手加減でもしているつもりかしら。でも残念ね、そういう慢心は身を亡ぼすのよ。」

「それが慢心だったらの話でしょ?」

「っ!?なんで…」

螺旋状の中級炎魔法が直撃し、シエル討ったと思っていたペイルだったが、背後からはシエルの声がした。

ペイルは何が起きたのかを考えており、一つの結論に行きついた。

「...なるほど、転移魔法テレポートは流石に使えるわよね。まぁいいわ、結局私が貴方を殺す事には変わりないもの。フレアディセミネイション。」

「ラファーガ」

強気にそう言ったペイルは、中級炎魔法を放った。

幾つもの火球が放たれたが、シエルが展開した中級風魔法により、強風に巻き込まれ相殺された。

先程は初級魔法で相殺されたが、今度は中級魔法で相殺されたことにペイルは違和感を覚えた。

「あら?初級魔法で相殺させられるんじゃないのかしら?」

「貴方が放ったフレアディセミネイションは4位階魔法で、私が使ったのは3位階魔法。それもただ範囲が足りなかったからってだしね。」

「そう。ならこれは相殺できないわよね...コンフラグレイション。」

煽るようにしてシエルに問いかけたペイルだったが、結局煽り返されただけだった。

そしてその煽りを受け、ペイルは上級炎魔法を放つと、辺り一帯が炎に包まれた。

炎が少し収まった後、ペイルの目の前からはシエルが消えたが、拘束を解かれた時のこともあるため、警戒を怠らなかった。

微量な魔力を感じたと思うと、ペイルの頭上から声が聞こえた。

「確かにこれだと風魔法で対処するのは難しいね。」

「やっぱり生きてたわね...スパイラルフレア。今度は魔力が使われているのに明らかに少なすぎる。転移魔法とは違うなにか。どんな魔法を使ったのか、私に教えてくれないかしら?」

シエルは翼をはばたかせながらペイルを見下ろしていた。

声がした瞬間案の定かと悟りつつ、シエルが使った回避方法を問いながら、上空に向けて魔法を放ったペイルにシエルは呆れながら答えた。

「教えてほしかったら魔法撃つのやめてくれる?」

「それは無理ね。だって貴方を殺さないといけないんですもの。カトルスパイラルフレア。」

「カトルブラスターショット。はぁ...まああなたに言ったところで変わらないか。」

4つの螺旋状の炎を放つ中級炎魔法を放ったペイルに対し、シエルはやれやれといったように中程度の風球を4つ放つ中級風魔法で相殺させた。

そして地面に降りてきたシエルはペイルに対し先程使用した回避方法を話すことを妥協し、質問に答え始めた。

「私が特異能力を持ってることくらいは察しがついてるでしょ?」

「ええ、そのくらいはね。」

「その特異能力、スペーシアル・ドミネーションって言うんだけど、さっき使ったのはその中でもラオムテレポートっていうスキルなの。あなたに攻撃される前に使ったラオムディテクションの範囲内でなら断絶空間を作り出して転移できる。つまりさっきの炎魔法が私に到達する前にそれを使ったって訳。まぁ断絶空間を作るのには魔力が必要だからバレやすいっていうデメリットもあるけどね。」

シエルは淡々と自分の使った能力について語った。

それを聞いていたペイルは、先程使われたスキルか魔法か分からなかった正体が、その特異能力であることを理解すると......嘲笑した。

「あはは、まさか本当に言うなんて思わなかったわ。これでフォルカス様に貴方の能力を知らせることが出来たわ。あのお方が夜陰教団全体に知らせれば、貴方については対策が立てられる...そうなれば私は夜陰教団に、フォルカス様のお役に立てたという事に間違いないわ。最悪私が死んでも無駄にならないなんて、貴方には本当に感謝しないといけないわね。」

「あっそ。いくら私を対策しようとも、私には頼りになる仲間がいるからね。あ、ごめん。貴方には“大切な仲間”って言えるような存在、居なかったよね。所詮あなたは道具に過ぎなさそうだし。」

勝ち誇ったように笑いながら、嬉しそうに言い出したペイルは、興味なさそうにしながら煽ったシエルの発言に怒りを覚えた。

「...死になさい。イラプション。」

地面に広範囲に展開された魔法陣から、まるで火山が噴火したかの如き業火が周辺を焼き払った。

先程まで残っていた建物もこの上級炎魔法で焼き尽くされ、枯れた土地となっていた。

「(どうせまだどこかにいるんでしょうけど...)...纏繞(てんじょう)せし紅蓮の業火よ、赫燿(かくよう)の結晶となり、焼却せよ...インシネレイション。」

詠唱によりペイルを囲うように展開された魔法陣の魔法が発動すると、ペイルを中心とし広範囲に広がった炎が、周囲の崩れた建物などの瓦礫を赤く輝く結晶にさせた。

少しした後、再び炎がその結晶に触れると、その瞬間から赤く輝く結晶は徐々に塵となっていった。

「はぁ、はぁ...いくら断絶空間といえど、魔力を使う技である以上、最上級魔法は防ぐことはできないはず。」

「あ、そうそう言い忘れてたけど、私もう一つ特異能力を使ってたんだよね~。」

「え...」

流石に今度こそ倒せたと確信していたペイルの耳に届いた声は、ペイルを絶望させるには十分であり、シエルの手の内をすべて明らかにし、切り札まで使わせたと思っていたペイルは、何が起きたか分からなかった。

理解できない恐怖を味わい、膝から崩れ落ちたペイルに対してシエルは軽いノリで何があったのかを答え始めた。

「私が使った特異能力のスキルは3つ。さっき言ったラオムディテクションとラオムテレポート、そしてディメンショナルクレアール。」

「!?(私との戦闘が始まる時に使われた“なにか”...まさか特異能力によるものだったなんて)」

何も起こらなかったため考えていなかったスキルが特異能力によるものと理解したペイルだったが、具体的に何が起こったのかまでは分からなかった。

そんな恐怖の中に疑問の感情を抱いている様子のペイルの表情を見ながらシエルは、解説を再開し始めた。

「お、いいねその表情かお。それはそうと解説の続きね。えっと...前2つはさっき言ったから〜、ディメンショナルクレアールについて解説するね。このスキルは別空間を創るスキルだよ。空間を製作するのとは違って、空間そのものを創り出せるの。つまり~最初からここは私がラオムディテクションで感知したすべてを元に創り出した場所ってこと。」

「それじゃあ最初から...」

「そ、無駄だったって訳。あなたが使った魔法も、フォルカスって奴とか~夜陰教団に私の情報を流せるって思惑も、ぜーんぶ無駄♪」

「...っ」

シエルがスラスラと解説をし、全て無駄だと断言されたペイルは絶望していた。

話し方が変化したシエルに対して自分が相手に踊らされていたという事実、自分の慕っている者を馬鹿にされ、全力を出したのにも関わらず効果がなかったという事実...。

だが、絶望するペイルに希望を与える様にシエルはこの空間の解除方法を話し始めた。

「一応解除できる方法もあるよ。空間内で特異能力を使うか、外部から空間を認識した上で空間に攻撃すると。」

「私には特異能力はないけど、フォルカス様なら...」

微かに希望を抱き、シエルに敵意を向け抵抗する姿勢を見せたペイルを、再び絶望に叩き落す様にシエルが告げた。

「できるかもね〜。でもここで残念なお知らせ!まず元の空間だと偽装された風源素として存在してるから、感知系の魔法とかにはかからないし、そもそもそれが別空間って認識するのも困難で、出来るとしたら私の仲間たちか、フォルカスって奴くらいかな。まぁでもそのフォルカスって奴、多分最初に襲撃してきた奴だと思うけど、そいつの相手は白がしてるし、こっちには来れないでしょ。」

「フォルカス様なら貴方の仲間の1人如きすぐに殺して、私を助けてくれるはずよ。」

絶望感に押しつぶされそうになりながらも、自分が慕っているフォルカスのことを信用する思いで耐えていた。

シエルは思ったより負の感情に染まっていないペイルに対して不満を抱きながらも、へたり込んでいるペイルに優しく話しかけた。

「さっきの表情の方が好きなんだけど、まぁそれはいいや。一応聞くけど、私たちを殺すってのを辞めて、仲間になってくれるっていうなら見逃してあげなくもないけど?」

「(この子は完全に私を押さえたつもりでいる。ならフォルカス様が来るまで時間を稼ぐだけでもいい、ここは敢えて...)...それは本当かしら?」

「もちろん。そりゃあ約束を破る可能性もあるし、魔法で抑えさせては貰うけど、あなたが改心するならここから出してあげる。それは約束するよ。」

ペイルはシエルの話を聞き思考を巡らせた後、希望を持ったように偽り、聞き返した。

優しい口調のままペイルに返答したシエルに対し、ペイルは一時的に教団やフォルカスの事を悪く言ったとしても、時間を稼ごうと思い、その提案を飲んだ。

「分かったわ。フォルカスとあのクソ教団の事を裏切って、貴方の味方に...」

そう言いかけたペイルを背後から突如出現した杖が貫き、ペイルは口から血を吐きその場に倒れ、痛みに悶絶していた。

その様子に嘲笑っているシエルは、ペイルの思惑を見抜けたわけではなく、ペイルを貫いたのには別の理由があった。

「がっ...な、んで......」

「あなたを味方にするわけないでしょ?馬鹿なの?私のお兄ちゃんに近づこうって魂胆でしょ。......させるわけないじゃん。」

まさに“暗黒微笑”というような表情を浮かべ、ペイルの疑問に対して答えた。

そしてペイルを貫いた杖を手にし、こちらを睨みつけているペイルに対して、とどめを刺した。

「最後は絶望とか恐怖に染まった表情の方がよかったんだけどね。フューネラルサイクロン。」

魔法陣がペイルの下に展開されると、シエルの詠唱により発動し、魔法により強力な風による渦が出来ると、ペイルを含め広範囲を包み込んだ。


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