07
その週、フェムトの来襲はなかった。都市アンバースだけでなく、奪還したばかりの都市イオミン・ペイにおいてもである。
これで当分フェムトの襲撃がないことになる。都市アンバースのGMSと戦略部は敵の新戦力の登場が近いと見て隔壁の強化や、各通路での小型電磁投射装置の設置、高射砲の増設を急いでいた。
また、都市イオミン・ペイにおいても都市アンバースから送られた特別個体によるGMSの再起動が行われ、クローニングによる市民の生産がはじまっていた。まだ十分な数は揃っていないものの、時間がたてばたつほど戦力が増えていき、いずれ自衛も都市アンバースへの援軍も可能になる予定である。
そういった事情から、むしろフェムトの来襲がないことは人々に以前ほどの不安をもたらさなかった。
631にとっても同様で、それぞれ好きな訓練をこなしていた。ガスとユウは高密度群体の速度が対応できないほどではなかったため、銃撃によって固体化させて格闘戦をしかけるなど、より効率のいい対処法を探っていた。リグとテオは戦闘機シミュレータで追いかけっこをしている。当然リグは負け越していたが、可動タイル装甲を猫の毛のように逆立て、不意に速度を落として追いかけるテオ機をやり過ごしたり、片方のエンジンの出力をギリギリまで落として旋回率を上げるリグの発想は、空戦機動が得意なテオにも新しい刺激となっていた。
格納庫や地上戦シミュレータでWFの一団を見かけることも多々あり、向こうも頑張っているんだね、とユウは言った。一緒にやったほうが効率いいな、とはまだ返せないリグである。どうしても新しいユキの顔を見ることは避けたかった。ユウがそんな提案を促しているわけではないことはわかっているものの、実行に移せない己の不甲斐なさにリグは歯噛みするしかない。
翌週、ついに警報が鳴らされた。敵はいまだ防衛力の整わない都市イオミン・ペイを素通りして、この都市アンバースへ直接来襲したのである。
631は対空迎撃任務に回されることになった。フェムトの新戦術に対応できる可能性がもっとも高いのは631である。もし地上迎撃任務に回したら、前回の巨大飛行船のように新型が航空兵器だった場合に対応が後手になってしまう。敵の新型が地上用なら、そのときは631を呼び戻せばいい、とGMSと戦略部はそう考えたわけである。
リグたちは戦闘スーツを着ると格納庫へ走り、操縦棺に飛び乗った。カプセル状のそれが機体後部から内部に収容される。神経接続によって操縦手の脳と飛行制御システムが通信を開始、システムと可動部の動作チェックが自動で行われた。
「ずいぶん久しぶりですね」
「前よりもっとでかい飛行船じゃないだろうな」
「そうだとしても、いまは全兵士がポインターの予備弾倉を持っているし、戦術コンのアップデートで対処法を覚えている。大丈夫だよ」
どうだろう、とリグは考えてみる。ユウの言ったように、超巨大飛行船の可能性は低いだろう。だが、あの戦術のまずいところは攻撃した戦闘機が壊れるところだ。巨大飛行船が四、いや三隻でも同時に来られれば半数かそれ以上の機体が半壊する。それを毎週繰り返す物量作戦で来られたらどうなるか。戦闘機の修理は追いつくだろうか。そうなれば一兵士がとる戦術以前の、都市とフェムトの工業力の勝負になる。
もっとも、物量作戦を取られてもまったく絶望的というわけではない。都市イオミン・ペイがあるからだ。二つの都市の生産力と戦力があれば、巨大飛行船の三、四隻はなんとかなるだろう。
そこまで考えて、巨大飛行船の線はないな、とリグは考えをやめた。都市イオミン・ペイの存在を考慮に入れない相手ならこんなに苦労してこなかった。確実にこちらを追い詰めてくる、もっと別の手で来るはずだ。
出撃口から電磁射出され、都市の上空で631の四機は合流した。地上の大出力レーダーが示す敵の方向へ高速巡航を開始する。
「631全機、慎重にいけよ。敵は必ず、見たこともない手でくるはずだ。必ず生き残れ。以上」
リグの通信に三つの了解が返ってくる。リグの言葉が効いたのか、ガスももう軽口を叩かない。
しばらく巡航すると、機体のレーダーにも敵を示す輝点が現れる。何が出てくる、とリグはそれを睨んだ。
突然、その起点が増えた。二つ、三つ、どんどん増えていく。
「おかしいな。隊長、レーダーの故障らしい。だんだん敵が増えてる」
「こちらも同じだ」
「マジか。整備班はなにやってんだよ」
「いや、僕のもおかしい。同じ現象が起きてる」
三人が戸惑う中で、テオの不安げな声が響く。
「僕のレーダーでも敵機が増えています。これは故障じゃなさそうですよ」
この地点で敵機が増えるものだろうか。滑走路でも作ったのか。リグは遠くの地表を眺める。荒野が広がるばかりで、それらしき構造物はない。
じゃあ敵はどうやって数を増やしのか。リグはレーダーをにらみながらGMSに問い合わせた。地上のレーダーも同様に複数の敵を捉えている。
「リグ、他の小隊でも同じ現象が起きてる。電子的な欺瞞攻撃かな」
「断定はできないな……」
レーダー見つめるリグの目の前で、輝点は約三十個まで増えた。それらは一機を残して高速でこちらに向かってくる。それらはずいぶんきれいに並んでいた。四機一組で、編隊を組んでいるような……。
「そうか! ちくしょう!」
罵倒してから、リグは共通回線に怒鳴りつける。
「こちらは631! こっちに向かってきているのは敵の戦闘機だ。全機、最大戦速で緊急上昇をかけろ! 少しでも有利な位置につけ!」
味方機は戸惑いながらもその指示に従う。即座に反応したのは631とWFだけだ。
「ちょっと、リグ。敵の戦闘機だって!? 滑走路なんかあった!?」
「なかった! どういう手を使ったか知らんが、とにかく編隊を組んで向かってきてる」
「とりあえず上昇したけど、接敵したらどうすりゃいい、隊長!」
「逃げろ! 満を持してきたんだ、敵のほうが性能は上だろう。絶対に近寄るなよ!」
「来ました!」
テオの言葉を合図にしたかのように、空の彼方の黒い点があっという間に大きくなりリグたちに迫ってきた。
たしかに戦闘機だった。ミサイルをそのまま大きくしたような形状だが、翼もエンジン排気口もない。純粋に内部のフェムト群体の力場だけで動いているのだろう。それは機首に機関銃らしきものを下げていた。
それらは凄まじい速度でリグたちに襲いかかり、一瞬で三分の一、二十機ほどが撃墜された。
リグは急激な旋回で銃撃を回避しながら叫ぶ。
「テオ、鬼ごっこで得た機動データを全機に送れ! GMSと戦略部にもだ!」
「傍受されますよ!」
「やれ! 全員殺されるぞ!」
即座にテオは機動データを送信した。おかげで味方機の動きが変わる。それでも敵機のほうが早い。逃げまわりながらもガスは数発被弾した。
「ガス、まだ後ろに二機いる!」
「ちっくしょう、振り切れねえ!」
当たり前だ、とリグは余裕のない頭で考えを巡らす。向こうは飛行船に対抗するこちらの戦闘機を潰すため、本格的な空対空戦闘機を作ったのだ。目的がそうである以上、対空戦においてこちらより性能が低いということは絶対にない。こちらも機動力が必要だ。
「全機、電磁投射装置を投棄しろ!」
「飛行船に攻撃できなくなるよ!」
「いまだって近づけない! ただの重りだ、捨てろ!」
両主翼下に懸架された合計八基の電磁投射装置がそれぞれ投棄される。装備重量の半分以上はこれが占めているので、切り離した瞬間に機動性が上がる。いままでと同じ操作に対してより早く、より遠くに伸びるように機体が応えた。
それでなんとか同等というところだ。次はどうする、と自問してリグはガスを追っている敵機に目をつけた。射撃システムで補正をかけて狙い、機関砲で攻撃。当たらない。
顔をしかめつつ、リグは納得している。戦闘機に搭載された機関砲は飛行船の対空火器を破壊するのが目的だ。強固な装甲を貫くため破壊力を重視している。犠牲になっているのは連射速度と射程だ。敵機が装備しているような、素早く小さな戦闘機相手を想定した機関銃ではない。当たれば撃墜できるかもしれないが、命中させるのは至難の業だろう。こんな相手を想定した訓練や射撃システムはない。
そのとき、ガスが叫んだ。
「テオがやったぞ!」
どうやったのか、テオは機関砲でガスを追う敵機を一機撃墜してみせた。
「テオ、どうやった!?」
「わ、わかりません! 勘です!」
テオがこんな曖昧な報告をするのは珍しい。となると、本当に技術的なものではないのだ。リグは後ろを振り返る。自機の後方にも敵機が迫っていた。前や横から狙うのは難しいのだから、目標の後方につくのは当たり前だ。となれば、敵機を誘導できるということでもある。
「ユウ、ガス! 余裕があったらでいい、テオの目の前を横切れ! テオ、ここだと思ったら撃て!」
「りょうかいいいいいいい!」
急速旋回で重圧に潰されているガスがさっそくテオの目の前を横切る。テオは必死で機関砲を連射したが、かすりもしない。
リグ、ユウもテオの前を横切る。必死の連射が功を奏し、また敵を一機撃墜した。
「すげえぞ、テオ! 俺なんか当てられる気がしねえ!」
「リグ、これを続けていけば!」
「だめだ。テオしかできないし、弾が足りない」
テオ機の機関砲の残弾は四分の一を切っている。そしてガスの言う通り、リグも機関砲を当てられる気がしない。ユウはどうだろう。できるかもしれないが、考えるだけ無駄だ。一人二人ができたところで大勢は変わらない。
しつこい敵機から逃げ回りつつ、リグは全体の状況を調べる。テオが送った機動データのおかげで、あっさりやられることはなくなった。それでも敵機を振り切れないまま被弾が蓄積していき、一機、また一機と堕ちていく。目標を撃墜した敵機は別の目標に向かう。そうなれば敵機の攻撃密度ばかり増えていき、回避は困難になっていく。このままでは状況が悪くなる一方だ。
都市アンバースの戦力の七割が空中にある。遠方から比較的ゆっくり近づいていくるのは飛行船だろうが、これを攻撃できる気もしない。これ以上やられれば無傷の飛行船から降下した侵入個体を残り三割の戦力で相手をすることになる。防衛は絶望的だ。
よし、とリグは腹を決める。空中はあきらめる。しかし、引き返すのではだめだ。いくら軽量化したとはいっても、機動力は同程度だ。逃げたくても加速力で勝負するのは博打が過ぎるだろう。
「631全機、敵飛行船に向かうぞ」
「リグ、さっき、電磁投射装置を捨てたよね!?」
「そうだ。囮になるんだよ。敵機は飛行船を守りにくるはずだ」
「また追っかけっこかよ!」
「囮もうちの名物になりそうですね」
「慣れたもんだろ? 全機、最大戦速! 直線機動はするなよ、狙い撃ちにされるぞ!」
ガスの罵り声を聞きながら、スロットルを最大へ。四機はそれぞれ弧を描きながら飛行船に向かう。
とたんに、他の味方機を追っていた敵機が進路を変える。一斉に631目指して加速を開始した。
「みんな、通りすがりに飛行船の対空火器を潰しておけよ!」
今度はガスも文句を言わなかった。後ろから迫ってくる黒い影の数と速度に、飛行船の対空火器まで合わさったらかなわない。せめて固定火器くらいは必死で潰すしかなかった。
四機は飛行船を囲むように占位、高速で通り抜けざまに対空火器を破壊する。その後ろを追うように発射されたミサイルに各機からレーザーが飛び、無事にすべて撃墜する。
「飛行船から離れろ!」
素直に指示に従う三機を尻目に、リグは飛行船から離れず見回すように周回する。
通常の飛行船と違って小型で対空火器も少なかった。最大の特徴は各所に長い楕円形の窪みがあること。数からして、敵戦闘機はここに収まっていて、近づいてから発進したのだろう。
(……こいつは旧文明にあった空母ってやつだ)
敵機の群れが一目散にリグに群がる。リグは必死で回避機動をとりながら飛行船の周りを回った。飛行船自体が敵機の射線を遮ってくれるおかげで思ったより被弾は少ない。それでも二十機以上がリグだけを追いかけてくるのだ。可動タイル装甲の変形と推力偏向ノズルで横にスライドすると、さっきまでいた空間に無数の弾丸が通り過ぎる。一瞬気が緩めば蜂の巣だ。死の恐怖が冷気となってリグの手足を凍えさせた。
代わりにリグの指示通り飛行船から離れた三機に、敵機は目もくれなかった。リグも一緒に離れるものだと思っていたユウは、唖然としてから激怒しかけた。
「君ってやつは……」
「ユウ、よく見とけ! 次はお前だ、交代するからな!」
その言葉でリグの意図を悟って、ユウは安堵とともに冷静さを取り戻す。
「わかった。ガス、君もだ」
「了解。ここまできたんだ、付き合うぜ」
飛行船を何周かしてから、リグはユウと囮役を交代した。やり方は簡単で、リグにユウが合流し、少ししたらリグだけが飛行船から離れるだけだ。
無事に交代が済んだリグはヘルメット内のストローで水を飲んで一息つく。賭けに勝った。全機で一斉に逃げるよりはまだ可能性があると考えての囮作戦だった。電磁投射装置を投棄して飛行船に有効打を与えられない自分たちを追いかけるくらいだし、敵機はあまり頭が良くない。いまも飛行船に近づく機体以外には目もくれない。おそらく飛行船の護衛が最優先なのだろう。
これで主導権が戻ってきた。リグはGMSと戦略部に通信する。
「敵戦闘機群を引きつけることに成功した。敵飛行船への攻撃は現状では不可能。地上戦に備えて全機即時撤退させろ。ただし、臨時実施している囮作戦の交代要員としてWFはそのままこちらによこしてくれ」
GMSと戦略部は即座に了解を返してきた。これで四十機近くが帰還できる。地上迎撃部隊三十名と合わせればなんとかなりそうだ。
ユウとガスが交代するころにはWFが到着した。これは第二小隊で直接の知り合いはいないが、リグの囮作戦の説明をすんなり聞いてくれた。リグの知りようもないことだったが、このWF第二小隊はあらかじめGMSと戦略部から不測の事態には631の指示に従うように命令されていたし、WFのリーダーであるレオからも同じような助言をされていたのだ。
「次は僕ですね」
テオが飛行船に近づきかけたのを見て、リグは機体をその間に滑り込ませた。
「次は俺だ。ユウ、ガスと手本を見せてからWFに交代する。WF、弾はまだあるか? 俺たちを追う敵機群に安全な距離から撃ってみてくれ。数を減らせるかもしれない」
「ちょ、ちょっと待ってください! 僕は何をするんです!?」
「お前は可能な限り高度をとってこの作戦の情報を記録しろ。俺たちになにかあったら全速力で帰還するんだ」
「どうして僕なんです! 自分で言うのもなんですが、631では僕が一番……」
「だからだ、テオ。いまやってるのは味方機が帰還するまでの時間稼ぎだ。綱渡りなんだよ。一つ間違えば全滅する。そうなったとき、一番なんとかできそうなのはお前なんだ」
「それなら隊長が生き残るべきでしょう!」
「だめだ。俺はこの状況を少しでもマシにする方法を考える。だからお前しかいない」
「ユウ!」
「すまない、テオ。僕もリグに賛成だ。頼めるのは君しかいない」
テオはぐっと言葉に詰まった後、いつものユウの気持ちがわかりましたよ、と小さくつぶやいた。
「了解しました……恨みますよ」
そう言い残して高度を上げるテオ機を見上げながら、ユウはリグに個人通信を送った。
「リグ」
「わかってる。万一の保険だ。俺だって死にたくないし、ここで死んだらテオにもう一度殺される。それより、ユウは今のうちに休んでくれ。WFと交代できるようになればいくらか余裕ができる」
「これ、いつまで続けるの?」
「終わるまでは終わらないよって知ってるか? 奴が都市に侵入個体を投下するまでだ。その前に逃げようとしても、後ろから撃たれるだけだからな」
ユウが暗い忍び笑いを漏らす。リグはどうしたのか尋ねた。
「なに、いつもは僕が怒る役だったからね。今回はテオというわけだ。味方が増えたみたいで嬉しいよ」
「小隊としては大問題だな……」
リグはそら恐ろしい気がしつつ、ガスと交代するため機体を加速させた。
結果から言うと、囮作戦はうまくいった。一人の犠牲者もでなかったのは奇跡だった。
地上での迎撃も危ういながら成功した。通常より小型ながら無傷の飛行船と敵戦闘機から降下した八十体近い侵入個体を、増設した小型電磁投射装置やWFの第一、第三小隊の奮闘によってしのぎきったのだ。
都市アンバースはフェムトの新戦術を耐えきった。
飛行船と敵戦闘機から侵入個体が投下されたのを確認してから、631とWF第二小隊は帰還した。誰もが疲れ切っていたが、WF第二小隊は自分の足で歩けた。それに比べ、631は全員がぐったりして操縦棺から這い出ることもできない有様だ。見かねた、というか邪魔なので整備士たちは631の面々を担ぎ、シャワー室に放り込んでくれた。そこまでしてくれたのに、四人は戦闘スーツを脱ぐのも億劫なほど疲れ切っている。シャワー室のスイングドアの下から伸びた八本の足は普段人に無関心な兵士たちをも、ぎょっとさせた。
最初に戦闘スーツを脱いでシャワーのコックをひねったのはガスだったが、最初にシャワー室を出たのは要領のいいユウだった。最後まで残ったのはリグだ。戦闘スーツを脱いで座り込み、降り注ぐ暖かな雨を浴びながら何度も意識を失いかけた。戦術コンに命じて覚醒信号を送らせ、なんとかシャワーを浴び終えると小隊の部屋に戻る。明かりはついたままだ。右の二段ベッドの下にいつもどおりユウが寝ていて、なぜかガスも一緒だった。左を見ると上段ベッドへの梯子に手をかけたままテオが床で寝ている。不思議な射撃能力を見せ、さらに危険な目にあう仲間たちをじっと見ていざとなったら自分だけ逃げろ、などという命令まで受けて、さぞ神経をすり減らしたに違いない。
リグはテオを担ぎ上げ、普段は自分が使っている左の下段ベッドに寝かせた。上段に寝かせる体力はリグには残っていない。明かりを落とし、自分もテオの隣に寝転ぶ。テオの恨み言を思い出し、起きたら絞め殺されるかもな、と不安になる。
寝入る直前、戦術コンが通知を受信していることにリグは気づいた。GMSと戦略部からなので読まないわけにはいかない。曰く、戦闘詳報を早く出せ。リグは、これでも喰らえ、とばかりに戦術コンの生データを送りつけた。やる気さえあればそれから戦闘詳報に近いものを読み取れる。いつも人にばかりやらせやがって、たまには自分たちでなんとかしろ、といつものように毒づく元気もなく、リグは一瞬で意識を失った。