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怒涛のソロ活(末っ子4)  作者: 夏目 碧央
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俺たちの第2章

 「ぷっ、お前らなんて顔してんだよ。ほら、シン兄さんもそんな深刻な顔しないでくださいよ。」

活動休止のニュースが流れ、俺たちの仕事は全てキャンセルされた。コンサートの準備やアルバムを出す準備も途中で休止し、全てが延期だ。そうなると、突然スケジュールがなくなって、暇になった。もちろん、留学準備の2人はそれなりに忙しいだろうが、とにかく6人でユウキ兄さんのお見舞いにやってきた。やっと来れたのだ。

 で、俺たちがものすごく心配そうな顔を並べて病室に入って来たものだから、ユウキ兄さんはそれを見て、吹き出したのだった。

「思ったより元気そうじゃないか。ほら、お前の好きなバナナだぞ。」

シン兄さんがそう言って、バナナの大きな房を顔の前に掲げた。

「ありがとうございます。あ、そこ置いてください。」

ユウキ兄さんが脇のテーブルを指さす。

「ユウキ兄さん、痛みますか?」

カズキ兄さんが言った。

「いや、もう痛みはないよ。動かせば痛いだろうが、固められてて動かせないからな。」

腰も足もギブスで固められている。

「いやー、参ったよ。みんなには迷惑かけてすまないな。」

ユウキ兄さんがそう言って、俺たちを見渡した。俺はなんだか鼻の奥がツンとした。

「レイジはすぐ泣くんだからな。心配いらないよ。大丈夫だって。」

ユウキ兄さんが優しく言った。俺は泣いてなんかいなかったのに、そう言われた途端に涙が込み上げた。

「ああ、もうレイジはぁ。」

カズキ兄さんがそう言って、俺の肩に腕を回した。そして、皆が何となく笑う。テツヤ兄さんがハンカチを出して、俺の頬を伝う涙を拭いてくれた。チラリとテツヤ兄さんの顔を見ると、この上なく優しい顔で微笑んでいた。ちょっと顔が熱くなった。きっと赤くなっている。だって、こんなに近くでそんな顔を見たらさ、誰だって赤面するって。ましてや、涙を拭いてもらっているなんて、幸せ過ぎて泣ける。

「聞いたよ。シン兄さんとマサトは留学するんだって?」

ユウキ兄さんが言った。

「こんな時にすみません。」

マサト兄さんがそう言うと、

「こんな時だからこそ行くんだろ?それが正解だよ。お前は賢い。行ってこい。ああ、マサトが今以上にダンスが上手くなって、俺たちは付いて行かれるのかね?」

ユウキ兄さんはそう言って、頭の後ろで手を組んだ。

「本当だよ。俺たちもサボってないでダンスを練習しないと。」

タケル兄さんが言った。

「いや、そうじゃなくてさ。俺が学んで来るのは自分が上手くなる為だけじゃなく、新しい振り付けとか、それから上手くなる為の方法っていうのかな、そういうのを学んで来て、グループの成長に役立てたいと思うんだよね。」

マサト兄さんが言った。

「なんて素晴らしい考えなんだ。お前は天使かよ。いや仏か?」

シン兄さんが言った。

「そういうシン兄さんだって、語学留学するのは、海外に行った時のタケルの負担を減らす為でしょ?」

マサト兄さんが切り返した。シン兄さんはちょっと言葉に詰まって、かすかに赤面した。おや?おやおや?で、タケル兄さんを見たら、こっちはもっと真っ赤になってた!

「そうか、そうか。みんなグループの為に頑張るんだな。俺も、むしろこの入院をチャンスと捉えて、いつも時間がなくて中途半端だった曲作りを頑張ろうと思ってるんだ。」

ユウキ兄さんが言った。

「今まで時間がなくて出来なかった事を、色々やってみよう。そうして、またグループ活動を再開した時に、成長した姿をファンの方々に見せられるように、精進しようじゃないか。」

タケル兄さんがそう言った。

「俺たちの第2章の始まりだな。」

ユウキ兄さんが、ぼそりと言って微笑んだ。


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