13
次の日、日が登ってすぐにシャルルはパチリを目を覚ました。
何時かは分からないが、早めに行動しておいたほうが良いだろうと思い、ダブレットとトラウザー、ブーツの格好に着替えると左腰に細剣を佩いて食堂兼酒場に降りていく。
食堂兼酒場に着くと、示し合わせたかのように暁の獅子の面々もやってきた。
「やぁシャルルさん。おはよう」
「おはよう、ランドン。みんな」
「早いね。起こしに行こうかと思ってたんだけど必要なかったね」
「日が昇ったから起きた」
「うんうん。冒険者に必要な資質だよ。ご飯を食べたら鍵を預けてギルドに向かおうか」
「分かった」
朝も朝でシャルルは大量に食べ、皆を驚かせながらも暁の獅子たちに今日の予定を聞く。
「まず冒険者ギルドに行って、これから出発することを伝える。それから一応シャルルさんはギルドマスターと登録コードを交換しておいたほうが良いと思う。それから、もう少しだけ保存食を買い足して、出発。ギルドの近くの保存食屋に品物がなかったら申し訳ないけどそのまま出発するよ」
「大丈夫だ。イ……時間停止のマジックバッグの中に鹿……クリスタルエルクが何頭か残ってる」
「ハハ、ハハハ……クリスタルエルクの肉って薬効もあってめちゃめちゃ高級品なんだけど……シャルルさんが足りなかったらそれ食べてもらう方向で」
「分かった」
などと話ながら食事を終え、宿に鍵を預けて一同はギルドに向かった。
ギルドに入ると、冒険者たちでごった返していた。依頼書を貼られるボードであろうところにはたくさんの冒険者たちが集まっており、時折取った取られたで諍いが起きている。
併設の酒場で食事をしているものも居て、その混みようと言ったらシャルルが初めてみる光景だった。
シャルルがキョロキョロしているうちに、暁の獅子たちはギルドマスターに取次をお願いしたらしい。ギルドマスターの執務室がある二階に招かれる。
執務室にはギルドマスターのジェイクだけでなく、ラーシュも居た。
「よう、おはようさん皆。これから行ってくれるんだな?」
「はい、ギルマス。昨日で準備は終わりましたので。一応出発の報告と、あとシャルルさんに通話の使い方を教えたので、ギルマスとコードを交換させておいたほうが良いと思いました」
「そうだな。シャルルさん、俺と登録コードを交換してくれるか?」
「もちろん」
「あ、シャルル。俺とも交換しよう。連絡がとれるようにしておきたいからな」
「分かった」
シャルルはジェイクとラーシュに登録コードを出してもらって、すばやく登録する。
どんどん登録一覧に人が増えていくことに、シャルルは満足感を覚えていた。
「それじゃあ出発します。討ち漏らしも探索するので、帰りは明日か明後日になるとおもいます」
「おう、頼んだぞ暁の」
「シャルルも頑張れよ。いや、頑張れとは言っておくが、やりすぎるなよ」
「? 分かった」
そうして暁の獅子とシャルルの面々はギルドを後にした。
ギルドを出た後は、近くの保存食屋に寄って保存食を買い足す。
昨日の今日で、しかも早朝に訪れたことに店主は驚いていたが、シャルルの爆買いに気を良くしておまけも付けてくれた。
シャルルは前日の買い物と合計で、オーク肉の干し肉を五十枚、鹿肉の干し肉を五十枚、スピナットの堅パンを四十個、ジンゼンの堅パンを四十個、クービスの堅パンを二十個手に入れた。おまけはキーザ入りの堅パンだ。
味見をさせてもらったが、ジンゼンは人参、クービスはかぼちゃじゃないだろうかとシャルルは思っている。スピナットは葉物だと思うが何かまでは分からなかった。
キーザは名前こそ違うものの、チーズだった。セミハードとか、ハードとかそう言うのは分からないが、チーズだった。
シャルルは「自分が知っているものと名前がだいぶ違うな」と考える。いずれは市場などで買い物をしてみたいが、物を探したりするのに苦労しそうだった。
「じゃ、門から出て案内よろしくね、シャルルさん」
「分かった」
買った保存食をカバン経由でインベントリに仕舞い、シャルルは暁の獅子たちを伴って門から出る。
門から出るときは入るときとは違い、フリーパスなので並んでいなかった。
地形把握スキルを使い、確かこっち、という感じで暁の獅子たちを案内するのだった。