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部屋を見回した。スイートルームは入ってすぐが応接スペース、その向こうに寝室があり、風呂とトイレが部屋に併設されていた。一般ランクの部屋はトイレは併設されているが風呂は共同の大浴場を使うのだとか。
風呂場を見る。猫脚のバスタブが二つ設置されていて、壁にかけられた使い方によると、一つは体を洗うためのバスタブ、もう一つは温まるためのバスタブのようだった。
いい香りのする石鹸も置いてある。シャワーの魔道具とお湯を貯めるための魔道具が設置されており、難しい操作は必要ないらしい。
シャルルは温まるためのバスタブに湯を張ることにした。
魔道具を操作してお湯張りを設定すると、自動でお湯を一定量貯めてくれるようだった。ほったらかしにしても溢れることはない。
シャルルは風呂場から出ると、今度は応接室に何があるのか探検することにした。
美しい豪華な調度品の他に、セラーも設置されていて中のドリンクは有料で精算しなければならないものの、冷やされていて飲めるようだった。中のドリンクを確認すると、ワインの他に果実酒や果実水などいろいろ取り揃えている。宿の人間に頼めば追加もしてくれるようだ。
他にはギルドカードの通話機能が宿内のみで使えるような魔道具が設置されており、ここから宿の人間にコンタクトが取れるらしいことも分かった。
次に寝室をシャルルは覗いてみることにした。
こちらも調度品は豪華で高級そうだ。キングサイズのベッドが一つ鎮座しており、バルコニーにも出れるようだった。ちなみにここは四階だ。
ベッドを押して見ると、ふかふかだった。シャルルはワクワクしつつも冷静に自分にクリーンをかけて、ブーツを脱ぎ、ベッドに横たわってみる。
森の中の地面とは大違いだった。スプリングが効いたベッドは体を包み、肌触りのいいシーツが手に嬉しかった。枕に顔をうずめると、おひさまの匂いがする。
たまらずシャルルは子供のようにベッドでゴロゴロバタバタするが、スプリングの効いたベッドは余計な音は立てなかった。
しばらく布団でゆったりしていると、風呂場からお湯が張れた合図だろう。音が聞こえたので風呂場へ様子を見に行く。
予想通りお湯がきっちり張れていて、手を入れても適温だったため、シャルルは風呂に入ることにした。
脱衣所で服を脱いで服を折りたたんでおく。タオルも出しておいた。体を洗うための小さめのタオルは手にもち風呂場に入る。
クリーンで体を綺麗にしてはいるが、まずは体を洗おうとシャルルは石鹸を手にとって体を洗うためのバスタブに入る。石鹸はよく見ると、体を洗うためのもの、髪の毛を洗うためのもの、顔を洗うためのものといろいろ用意してあり、どれも液体だった。トイレを覗いたときにあった手洗い用の石鹸は固形だったから、きっと固形の石鹸も液体の石鹸も開発されているんだろう。
シャルルはタオルをシャワーに当てて濡らし、体を洗うための石鹸を染み込ませる。ゴシゴシとあらうと、クリーンでは取れなかった垢が出てきて洗い流せばスッキリした。
次に髪の毛を洗うための石鹸を手に取り、髪の毛になじませる。泡立ちはよく、ふんわりとバラの香りがした。わしゃわしゃと髪の毛を洗うと頭皮もスッキリするような気がする。洗い流して次は顔を洗うための石鹸。
顔を洗うための石鹸はスッと鼻の通るメントール系の匂いがした。こちらも顔をゴシゴシ洗って、流す。
シャルルはもう一度全体的にシャワーを浴びて、タオルを洗って絞り、長髪が湯に入らないように髪の毛をまとめてタオルを巻く。
隣に並べられた温まる用のバスタブにそのまま移る。
肩まで浸かればお湯がじんわりと体を温めてくれた。ほっと一息つきそのまま芯まで温まる。
十分に温まった後、シャルルは湯船からでて栓を抜いた。
その後脱衣所に戻り、タオルで体中を拭く。買っておいた部屋着をインベントリから出して着替えて、今まで来ていた服はインベントリに仕舞った。
洗面台を見れば、髪を乾かす魔道具があったのでそれを使って髪の毛を乾かす。
その後、お腹もいっぱい。風呂に入ってスッキリとして温まったシャルルは機嫌よくベッドに潜り込んだのだった。