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「シャルルさん! ここが『銀の精霊亭』です!」

「ありがとう、みんな」

「いえいえ。どのみち我々もここに泊まっていますから」

「そうなのか?」

「そうだ。ここは中堅の宿屋にしては設備がしっかりしていてな。風呂もついてる」

「おふろ!」

「お、シャルルさんお風呂は好き?」

「たぶん好きだ」


 そんな会話の中たどり着いたのは、銀の精霊亭と呼ばれる宿屋。

 一階の一部は食堂兼酒場になっているらしく、朝食と夕食がここで食べられるらしい。出てくる食事も旨いとかで、かなり人気だとか。


「部屋、空いてると良いんだけどね。人気の宿だから。すみませ~ん女将さ~ん」

「あら、皆さんお帰りで。お一人追加ですか?」

「いえ、彼には新しい部屋を。空いてますか?」

「今はスイートしか空いてませんね」

「スイートっていくらでしたっけ」

「小金貨一枚、一万ガルです」

「シャルルさんどうします? 他の宿にするなら案内しますけど」

「ん、ラーシュが勧めてくれたからここがいい。オークキングのお金もあるし」

「あーそういえば他のオークも卸すって言ってたもんね。それに他にも……。うん、全然問題なさそう。女将さん、スイートお願いします」

「はいはい。それでは台帳にお名前をお願いします」

「分かった」


 シャルルは宿台帳に自分の名前を書くと、さっき買った財布から小金貨一枚を出して考える。


「長期間借りることもできるか?」

「できますよ。何日お泊りになりますか?」

「とりあえず、一週間」

「では一週間で小金貨六枚、六万ガルです」

「? 一週間だから七日で七万ガルでは?」

「シャルルさんシャルルさん。一週間は六日ですよ」

「そうなのか……七日だと思ってた」

「えーと、一週間でよろしいですか?」

「一週間で構わない。延長したい場合はどうすればいいのだろう」

「前日の昼までに言ってくだされば同じお部屋で延長できますよ」

「ありがとう」


 そうしてシャルルは無事宿を取ることができた。

 夕食がてら話でもしないかと暁の獅子に誘われて、シャルルも酒場で夕食を取ることにする。

 夕食は美味しそうなブラウンカウのステーキとサラダ、コンソメ味のスープだった。お金を払えば他の食事も追加できるらしい。パンだけは食べ放題だ。

 とりあえず、暁の獅子ともに全員追加で酒を頼んで、席に着く。


「シャルルさん。なんで一週間が七日だと思ったの?」

「分からない。一週間は七日。一ヶ月は三十日か三十一日か二十八日。たまに二十九日。一年は十二ヶ月で三百六十五日だと思ってた。違うのか?」

「どういう分け方なんだろう……聞いたことないなぁ。どう思う皆?」

「たまに二十九日ってどういうことなんでしょう、シャルルさん」

「閏年というのがあって、日数の調整で二十九日の月がある年がある。その年は三百六十六日だ。季節のズレを修正する」

「うーん、どこの数え方ですかね? 聞いたことないです!」

「どういう計算でそう言う暦を作っているのか興味はあるが……。聞いたことはないな」

「一週間は六日。では一日は二十四時間か? 一時間は六十分? 一分は六十秒?」

「そこはあってるね。一日は二十四時間だし、一時間は六十分。一分は六十秒だよ」

「じゃあ一ヶ月は?」

「三十日だね」

「五週間?」

「そうそう。で、一年は十二ヶ月で三百六十日だよ」

「キリがいい」

「キリが良くないと暦として面倒だからな」

「そうか」

「話を聞いてて思ったけど、シャルルさんは算術もちゃんとできてるみたいだね」

「?」

「宿代もすぐ計算してたし、一ヶ月は三十日って言ったときにすぐ五週間だって分かったし」

「簡単な割り算だろう?」

「掛け算割り算ができるのは、上位ランクの冒険者か商人か、貴族ぐらいなものだよ」

「? 九九ができれば簡単」

「クク? なんだいそれは」

「一から九をすべてのパターンで掛け合わせる掛け算。一覧で覚えてる」

「へぇ、すごいな。ていうか、そういうのは覚えてるんだ」

「知識としてある」

「なるほど。記憶だけ欠落してて知識は残ってる状態なんだね」

「不安だらけだと思いますが、我々も出来る限りサポートしますから、頑張りましょうねシャルルさん」

「もし記憶が戻らなくても、新しい記憶を積み重ねていって幸せになればいいんですよ!」

「おいサシャ。滅多なことをいうな。記憶はきっと戻るさ、シャルル」

「? ありがとう」


 話をしている間にも、シャルルはもぐもぐとステーキを平らげていく。一枚では足りなかった。もう一枚追加。もう一枚追加と追加していって、最終的にシャルルはステーキ二十枚にサラダ九皿、スープを七皿おかわりした。パンも四十個近く食べている。

 その食いっぷりに暁の獅子たちは「その細身のどこに消えてるんだ」と驚いていたし、周りの宿泊客たちも驚いていた。キッチンを牛耳る宿の主人は「良い食いっぷりだ」と喜んで、デザートに果物を付けてくれた。


「美味しかった」

「いや、いやいや。すごい食うね、シャルルさん」

「腹八分目」

「え、それで八分目なの!?」

「食べようと思えばまだ食べられる」

「……明日の朝、携帯食料もっと買い足しておこうか」

「分かった」

「ギルドに寄ってから行くから、ギルドに寄って、その後に買い足そうね」

「分かった」


 食事を終えたシャルルと暁の獅子たちは、もう夜なのもあってそれぞれ挨拶を交わし部屋に戻ることになった。


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