10
シャルルと暁の獅子たちがギルドから出ると、街の人々がざわざわとしながらシャルルたちを見ていた。
暁の獅子たちは何故か苦笑いをしつつも、シャルルに声をかける。
「とりあえず先に保存食を買いに行こうか、シャルルさん」
「分かった」
「ギルドから歩いてすぐですからね」
「他にも売っている店はありますけど、ギルドから近いところが一番便利なんですよねー」
「まぁ、種類が少ないのと、皆が皆利用するからたまに品切れしていることはあるがな」
そう言いながら暁の獅子たちは歩く。歩いて1分も立たないうちに店に着いたので、本当にすぐ近くにあるんだな、とシャルルは関心した。きっと冒険者にとっては便利だろう。そうだとするなら、絶対売れているはずだ。
「らっしゃい。偉い美人連れてるな、ランドン。お貴族様かい?」
「貴族じゃないよ。今のところはね。干し肉と堅パン見せてくれる?」
「今のところは貴族じゃないってなんだそら。まぁいいけどよ。干し肉はオーク肉の良いのが入ってるぞ」
「やったー! オーク肉の干し肉、旨いんだよね!」
店主がそう言って何枚かの干し肉と堅パンを出してくる。
シャルルが興味深げに見ていると、店主は「味見してみるかい?」と言って笑った。
シャルルは嬉しげに微笑んでこくりと頷くと、店主は顔を真っ赤にさせながら、これは何の肉の干し肉で、とか何の草を練り込んだ堅パンで、などと説明してくる。
「おいしい」
「シャルルさん何が美味しかった? オークキングのお金はもらってるでしょ? ちょっと高いの買ってみても良いんじゃない?」
「オークのおにくがいい」
「オーク肉美味しいよねー」
「パンはこっちのスピナット? が入ったやつがいい」
「スピナットの堅パンも美味しいよね。スープに浸したりすると美味しいよ」
「食べてみたい」
「野営するときに多少は作るから、食べるといいよ」
「シャルルさん、食に対して割りと貪欲だなー」
「まともな物を食べてなかったのでは……?」
「うん……これからはいっぱい食おうな、シャルル」
などと話しながら買い物を済ませる。
シャルルはここで、オーク肉の干し肉十枚を千ガルで、スピナットの堅パンを十個五百ガルで買った。
少し高めのオーク肉の干し肉が一枚百ガル、スピナットの堅パンが一個五十ガルの計算だ。
これを見るに、物価はかなり安いのだろう。もしかしたら、食品は安く、他は高いといったように「この世界ではない世界」の価値とは違うかもしれない。
あるいは、街によって物価が変わったりするかもしれない。
これは市場をみて勉強していくしかないな、とシャルルは考えた。
「じゃ、シャルルさんの他の買い物をしにいこうか」
「? 保存食は買った」
「お財布とか必要でしょ? 多少は案内できるから、少し身の回りのものも用意したらどうかなと思ったんだ。野営準備は俺たちのを使っていいから、今度でもいいけど。あ、でもテントくらいはあったほうがいいかな。人のテントで寝るの、嫌でしょ?」
「? その辺で寝る」
「あーそうか。大魔境でサバイバルしてたんだもんね。それなら必要ないかな。見張り立てるから、テント空くしね。気にならないならそれに寝てもらえばいいか。テントとかも、よく考えて自分にあったものを買ったほうが良いからね。他に欲しい物とかある?」
「……飴。美味しかった」
「じゃ、飴を買いに行こう」
その後、シャルルは暁の獅子に連れられ革製品の店で財布を。菓子店で飴を購入することになった。
飴の購入の際には色々な味の飴にシャルルが大興奮して、店員を驚かせた。
他にも洋服店で下着を何枚かと部屋着を一枚とタオル類を何枚かとりあえず買い、薬剤店でポーション類を一通り揃える。
装備を買うか? とも聞かれたが、シャルルが来ている服には防護魔法がかかっていて下手な鎧より性能が良いのでとりあえずこれで、と買わなかった。
とにかく今日明日の準備だけ済ませて、買い物は終わった。