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番外02-03.戸惑い

 学園内での私の立ち位置は変わったけれど、クラスは変わっていない。というのも、授業の進み具合が違っていたからだ。

 ルイス様たちのクラスは学園に入る前から家庭教師によりみっちりと教育がされているため、私たちのクラスよりも進みが早い。同級生ではない、というのは残念ではあるけれど、3年になれば同じクラスになれると信じて、3年になった時に置いて行かれないように今から張り切って学ばないといけない。

 

 まっすぐ帰り、勉強も淑女教育も受けなければならない。

 ――のだけど、空き教室に私はアメリア様とリカルド様といる。


「えっと、私の挨拶がまだでしたね。ルティリアです」

「えぇ、知っていますわ」


 腕を組んで唇を突き出している姿からは「不機嫌です」というオーラが漂っている。アメリア様を宥めようとしているリカルド様の姿はなぜだろう、数時間前にも見た姿と何も変わらない気がした。

 1つ違うのは、へらへらと笑いながら2人を眺めている私がいることだった。

 落ち着いてみれば、誰もいない教室で座りもせずに3人で立っているのは奇妙すぎる光景な気がする。

 しかし、2人をここに連れてきたのは私だった。



 

 放課後になってすぐに私はクラスメイトに「用事があるので先に帰ります」とルイス様への伝言を託して、教室を飛び出した。

 アメリア様が突撃してくる可能性は十二分にあり得る。しかもそのタイミングにルイス様と私が一緒にいる可能性は大だ。であれば、先手必勝。私がアメリア様に会いに行けばいいのだと考えた。

 ゆっくりとしているわけにはいかないと、1年の教室へと向かえば、案の定アメリア様と遭遇した。

 

「見つけましたわよ!」

「やっぱり……」


 声を張り上げるアメリア様の目の前へと来た私は、アメリア様の手を握る。私自身が肉付きの良い方ではないのだけど、その私よりもアメリア様の手はさらに細く、力を入れると折れそうなくらいで、戸惑ってしまう。


「あの、ここでは何ですので、ひとまず移動しませんか?」


 よく通るアメリア様の声のおかげで、周囲から視線を感じる。

 うぬぼれではなく事実として、私が『ルイス様の婚約者』として注目を浴びやすいことは理解している。その私が1年の子とただならぬ雰囲気になれば、その噂は瞬く間に広がりルイス様の耳に入ることだろう。

 ちらりとリカルド様を見れば、私の思いを察してくれたのか、私がつかんでいない方のアメリア様の手を掴んでくれた。

 はたから見ればまるで連行しているようで、これはこれで目立っている気がするものの、ひとまず私とリカルド様で空いている教室へとアメリア様を引きずり込んだのだった。

 この展開は全く予想もしていなかったのか、意表を突かれたアメリア様はどうしたらいいのかわからずに唇を尖らせている、というのが現状である。


「えぇ、と。あの、勝負といいますが、私何かしましたか?」

「いいえ。あなたは何もしてませんわ」

「……?」


 ふるふると顔を振れば、ピンクブロンドの髪が揺れていた。

 ぐっと何かを飲みこむように、不本意だと言わんばかりの様子に私は首を傾げるばかりだ。


「ごめんね。アメリア、もうやめよう?ね?帰ろうよ」

「あなたは黙っていて!」


 釣りあがった気の強い瞳でリカルド様を睨みつけたあと、アメリア様が私を見上げる。

 

「え、と……?」


 気の強い子を前にすると気圧されてしまう。父も義母もシーフィももういないというのに、自分の情けなさに嫌気がさす。ルイス様がいなければ私は、あの頃から何も変わっていないというのが思い知らされる。


「ルティリア。私と勝負して、私が勝ったらルイス様と別れなさい!」

「……はい?」


 予想もしていなかったというと嘘になるだろう。ルイス様のあの美貌なわけで、そして実際に告白されて振られてしまった女の人だって私は目撃している。私という婚約者がいたところで、好意を抱く人はたくさんいるだろうし、私よりも自分の方が優れているという女の人は多いことだろう。

 しかし、私に面と向かって別れろといってきたのはアメリア様が初めてだった。


「怖気付いておりますの?どんな女かと思っていましたが他愛もありませんのね」

「いえ、私にそういう人は初めてだったもので驚いています。アメリア様はルイス様を慕われているのですか?」

「いいえ」


 何を言い出すんだと言う顔で私をアメリア様が見てくるけれど、私の方こそ何を言い出すんだと思ってしまう。説明を求めようとリカルド様を見ると、手のひらで顔を覆っていた。


「え、もしかして」


 確かに傾国の恐れのあるほどの美貌をルイス様は持っている。毎日見ている私だって慣れることなく、あの瞳に映るだけでドキドキして上手く話せないことだって多い。

 まさかそれが――異性相手にも発揮しているとでもいうのだろうか。


「待って、待ってください。冷静になりましょう」


 いよいよキャパオーバーとなった私の顔はさぞかし青いことだろう。偏見を持つつもりはないし、同性愛を歌うオペラだって存在する。作曲家が同性愛者だということもある。


「ルイス様は渡せません!」

「私が勝ったらルイス様と別れて、リカルドと付き合いなさい!」



 ……はい?

3連休中には番外編を完結させたい気持ちでがんばります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] そっちかーい!!笑 [一言] 楽しく読ませて頂いております( *´艸`) 番外編嬉しいです! これからも楽しみにしております♪
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