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番外02-02.驚き

「あぁ、それはフィールド子爵家とリアム男爵家だね」

「子爵と男爵……」


 午後の1コマ目が終わったあと、ルイス様とセディ様の教室を訪ねて、リカルド様とアメリア様について聞いてみた。セディ様からあっさりと答えを得ることができて、さすが物知りのセディ様だと改めて感動した。

  そしてそれ以上にリカルド様が子爵で、アメリア様が男爵だというのは意外だった。アメリア様の面倒を見ているように見えた気がしたのだもの。


「数年前に鉄道ができたでしょ?その鉄道を作るのに、フィールド男爵が窓口だったんだけど、実際に進めてたのはリアムだったんだ。開通したことで、フィールド男爵には子爵位をそして、リアムには男爵位があたえられたんだよ」


 馬車で移動することが一般的な移動手段の中で、数年前にある領地が隣街と鉄で動く乗り物を作ったという話は聞いたことがあった。なんでも石炭を燃やした動力で大きな鉄の箱を動かすのだと。馬車の何倍、何十倍も早く動くそう。

 その話は私の耳にも入るほど、世間では大騒ぎしたものだ。

 今は試験運用を行っていて、ゆくゆくは王都とも繋げる予定だ、とも聞いている。


「アメリア嬢は体が弱くて、寝込んでいたって聞いてたけど。へぇ、編入してきたのかな」


 そんな姿には全く見えなかったけれども。元気よく指を突きつけてくるアメリア様の姿を思い出して首を傾げる。

 

「その2人がどうしたんだ?」

「あ、えと、あの、先ほど廊下でお会いして、どんな人なのかなと」

「そうか」


 いきなり知らない人達の話をするものだから、ルイス様が不思議に思うのは当たり前のことだ。どうしてもこれからアメリア様と何かが起こる予感しかない私は、ルイス様を巻き込みたくなくてつい誤魔化してしまった。


「ルティリア」

「はい?」


 じっと見つめてくるルイス様に胸が高鳴る。湖畔の瞳は透き通っていて、飲みこまれそうでどきどきした。

 私が瞳に映っているということは今ルイス様は私しか見ていないわけで……。

 顔がじんわりと赤くなってきたような気がしたとき、ルイス様が口を開いた。


「何かあったなら行ってくれ。すぐに潰す」

「潰す、とは」


 熱くなっていた体温がぴたりと止まり、すぅっと下がっていく気がした。

 ルイス様の瞳には本気の色を宿っている。瞳に映っている私の表情がカチリと固まっている。


「ルティリアちゃんは知らないもんねぇ」

「知らない、とは」

「いや、言い方が悪かったな。怖がらせるつもりはないんだ」

「いや、あの」


 言い方が悪い、とか、怖がらせるつもりはない、と優しい言葉のはずなのになんだかひやりとした汗が背中を伝う。セディ様が楽しそうにけらけらと笑っているのが気になって仕方がない。

 もしかして、私の手にアメリア様とリカルド様の命運がかかっているなんてことは――。


「まぁ、あの事業も初めはすごい反対運動があったのに、いきなり滞りなく進んだからね。探ったら色々出てくるとは思うよ」

「セディ、ルティリアに危ないことを聞かせるな。怖がるだろう」

「ルティリアちゃんを前にするとほんとお前は俺の知らないやつになるな」


 私の手にあの2人の命運がかかっていることは明らかだった。生殺与奪の権利をいきなり渡されて、思わず苦笑いをしてしまった。その様子をみて、そっと手を握られたけれど、私が怖がっているのはそういうことではない。

 もしかして、私への明確な嫌がらせが少し沈静化したことがあったのだけど、まさか。


「ルイス様、あの、私、以前にクラスメイトに」

「あぁ、安心しろ」

「安心していいよルティリアちゃん」


 タラリと汗が流れる。続きの言葉を聞いていいのだろうか。

 聞いてはいけない気がする。


「掃除は終わっている」


 ルイス様の力強い言葉と、セディ様の晴れやかな笑顔。

 深くを聞いてもきっと答えてはくれないだろう。

 

 何か言葉を出すことはできなくて、ただへらへらと笑うことしかできなかった。

 私は聖人ではないから、嫌がらせをされたことに悲しみも憤りも、もちろんある。だけど、心の奥で私はクラスメイトに対して申し訳ない気持ちになった。そして、アメリア様とのことにルイス様たちを巻き込むわけにはいかないと、強く心に思うのだった。


 ――そう決意をしたはずなのに。

 

「ルティリア、俺はルティリアに酷いことをしたくない」

「あ、あの」


 与えてもらっている私の部屋の中。

 向かい合って座っていたはずなのに、隣にぴったりと座ったルイス様が手を握って、私の目を捕らえている。

 湖畔の瞳が、強い感情で揺れていた。


「あの男は誰だ?」


 どうしてこうなってしまったんだろうか。

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