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番外02-01.不穏な出会い

 ルイス様たちとサロンでのランチを終えた私は、担任の先生に呼ばれていたことを思い出した。

 一緒に行く、というルイス様に、ひとりで大丈夫だということを伝えて、1人職員室へと向かう。

 ホルン家がなくなり、学園に『ルイス様の婚約者』として籍を置くこととなった私には、色々書類上の手続きはまだあるのだった。

 

 「ルティリア!わたくしと勝負なさい!」


 ルイス様のご両親へと渡すプリントを預かった私は職員室を後にした。

 午後の授業の時間が近づいていて、小走りで向かっていると、通せんぼをするように女子と男子が立ちふさがった。

 ずびしっと音が鳴りそうな勢いで指を突きつけられる。


「は、はい?」


 見覚えのない2人に、目を瞬かせて私はすっとんきょうな声を上げることしかできなかった。

 こういう時、いつも優雅であるべきなのにと未熟さを感じてしまう。


「何度も言わせないでくださいな。2つもついているお耳は飾りなのかしら?」

「や、やめなよ。困ってるから。ね?」


 腰のあたりまであるピンクブロンドの髪をなびかせた女子は、金色の瞳を煌かせている。

 自信満々なその姿に圧倒されて、おろおろとしていると、へにょりと眉を下げた男子が間に立ってくれた。

 柔らかそうな栗色の髪と、垂れ下がり優しそうな青い瞳の男子は、女子を宥めようとしてくれている。

 けれども、その事を意に介さず、女子は肩にかかった髪を払って一歩前に歩み出た。


「えぇ、と、あの、どなたでしょうか……」


 首元についているブローチを見ると、黄色のブローチがついていて、一学年下なのだろう。

 ブローチの色で学年がわかるようになっていて、2年生の私たちは赤色で、3年生は青色、そして1年生は黄色になっている。

 この気の強い感じ、シーフィとの相性は最悪だろうから、シーフィの友人とは思えない。

 恐る恐る問いかけてみれば、女子はふん!と鼻を鳴らした。

 うん、シーフィとは絶対に相容れない。


「わたくしの名前を知らないなんて無知もいいところですわ。いいでしょう。教えて差し上げます」

「あ、僕はリカルド。リカルド・フィールド。こっちの子はアメリア・リアム」

「私はルティリアです。家名はなくなりましたので、ただのルティリアです」

「リカルド!わたくしの言葉を取らないでくださる!?そしてあなたも!わたくしが名乗るのを待ちなさい!」


 尊大な態度のアメリア様は綺麗に整った眉を吊り上げ、リカルド様の胸元を掴みぐわんぐわんと前後に振っている。

 背はリカルド様の方が高いおかげで首は締まっておらず、頭を揺らされながらも苦笑いを続けていた。

 

「ね?もう満足したでしょ?帰ろう?」

「いいえ!まだですわ!というかここからが本題だもの!」


 パッと胸元から手を離してアメリア様が再度私に向き合った。

 そしてまたずびしっと指を突きつける。このポーズにこだわりがあるのだろうか。

 リカルド様は相変わらずへにょりと眉を下げて困ったように笑っている。

 なんだか、リカルド様が可哀そうに見えてきた。


「もう一度いいますわよ!ルティリア、わたくしと、」

「あなたたち、何をしているの、もう授業が始まるわよ」


 私の後ろから声をかけられて、パッと振り向くと先生が立っていた。

 そもそも私は授業に間に合うようにと小走りをしていたくらいなのだ。


「すみません。えと、アメリア様、授業がありますので失礼します」


 私だって貴族の端くれで、最近はルイス様の家で教育も受けている。

 ある程度、爵位の高い家名を覚えているけれど、フィールド家とリアム家は聞き覚えがなかった。

 無理に離れても特別問題にはならないだろう。

 形だけの挨拶をして、アメリア様の横を通り抜ける。

 

「お待ちなさい!」

「お話は放課後にでもしなさい。授業の時間よ」

「アメリア、大人しく行くよ」


 引き留めようとするアメリア様と、諫める先生、宥めるリカルド様の会話が聞こえてきて、私はちらりと後ろを振り返った。


「--?」


 不本意、渋々だという空気を隠しもしないアメリア様と、そのアメリア様の隣に立つリカルド様が、一瞬だけ頭を下げた。

 アメリア様から私に向けられる敵意はなんとなくわかるのだけど、傍にいるリカルド様からは一切の敵意も感じないところか、申し訳ないという気持ちが伝わってくる。

 先ほど勝負といっていた気もするけれど、その割にはリカルド様はアメリア様に非協力的だ。

 

 教室に帰ったらルイス様とセディ様に相談してみようと思いながら教室へと向かう。

 セディ様は色んなこと、色んな事情をご存じなので、フィールド家とリアム家のことを知っていることだろう。


 少し話しただけでもアメリア様は気が強く、諦めが悪いことは一目瞭然だ。

 この後、何事もなく終わらないことは私にだってわかる。

 

 ルイス様に迷惑はかけたくないなぁと思うばかりだ。

ちょっとした連載での番外編になります。

ちまちまと更新していきたいと思います。


先日Skeb(https://skeb.jp/)にて多留谷様(Twitter:@siacco_)に依頼し、ルイスとルティリアを描いていただきました!

めっちゃ可愛くてめっちゃカッコよくて、本当にすごいのでぜひ見てください!!

https://twitter.com/ksnk001/status/1565956102189350912?s=20&t=AY0r46ppbapQRtijix3-Mw

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