表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
烏姫の側仕え  作者: mai
10/11

頭痛は安眠の敵9

藍麗は、嫌がらせの数々や、行き過ぎたもののせいで姫が何人か後遺症をのこしたこと、雪蝶姫が、その後遺症を気に病み自死してしまったことを話した。


狙ったのは、『自分より勝る』部分のある姫。


雪蝶の自死で、流石にまずいと思い、嫌がらせをパタリとやめ、隠蔽の方法を探している時に、『烏』である鈴花と出会ったそうだ。


菫花は「大臣は、藍麗を見捨てることに決めた」、と麒龍から伝えられた。


後宮の奥にある五つ目の館。

身分の高さでも、寵愛でもなく、『幽閉』のためにひっそりと立てられた蜃気楼のような館に、藍麗は閉じ込められた。

・・一方で、それは、安全が保証されるまで、『烏』から守るという意味もある。



「元気そうね、菫花。」

そして、藍麗がいなくなった館で。

名乗り出て館の片付けをしていた菫花の所に、唐突に鈴花は現れた。

「来ると思っていたわ。」

菫花は表情を変えない。

「あなたに会いに来たのよ。」

鈴花は涼しい顔をする。

『烏』として、藍麗に『代償』を払わせに来たのだと菫花には分かっている。

「どうするの?藍麗はここにはいないわよ。」

「そうねえ。・・もう、支払いは終わったからいいわ。」

「え?」

まさか、と目を見開く。幽閉のための館とはいえ、『烏』ならば入れてしまうのだろうか?

「藍麗はまだ生きているわよ。」

「じゃあ、なぜ・・。」

「藍麗も、自分の手を汚さなかった。私は汚したのに。」

藍麗が『代償』に選んだのは、菫花の命。

だが、依頼されたそれは、果たされなかった。

菫花は無傷で戻り、今も生きている。


「そのうちに分かるわ。それより。」

鈴花は続けた。

「あなたを調べたの。あなた・・『目』ね?」

「さあ?」

菫花ははぐらかす。

今はそんな情報はいらない。

「面白そうだから黙っておくわ。今は。その代わり私と組まない?」

菫花は曖昧に笑う。

「やめておくわ。私は、仕事をあまり受けたくないから。」

鈴花は、きっと精力的に仕事をしている『烏』だ。

危ない予感がする。

「そう。」

鈴花は、深追いしてこなかった。


「じゃあ、行くわ。あなたは、私の仕事を見届けてね。」

鈴花は興味を失ったように言う。

見届けるも何も、菫花はもう藍麗に関わるつもりはないのだが。

無言でいると、鈴花はフッと笑った。

「『烏』である以上、私たちは単なる少女ではいられないわよ。鈴蘭は毒性という二面性があるけど、菫は・・。」

菫は可憐な花を咲かせる優しい花の名前。

だが、猛毒のトリカブトにあてられるのもまた菫だ。


「あなたは、どちらかしらね。」


そんな言葉を残して鈴花は消える。


「・・まだ、私にも分からないわよ。」


菫花はそう、呟いた。




それから三日後。

藍麗は死んでしまった。

女官の一人が毒を盛ったのだ。

彼女もまた、その場で命を絶ったため真相は分からない。だが、雪蝶の代わりに燃えていった少女ととても仲の良かった女官だったそうだ。


鈴花は、しこみだけして去ったのだ。

どんな言葉かは分からないが、自分は手を汚さずに藍麗に『代償』を払わせた。


(きっと復讐は連鎖してしまう。後宮は、そういう連鎖で歪んでしまっている。)

あと季節が二つ過ぎ去るまでここで働くと思うと、気持ちは深く沈んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ