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サクラサク 4

 その翌日からは理沙ちゃんは毎日あたしに小林くんのことを話してくるようになった。

 中学での小林くんは軟式テニス部だったのだけど、応援に行くのに付いて来て、とか、さっき音楽室の前ですれ違った、とか、些細なことも全部報告してくれる。

 理沙ちゃんはいつも笑顔がキラキラしていた。そんな理沙ちゃんと一緒に今日も姿を見れたねってはしゃぐのはとても楽しかった。


 だけど文化祭が終わった翌日、理沙ちゃんの顔から笑顔が消えてしまった。


「あげる」


 理沙ちゃんが急に小林くんの写真を渡してきた。テニス部だった小林くんの引退試合を撮ったものだった。どうして?というような顔をしたあたしに、理沙ちゃんは寂しそうに笑った。

 文化祭の時に告白したけどフラれてしまったらしい。こんな可愛い理沙ちゃんをフルなんて何で?!っていう気持ちと、何故かホッとした気持ちがあった。


「まなちゃんも正樹君のこと、好きでしょ?」

「ま、まさか」


 そういうあたしの声は震えていた。


「隠さなくていいよ。まなちゃんは自分の気持ちに気付いていないみたいだったから、それに付け込んでずっと協力してもらってた。卑怯でしょ」


 やっぱり寂しそうに理沙ちゃんが笑う。


「卑怯じゃないよ。だってあたし小林くんのことどっちかと言うと家族愛だと思う」

「じゃあさ、私と正樹君が手を繋いで歩いていたらどう思う?」


 つきりと、心臓が悲鳴をあげた。

 どう思う、と聞かれたら、寂しい、と思う。

 それは理沙ちゃんと一緒の時間が減るから?

 それとも、小林くんに彼女が出来るから?


「…良かったね、おめでとうって」


 言葉に詰まったあたしの弱々しい声は全く説得力が無かった。駄目だと思いつつも視線が泳いでしまう。

 あたしの中で、乱暴でアレコレ口出ししてきて意地悪だと思っていたはずのまーくんが、理沙ちゃんと一緒に追い掛けて理沙ちゃんの話に頷いているうちに、実はあの時もトロいあたしを手助けしてくれていたのかもしれないと思えるようになっていた。

 何とも言えない表情をしたあたしに理沙ちゃんが、勝ち誇ったように恋愛感情に決まっていると言い切った。


「次はまなちゃんの番だからね」


 あたしは手の中の写真をもう一度見た。

 理沙ちゃんが責任感が強いと言っていた意志の強い眼差しでラケットを振り抜いた姿。

 その顔は確かに好きだと思った。

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