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サクラサク 3

 幼稚園を卒園してからは小林くんと縁遠くなっていたから、小学校の卒業アルバムから小林くんを探すのは初めてだった。

 理沙ちゃんと二人で「ここにも写っているよ」とか言い合いながら探していく。もちろん、各自一人ずつ正面を向いて撮っている写真は一番最初に見た。カメラマンの「笑って」の言葉にみんな緊張気味の笑顔で写っている中、小林くんは見事な無表情だった。その顔に二人で笑った。


 理沙ちゃんの語る小林くんは、責任感があって全体によく気を配っている、頼りになる人だった。

 虫かご一杯にバッタを捕まえて嫌がるあたしにかご持ちをさせていたまーくんを思い出して、一体、誰の話をしているんだろう、と思った。

 けれど、無愛想で言葉足らずでどちらかというと女子には怖れられている小林くんを好きになってくれた理沙ちゃんは天使だなぁ、とも思う。何だかお姉ちゃんにでもなった気分で、誤解されやすいけどこんな良いところもあるんだよって、幼稚園の卒園アルバムも引っ張り出してきて、調子に乗って話しまくった。

 卒園アルバムの最後のページには、丁寧に四角に折られたテッシュが挟まっていた。薄っすらと緑色が透けて見える。そっとテッシュを開いてみると、枯れて色の変わった四つ葉のクローバーが出てきた。


 そういえば、年長さんの頃に立花家と小林家で、河原でバーベキューをしたことがあった。

 バーベキューを美味しく食べ終えて、後片付けをする両親達とお手伝いをしているお姉ちゃん、持ってきたサッカーボールで遊びだしたまーくんとこーくん。あたしは、群生しているクローバーの中から四つ葉のクローバーを探すのに夢中だった。

 ようやく見付けた四つ葉のクローバーを摘み取ろうと手を伸ばした瞬間、「どけっ!」と乱暴にボールを追い掛けてきたまーくんに折角見つけたクローバーを踏み潰されてしまった。

 大きな声を上げたあたしにまーくんはびっくりしたようだ。両手で拾い上げたサッカーボールが手の中で揺れた。けれど、謝りもせず不機嫌になってしまったまーくんにあたしは声を出して泣いたのだ。

 翌日、草と土の匂いを纏ったまーくんが、四つ葉のクローバーを家まで持ってきてくれた。

 その時の四つ葉のクローバーをティッシュに丁寧に包んでアルバムに挟んだことで、自然と押し花になっていた。

 ふいに思い出した記憶に何故か涙が出てきた。理沙ちゃんにバレない様にこっそりと服の袖口で拭い取ると笑顔を作った。


 理沙ちゃんが帰ったあと、改めて、卒園アルバムを捲る。

 遠足でお弁当を食べている写真、園で育てていたさつまいもを収穫した時の写真、劇をしている写真、どれもまーくんの側には必ずあたしが写っていた。

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