愛すべきミス
人間のミスを
笑えなくなったなら
人間で生きる意味を
忘れたのと同じだ
誰かが失敗したことを
心の何処かで許している
その形こそが
優しいということ
花瓶のひび割れも
粉々になった白い皿も
取り付け忘れたネジの一本も
ひっくり返した箱も
止まれなかった車も
裏切られた人間も
それによって死んだ人間も
全ては同じミス
取り返しのつかないことは
取り返しがつかないで
終わってしまうこと
あの時に違うことが起こっていれば
空想をいくら作っても
過去の現実は取り戻せない
ゼロにしたいなら
現実を作っていくしかない
落とした財布も
書き間違えた書類も
出し忘れた必要なデータも
守れなかった約束の時間も
手順が違う二重チェックも
乗り遅れた電車も
大切にできなかった人間も
それによって死んだ人間も
全ては同じミス
考慮して
対処してきた人間は
入れ替わっている
個体は違うから
経験自体が違う
目の前にあることの感覚と
マニュアルになってきた人間の感覚は
違う
同じ失敗をすることは
必ず起こる
誰にとっても初めてなら
僕等にとっても初めてである
入れ忘れた緩衝材も
説明不足のプレゼンも
多く渡したお釣りも
忘れた教科書も
火事になった家も
取り違えられた子供も
助けられなかった人間も
それによって死んだ人間も
全ては同じミス
愛すべき人間ミスだ