2 キヨ 捕まる
あまり居心地は良くないところに押し込められたが、なんとかまだ生きている。
それもこれも、すべてはモンチッチのおかげだ。
黒づくめの仲間たちはすぐにでもわたしを対勇者兵器?に組み込みたかったようだけど、モンチッチの攻撃魔法が効かないという素晴らしい力の前に何もできず、結局は、わたしが自ら動かないと移動させることさえできなかったのだ。
「あの、出してもらったりすることってできますかね、、、?」
そして私はいま地下牢の前にいる牢番さんに交渉をしている。
なんでこんなことしているかというと、のどが渇いたからだ。
バックパックは取り上げられずにすんだ(私に触ろうとしたらモンチッチが激しく騒ぎ立てるから)が、手持ちの水がもうなくなっていたのだ。
「だまれ。あまりしゃべるな。」
厳しい目をした男は、私をにらみつけた。
「おまえが魔獣だらけのあんな森に落ちたせいで計画がどれだけ遅れたと思っている。最近は忌々しい勇者とメラーに家がわれらのことを激しく嗅ぎまわっている。一刻も早く対勇者魔術砲を完成させなければならんのだ。」
「でも、こんな世界に呼んだのも、あんな森に召喚したのも私のせいじゃないし、私は何にも悪くないと思うんですけど。」
言い返すと、めちゃくちゃにらまれる。怖い。
「捕まっている分際でえらく余裕だな。いくらインヴァイディッドモンキーを手懐けているとはいえ、お前のことを助けに来るやつなどこの世界にはいない。少し待ってその猿が眠りでもしたのを確認したら、お前は晴れて世界を変える兵器になれるのだ。名誉なことだろうが。」
どこが!どこらへんがいいことなの全然理解できないんですけど!
黒づくめは、心底わからないといった顔で、嫌悪感をばりばり出した私の顔をながめている。
「とにかく、おまえはここに置いておく。おとなしくしておけよ。」
そういって、黒づくめイチは、後から来た黒づくめニと交代して、わたしは置いて行かれた。
黒ずくめニは、黒づくめイチが地下からでるまでは、私に背を向けていたが、イチが出ていったとたんにこちらにくるりと振り向いた。
「ウキーーー!」
モンチッチが激しく威嚇すると、懐に手を入れてなにかとりだした。
桃のような果物で、甘い香りがここまでただよってくる。
思わず唾液が分泌されるのを感じていると、黒づくめ二はしゃがみこんで深くかぶっていたフードをとり顔を見せた。