キヨ、子猿と出会う。
視界が暗くなったから、後ろをふりむいた。
そこにいたのは、大きな口をあけた毛の生えたワニだった。
「ああーーーーーーー!!」
肩に子猿をのせたまま、思いっきり走った。狭い木々をすり抜けるのに、小柄な私の情が有利ではあるかもしれないが、絶対いずれ負ける。負けると喰われる。
「うわあーーーー!!」
足をもつれさせながら懸命に走っていると、
「キキッ」
背負っているバックパックにしがみついていた子猿が、バナナを後ろにポトッと落とした。
ワニはそれに気を取られて、匂いを嗅ぎだした。
そのすきに、できるだけ遠くに走り、何とか登れそうな気をみつけだして一気に登った。
離れてみたワニは、匂いを嗅いだだけでバナナを食べるわけでもなく、その場を去っていった。
「もう、何なのいったい。」
くわんのかーいと思ったが、考えてみればどうだっていいかもしれない。今生きていれば。
「ありがとう。君のおかげでたすかったよーー」
頭をなでると、気持ちよさそうに摺り寄せてきた。
「そういえば、君お母さんとかは?」
「キキッ、キー、キキーーッ、クワッ」
「うーーん、ごめんね、わかんないやー。行くとこないなら一緒に来ない??」
ひとりがとってもさみしいので、子猿と一緒にいたい。言葉わかんないけど、話し相手が欲しい。
「キキ」
いいよって言ってくれた気がする。
「君の名前は、今からモンチッチだ!!」
「キキキ!!キッ!」
ふざけんな!いわれた気がした。