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私と親友と異世界と  作者: 秋風 薫
私と異世界
2/5

2 キヨ 迷い込む


 絶望で体から力が抜けているのに、人間としての本能による生存が脅かされている恐怖で何とか気を失わずにいられた。


 とにもかくにも、あの怪獣たちから逃げなければ。

 どちらが勝っても私にいいことなんてひとつもない。これだけは言えてる。


 でも、逃げるにしたってどこに行けばいいのだろう。

 

 今、私が立っているのは小高い丘の頂上付近で、視界がちょうど開けたところである。そしてここから私があの怪獣決戦をこれだけ観覧できているのは、ここがあの怪獣たちにも丸見えであるということをあらわしていた。まずい。非常によろしくない。


 とにかくここをおりて、森の中に身を隠そう。そう考えて丘を早足で下って行ったら、イノシシの大群が木々を爆走している。そしてこの群れはどんどんこっちに近づいてきている。


 えーーーっこまるこまるこまる!


 結局、イノシシの進路からそれたと思ったら、でかいカエルの住処だったり、虫の大群に遭遇したり、カメレオンが馬っぽいなにかを捕食する現場を目撃してしまったりで、私のこころがやっと一息付けたのは、逃げ延びたところにあった木の上だった。


 太い幹に太い枝。高さもそこそこあり、さらに小川が近くにある。

 やっとの思いでそこにのぼり、枝にまたがって背を幹につけ、体の力をぬくと、だんだんねむくなってきた。


 ごはんもたべてない。いくら遭難1日目でこれから手持ちの食糧は節約しなければいけないとはいえ、何も食べないのはさすがに体に悪い。途中でリュックの中に入っていた水をのんだとはいえ、ちゃんとご飯も食べるべきだ、、、


 そんなことを考えながら、結局その日、わたしは寝こけてしまった。





 次の日、朝日が見えはじめる夜明け頃に目覚めたわたしは、猛烈に喉が渇いていた。


 幸い、この近くには小川がある。

 そしてにわか山ガールのわたしは、1人用の小鍋をもっている。

 ペットボトルの水はまだ飲みたくない。ただでさえすぐに死んでしまいそうなデンジャラスなジャングルで、物資の枯渇は避けたい。

 現代科学による食べ物の保存性はよく知っている。私のバックパックの中には、ペットボトルの水、紙パックの紅茶、ミルクココア、エネルギーゼリー、山に入る前にコンビニで買った大量のお菓子がある。

 いかにわたしが登山初心者かわかる計画性のなさである。

 そのほかにも、食べようと思っていた昼食用のパスタと乾燥野菜と缶詰のベーコンがある。

 しかし、缶切りを忘れてしまっていたので、一緒に山を登る予定だった親友に借りようと思っていた。

 つまり、わたしはもうこの肉を食せないのである。


 まじ絶望。



 そんなこんなでも、小枝を集めて、チャッカマンでつけた簡易カマドのおかげで、わたしは白湯にありつけた。


 この森は、怪獣もたくさんいるが、おそらく恵みの多い豊かな森だと思う。そうあってほしい。


 とりあえず、歩いてなにか果物を探そう。お腹が減ってきたし。出来ればみずみずしくて栄養がありそうで食べやすそうで甘いのと酸っぱいのを二種類ほど。



 夕方になった。


 未だわたしの収穫はゼロである。


 熟れた果物なんてどこにもない。やっとの思いで見つけたと思ったら、川幅10メートルくらいの、巨大ワニがいる大きな川の対岸だったり、もぎ取った果実のなかに芋虫が入っていたり、酷いものには、果樹だと思ったら虫が擬態していたものなどもあった。


 もういやだ。そこらにあるキノコでも食べてしまおうか。いやでも怖いし。

 でもお腹空いたし。

 

 時間はもう夕方。そろそろ今日の寝床を探したい。



 彷徨いあるいていたら、目の前にバナナが成っていた。


 果物の王様バナナ!

 辺りを見渡し、なにもいないのを確認する。今のところ怪獣共は見当たらない。

 素早く一房手をかけるが、結構固い。

 素手では無理なので、サバイバルナイフを取り出して、少しずつ切り取っていく。

 半分ほど切れたところで、一気に力をかけると、一房綺麗に取れた。

 

 その場で皮をむいて、かじりつくと、甘いバナナが染み渡る。

 なんだかすごくおいしい。今まで食べたバナナの中で一番おいしい。濃厚である。

 一本食べ終わって、手元にあるのはあと4本。

 木になっているのは数知れず。

 

 この4本は、今日全て食べれる。

 そう判断して、もう一本食べようとしたその時、

うしろから何かが肩に触れた。

 思わず振り向いたらそこには、わたしのバナナに手を伸ばした子猿がいた。


 日本猿みたいな芋っぽいかんじではなく、外国のなんか、よく絵とかになってるかわいい目の猿である。

 親猿はどこにいるのだろうか?

 キーキーと鳴いている子猿に、思わず絆されてバナナを1本渡してしまった。

 子猿はそのままかじりつこうとしたので、もう一度手に持って皮を剥いたものを渡してやると、両手で持って食べ始めた。


 かわいい。


 わたしも食べようと思って、持っていたバナナを一口たべたとき、ふと視線を感じて後ろを振り向いた。


 




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