キヨ 迷い込む
あれ?
なにかおかしい。
視界に広がるのは鬱蒼とした森。右手には高い山々が見える。そのふもとから私の視界はすべて森。
なんか全部森。
いや、やっぱりおかしい。だって私がさっきまであるいていたのはちゃんと整備された道だった。春のうららかな日に歩きやすい登山靴で地元の標高300メートルほどのお手軽な山にレジャーしに来ていただけなのだ。
でも今眼下に広がるのは、うちの地元がいかに田舎といえど、文明を全く感じない森。
白昼夢でみているのかな。山には不思議な力があるってむかしから言われてるし。
きっと後ろを向いたらまたさっきの山道につうじているはず。
体が震えそうになるのを気づかないふりして、後ろをふりむいてみた。
そこから目についたのは、大きな亀と、大きなヘビの戦いだった。
しってた。だってさっきからなんか大きなおとが聞こえてきてたもの。工事現場よりももっとどったんばったんした地鳴り音に、ヘビのシャー―――ッと、亀のキシャ――――ッという威嚇音。亀って鳴くんだ。
そして、その亀とヘビは、周囲の木々なんかよりずっと大きい。ゆうにその大きさは東京ドームを超える。軽く怪獣映画である。
あ、これやっちまったやつかもしれない。
わたし、知らない世界にまよいこんだっぽい。