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4: 初めての○○

続きます!

夢を見た。内容は鮮明に覚えていないが、森に迷い込んだ小さな少年が精霊と出会い一緒に魔物を倒しに行く。そして、成長した少年は勇者となって魔王を倒しに行く。そんな御伽噺の様な話だった。何故か少年に親近感が湧いた。

……魔勇者と勇者に繋がりなどある筈がないのに……。暗闇に囚われていた僕の意識は徐々に明るくなって行った。






「んぅ……ん」


太陽の光に照らされて、僕の朝が始まった。今日は旅を始めて二日目。だが、その二日は僕にとっては1週間にも1ヶ月にも感じ取れる程長く感じられる時間だった。


『あ、おはよー!』


布団から窓の方を見ると、既に起きていたアイビーが窓に立っていた。太陽が背景になりアイビーが神々しく見える。……闇の精霊なのに。


「おはよう、アイビー。昨日はグッスリだったね。よく眠れた?」

『えぇ、バッチリ快眠よ!今日も案内は任せて!』

「うん、今日もこれからもよろしくね」


アイビーが僕に親指を立ててグッドの仕草をする。それに微笑んだ後、僕は朝の支度を済ませて、宿から出た。予め、昨日から準備していたのですんなりと準備は進んだ。


「ところで、アイビー。今日はどこへ向かうんだい?」

『このまま村を出て、そのまま道なりに南に進んで行くわよ。夜は野宿になっちゃうけど、我慢してね』

「うん、大丈夫だよ。じゃあ、早速向かおうか」


荷物を背負って街の門を出た。そして、そのままアイビーと雑談をしながら南に歩き続けた。


「ところで、アイビー。少し気になることがあるんだけど」

『ん?どうしたの?』

「いや、僕って魔勇者だよね。魔勇者なのに魔物を倒しても大丈夫なの?」


ちょっと前から悩んでいたことだ。僕は人間だが魔勇者だ。仮にも魔王側に付いている。そんな僕が魔物をザクザクと倒しても良いのだろうか?


『あぁ、そのことね。別に気にしなくても大丈夫よ』

「そうなの?魔王に会った瞬間に「よくも、我が配下を〜!」とか言われたりしない?」

『なにそれ、ふふっ。大丈夫よ。魔物は人間と違って魔素の塊で出来てるから死ぬっていう概念がないの。実際、魔物同士の戦いではどちらかが魔素に戻るまで戦い続けたりするし、倒されても気にしないと思うわね』


アイビーは微笑みながらそう言った。いや、どちらかが死ぬまで戦い続けるって……その世界で僕生きていけるかな。


『そんなに暗い顔しないでよ。あなたが負けなければいいんだから。後、言ってなかったけど、あなたも…………待って静かに』


ニコニコしていたアイビーの顔から笑みが消えた。代わりに、その顔には獲物を見つける狼のような怖い顔があった。キョロキョロと周囲を見渡したアイビーは暫くすると、一点だけを見つめるようになる。その視線を追って僕もアイビーと同じ方向を向く。


『んー、ゴブリンナイトとゴブリンランサーがいるわね。どうする?試しに戦ってみる?』


アイビーにそう聞かれて僕は戸惑う。そもそも自分の実力が分からないので戦って勝てるのか分からない。負けて死ぬのも困る……。


『そんなに、不安にならなくても大丈夫よ!ゴブリンなら誰もが通る道なんだから!』


アイビーにそう言われてやる気になる。確かにそうだ。ゴブリンに勝てないのに魔勇者を名乗れるはずがないじゃないか。弱気になっていた僕の心にポッと火が灯る。


「うん、わかった。やってみる!」


そうと答えると、アイビーはガッツポーズをして僕に『頑張れ!』と言ってくれた。





腰の剣を抜き、こっそりとゴブリンに忍び寄る。相手は二体、まだこちらに気づいていない。ゴブリンランサーの背中から歩幅五歩分まで近付いたところで、僕は剣を構える。そして、一気に近付いてゴブリンの首へ剣を突き刺した。絶命したことを確認して剣を首から引っこ抜いた。


(よし、まず一匹!)


ゴブリンソルジャーが僕に気付いた。すぐにゴブリンソルジャーは僕から距離を取り、腰の剣を抜いて構えた。

お互いが相手の目を見て睨み合った。相手の隙を探りあっていた。暫く睨み合ったあと、痺れを切らしたゴブリンソルジャーが僕に向かって剣を向けて突進を仕掛けてきた。


「グルァァァァァァ!!」

「やぁっっ!」


突進を横にステップして避けた。そのままクルリと回転してその勢いを乗せた剣をゴブリンソルジャーの身体に向けて振った。ゴブリンソルジャーはその場で崩れ落ちてパタッと倒れた。

念の為に、首に剣を突き刺して完全に命を絶たせた。


「……やった?のかな……?」


僕の足元でスゥゥという音がした。足元を見ると、ゴブリン達の死体が黒い粉となって散って行っている所だった。


『おめでとう、ロキ!なかなかかっこよかったわよ〜!』


戦いが終わったことを見計らったアイビーが僕の元へ拍手をしながらやって来た。『かっこよかった』その言葉が僕の頭で何回もリピートされた。


「うん、ありがとう。アイビー!」


頭が興奮して上手く言葉が出てこなかった。

取り敢えず、この機会を作ってくれたアイビーに感謝の気持ちを僕は伝えた。



その後は、僕の興奮が落ち着くまでアイビーと雑談を続けた。そういえば、ゴブリンと戦う前ににアイビーが、何かを言おうとしていた気がするのだが……何を言おうとしていたんだろう?


『どう?そろそろ落ち着いてきたんじゃない?少し早めに出発しないといい所で休めなくなっちゃうわよ?』


アイビーに言われて我に返る。まぁ、大したことではないだろう。気にしなくてもいいよね。


「うん、じゃあ行こうか!」

『えぇ、行きましょう!……ってそっちは北よ?戻ってどうするのよ』


アイビーにクスクスと笑われた。

……どうやら、興奮は治まりきっていなかったらしい。


僕達は南に向けて再び歩を進めた。


今回は一日が経過してないパートなので日記はありません……。二話に一つか三話に一つ日記が出るペースでやっていこうと思います。

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