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夜更かししたフェス

 フェス太は、夜更かしをした。


 家族の誰もが寝静まった後にリビングの、2人掛けであるフカフカなソファにだらしなく座り、ひとり気楽を満悦していた。

 目の前には大きなテレビがある。夕飯からつけっ放しでチャンネルは替えていない。さっきまでは一日にあったニュースが流れていたのだが、深夜に差し込み、今では売れない芸人たちが集まって、くだらないトークばかりをしているようだった。

「結婚生活どうでっしゃろ? 奥さんとは、うまくいってまんのん?」

「昼は出かけてはりましたわー」

「どっか行きはりましたん?」

「つま(妻)ようじ(用事)!」

 空気が、なんちゃって☆テヘッ感に包まれている。わざとらしい笑いが画面から漏れていた。

「ふわぁ、っくしょ」

 フェス太は、欠伸、くしゃみをした。これに屁を加えると、かなり奇跡に近づく。

 これらを順番、または同時にする事など至難の業であるのだ。それを検証、チャレンジする探偵番組があったのを、フェス太は知っていた。

 唾が飛んで着ているベースボール柄のTシャツにかかった。フェス太は体勢を立て直し、前かがみになってテーブルのリモコンを取ろうとした。

 すると気が変わって、横のポテトチップスのり塩味の一枚を取って口に放り込んだ。袋を開けて、残っていたのである。飲み物は無い。


「ん?」


 CMが流れて、次の番組が始まろうとしていた。そして鉄琴でもアレンジしたような曲が流れ始めた。

 お坊ちゃまな頭をしてパーティグッズで売ってそうなメガネをかけた蝶ネクタイ男が、テレビに映っていた。

「はいはいー! 見てクダサイ、試してクダサイ、今話題のアレやコレ!」

 予算が無かったのか粗末な造りのセットの前で、男は手を広げて何かを紹介していた。

「まずご紹介するのは、このアーミー帽! 麺100パーセントです!」

「めん!」

 思わずフェス太は吠えた。チップスの欠片が口から吹き出た。

 男は、うどんの入った袋を片手に説明し出していた。どうやらこれはテレフォンショッピングだ、フェス太は今ここでやっと気がついていた。

「そしてこれ、アーミーショール! 幸せになります!」

 男は薄い紫色のショールを首に巻く。さっきの帽子を被ったままである。

 まさかこれも麺で? フェス太は、まじまじと男を見つめた。

「次に、UVカットは万全ですか? 防寒もできる、ロンググローブ! 奥様必見!」

 白のレースで上品そうな長い手袋を男は着けた。腕が太くて突っ張っている気がする。LLサイズは無いのか。フェス太は自分ならMサイズでもいいかと考えている。

「夜の冷えは大敵! 鋼鉄の腹巻ガー! とは言っても鉄じゃないからゴメンね!」

 じゃあ麺でできているのか? フェス太の疑問は男に通じない。男はこの様に、次々と商品を紹介していった……。


 数日後である。


 金曜の夜だったが、ドラマを見終えた母親が風呂に入って「早く寝なさいよフェスたん」と告げに再びリビングへ戻って来ると、ソファで仰向けになっていたフェス太は伸びをした。まるで猫のようだ。

「バカは風邪ひかないっていうけどね!」

 そう言うと母親は冷蔵庫から出したペットボトルを持って、立ち去った。恐らくは健康志向のアレが含まれている飲料だろうと察するが、フェス太は全くの無関心だった。

 うるさいババアが消えたとフェス太は伸びたまま安心し、このまま、まだ暫く寝ていようかと迷っていると、テレビでニュースが始まった。

 今日一日の出来事が順に報道されていく。

「次です。今日午後3時頃……」

 キャスターが、通り魔の事件を取り上げていた。

 小学校や中学校に近い通学路で、刃物を持った男が現れて、小学生の女の子を襲ったのだそうだ。テレビの画面はスタジオから、録画だが中継映像に切り替わり、小学生の女の子たちの足元が映った場面になった。

 女の子たちは報道マンの質問にこう答えていた。

「男が前から襲ってきたの?」

「うん、そう! もう助からない、って思っちゃった~」

「相手は刺さなかったの?」

「斬りかかってきたんだけど、斬れなかったみたいで……わかんない!」

 きゃあきゃあと騒いでいる。よっぽど怖かったはずだが、何故か楽しんでいるなこいつら、とフェス太は冷ややかに見つめていた。

 どうやら襲われた女の子は無傷で、悲鳴を聞きつけた近所の人が助けてくれたらしい。たまたま柔道家が数人通りかかったおかげもあって、犯人の男は数人のたくましい男子に取り押さえられたようだった。

 それは良かったな、と事件の結末を喜んだフェス太だったが、報道マンの言葉に耳を疑った。


「犯人の男が持っていた凶器は、なんと『麺』だったそうです!」


 思わず失禁しそうになった。


 斬れ、ではなくて「切れ」なかったのだな、あの「やさしい包丁」。フェス太の疑問は解かれた。


 ついでに欠伸とくしゃみとアレが連発した。


 めでたしめでたし。



《END》



 一昨晩の夢。エレベーターに閉じ込められた。

 エレベーターの箱の中ではなく、奥に穴があり、抜けて箱の側面にいた。

「助けて~!」って、叫んでいる夢……。


 昨晩は夢を見なかったけれども。

 うたた寝して夜起きたら、「夜更かしフェス」だ。と、ネタが浮かんだ。

 何に目覚めたのか自分。

 そして一気に書き上げた。約二時間。しかしネタのオチが違う。あら?


 読了ありがとうございました。1年4か月くらいとんでの単発投稿。

 

 裏で生きてます。ではでは。


 H28.4.14投稿


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