第4話 剣術姫マリオン
パーティメンバーが増えそうです(´・ω・`)
扉が開いた先には……やはりというか見知った顔だった。
「ルーーーーーーーーック! 見つけたぞ!」
整った容姿は黙っていればいいところのお嬢様で通用しただろう。そもそも伯爵家の令嬢でもある。
だが、キリッと吊り上がった眦は溢れんばかりの覇気を漂わせ、並みの男よりも高い身長は、しなやかさと相まってまるで一振りの剣のようだった。
実際、俺は剣術ではこいつに勝ったためしがない。
「久しぶりだな、マリオン」
「うむ。息災なようで何よりだ……ってちっがーーーーう!」
「ん? すぐ熱くなるのはお前の悪い癖だぞ。どうどうどう」
「ひっひっふー! って私は馬じゃない!」
うん、相変わらずノリのいいやつだ。思わず笑みがこぼれる。そしてなぜかシーマと聖女様とチコさんが顔の下半分を押さえて、くっと顔をそむけた。
「ルーク! 廃嫡とは何事があった!」
「んー? 騎士学校の成績不振が理由だな」
「なんだと! 総合点では2位以下を大きく突き放して断トツの主席だったじゃないか!?」
「ああ、けど剣術と魔術で負けたからな。親父殿はどうもそこが気に入らなかったらしい」
「なん、だと? 私のせいだというのか……」
思わず俺はマリオンの頭にチョップを入れた。
「見くびるな。俺が未熟だっただけのこと。お前のせいじゃない」
「はうう……」
マリオンが赤い顔をしてちょっと潤んだ目でこっちを見てくる。剣術姫と異名をとった女騎士とは思えない表情だった。
「……そういうところだぞ。まったく、私が陰でどんな苦労をしていたと……」
なんかぶつぶつ言っている。
「あああああ! そうだ! お前が廃嫡ってなったら、私たちの婚約はどうなるのだ!?」
「んー、破棄、だろうな。もしくは弟の誰かが後釜かね」
とはいっても血筋的には母が同じ弟は一人しかいない。まあ、あいつもそこそこ優秀だから何とかなるだろ。
「お前は悔しくないのか!」
「んなわけねーだろ」
そう、悔しくないわけじゃない。けど、今の俺には何も言う権利がない。それこそ、新たに貴族家を起こすことができるほどの武勲がいる。
しかし、平和なこのご時世。そんな機会なんかあるわけがない。
「いえ、ですから魔王が復活しつつありますと……」
聖女様がなんか言ってたがスルーだ。魔王なんかに挑んでたら命がいくつあっても足りない。
「ええ、らちがあかん! ルーク! 勝負しろ! 私が負けたら嫁にでもなんでもなってやる!」
「え? だが遠慮します」
「ふ・ざ・け・る・な!」
「いやふざけてなんかいないぞ。お前のような女に駆け出しの冒険者の俺が釣り合うわけがない」
「いや、そういう問題じゃなくてだな。その……あの……」
なんかもじもじしながらごにょごにょ言っている。
「うーわー、とりあえず爆ぜろ。そしてルークきゅんの大胸筋はわたしのものだ!」
「ルーク様の一番近くにいるのはあたしにゃ! もちろん、お手つきも……ニャ」
「えーっと、古来より物語では勇者様のそばには聖女がいるのです。そして二人は結ばれるのですわ……きゃー! きょわー!」
なんだこのカオス。俺はまだ嫁とかいらんと言っているだけなのに。
「ええい! 貴様らうるさいぞ! ルーク! 私に負けっぱなしで悔しくないのか!」
うん、その一言はなんかグサッときた。
「……騎士じゃない。冒険者としての立ち合いならいいぞ? あとこれは訓練だ。ってことでよろしく」
「むう、できるギルド受付嬢として何とかしましょう。後で大腿筋ね」
「手続きは頼むけどそれは断る」
「ひどい!」
「にゅふふふふー。ルーク様の膝の上はあたしの特等席にゃ!」
いい加減面倒になったので、俺はマリオンを伴ってギルドの建物に入る。するとなぜかカウンターの中から出迎えてくれるチコさん。
「らっしゃーせー。ギルド王都へようこそ―」
「もう少しやる気を出そうか」
「えー」
でろーんとデスクの上に突っ伏し、指さす方向には訓練場があった。
「ふむ……」
その番号は4番。ある意味俺の力が発揮できるフィールドだ。
「どこであろうとかまわん! それこそ言い訳をされても面倒だからな!」
「ふん、俺が言い訳をしたことがあったか?」
「サラダが食べられなくて泣きべそをかいていたな。べ、別にこの葉っぱが嫌いなわけじゃないんだ。ただおなかがすいてないだけだ! とか言ってた。これは言い訳じゃないのか?」
「なっ! それは幼年学校の話だろうが! 無効だ!」
「ふふん。お前の過去の悪行をばらされたくなかったら物理的に私の口をふさぐことだな!」
そう言い放ってなぜか目を閉じるマリオン。意味が分からん。
俺はとりあえず訓練場の扉を開いた。背後からなんか怒りのオーラを感じる。
「ふふ、ふふふふ。そうか、お前はそういうやつだったな。そういうところだぞ?」
「どんなところだよ。ま、いいや。いつでも始めていいんだぜ?」
その一言に、いきなりマリオンは背負っていた大剣を抜き打ちで斬り下ろしてきたのだった。
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