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第15話 遭遇

「報告! 魔の森より人型の魔物が10体! こちらに向かってきます!」

「俺が出る。門は閉ざせ。何があっても開けるな!」

 

 単独で出ようとしたら、マリオンが俺の隣を歩いている。反対側にはアナスタシアが笑みを浮かべていた。

 背後にはシーマがくっついている。そして、城門の上にはどっかりとクラウスが仁王立ちしていた。

 あんな目立つところにいたら狙撃されるんじゃないかなあと思っていたら、魔族の一人が弓を構え、放った。


 風切音を発して飛んだ矢は、クラウスの正面でカキンと音を立てて落ちた。

「ふん、狙いは良かったな。けどその程度の威力では僕の結界は貫けないぞ!」

 すると、リーダー格の魔族が一言呪文を唱え、指先から小さな魔力弾を放った。

 あれあかん奴や。


「クラウス! 伏せろ!」

「僕に指図……ひいいいいいい!?」

 その魔力弾はクラウスの結界にぶつかると、すさまじい衝撃波を残して虚空に消えた。

 おお、耐えきった。結界に角度をつけて上空にはじいたのか。なかなかやるな……って思ったら真後ろに倒れ込んで体の向きに追随した結界が運よく敵の魔力弾を受け流す角度になっただけだった。


「ククク、面白いな」

 中央にいたボスと思われる魔族がしゃべった。

「うお、しゃべった!?」

「ふん、何を言う。言葉は貴様らの専売特許ではあるまい。神の使徒よ」

「言葉が通じるならば都合がいい。貴公らの目的は?」

「神に虐げられた我らの目的を聞こうと? 無論、神、それにまつわる者の完全なる滅亡だ!」

「できるとでも? 我らがどこにどれだけの数がいるか貴公らはわかるまい?」

「ふん、そこの城を滅ぼして次は王都か?」

「それだけか?」

「何を言っている?」

「王都に至るまでどれだけの城があると思っている?」

「へ?」

「いや、へ? じゃなくて。あと人口がどれくらいいると思っている?」

「え……? 1万……くらい?」

「今そこの城にいる兵の数でもそれくらいはいるぞ?」

「なん、だと?」


 うん、なんかいろいろかみ合ってない。ので、聞いてみた。

「貴公らはいったい何年の眠りについていた?」

「……400年ほどか」

「それだけの間、我らがそのままでいると思ったのか?」

「ぐ、貴様ら下等な生物がどれだけ群れようと、我の力で一掃してくれる!」

「じゃあ、なんであの城は健在なんだ?」

「え……?」

「先日押し寄せてきた魔物の中にはそう、ちょうど貴公と同じほどの力を持った者がいた。そいつはどうなった?」

「そうだ。貴様ら! ガストルをどうした!」

「討った。一撃でな」

「なっ!?」

「戦ってみるか?」

「くっ、この魔将軍ボルクスを愚弄するか?」

 魔力が膨れ上がっていく。同時に周囲の魔族も魔力を開放し始めた。


「聖なる息吹よ、汝が使徒を守り給え!」

 俺が唱える聖句に魔族たちが俺を見る。そしてそこにアナスタシアが唱えた聖魔法が魔族たちを蹂躙した。

「聖なる御手よ、悪しき者を退けたまえ!」

 聖女の名前は伊達じゃない。魔族の半分がいきなり灰と化した。


「クーリンディア・アイグノール、猛き炎を司る者よ、汝が名において紅蓮なる矢を貸し与えよ!」

 聖魔法のレジストに魔力を割かれたことで、クラウスの呪文に対する抵抗が遅れた。これにより、また数人の魔族は灰塵と帰す。

 ボルクス自身は氷弾を放って矢を相殺していた。

 そしてマリオンが素早く側面から攻撃を加え、残りの魔族を切伏せる。


「くっ、卑怯な!」

「俺は勇者である前に騎士なんだ。俺の背後には守るべき民がいる。俺が敗れれば無辜の民が蹂躙される。勝てない騎士には存在意義がないのだ!」

「え? ちょ!? 騎士ってそんなもんなの? 過去に戦った騎士たちはその誇りを胸に正々堂々と挑んできたぞ!?」

「そして敗れ去ったのだろう?」

「無論だ」

「正々堂々で勝てるならそうする。だが、それで勝てないなら策を巡らし、不意を打ち、騙し、弱らせる。そして勝つ!」

「くっ、この言葉合戦も貴様の策のうちか!」

「ああ、ありがとうよ。おかげで魔力の溜めが終わった」


「ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 溜めていたのは魔力ではない、気だ。最後の最後まで相手を欺く。

 魔法防御を全力で引き上げたボルクスは、物理攻撃には真っ裸に近い状態になる。

「寸勁」

 俺の放った浸透頸はボルクスの心臓を砕いた。


「ふ、俺を倒しても魔王様は復活を果たしている。間もなくその眠りから目覚めるだろう」

「「なんだと!?」」

 ボルクスはニヤリと嗤うと、そのまま動かなくなった。

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