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私のこの先の予定について

「このカルヴァ大神官補佐に後見してもらうのは、君にスキルがあるからだ」


「私が神殿に所属する者である方がいい……からですか?」


 神殿の手を借りるとしたら、それしかない。神殿が私を後見していれば、父が私のスキルについて知ったとしても、利用することは難しい。

 ラース様は「そうだよ」と肯定した。


「かぎつけられた時、神殿の援護があるとないとでは、かなり差がある。それに王家に利用されたくはないだろう? 彼らはたぶん、君を使いつぶすつもりで利用する」


「私は王家まで、警戒せねばならないのですか……」


 父のことは警戒していたが、他のことまでは気が回っていなかった。王家に関しては、私を牢に入れないでほしいとばかり考えていたから。

 たしかにこんな能力があると知られたら……。


(利用されるとしたら、王族の警護とか? どこへでもついて歩くのは辛そう)


 なにせただついて行くだけでは済まない。エルヴァスティ伯爵家の娘が王家に取り入ったとか、悪口まで沢山聞かされることになるから。

 下手をすると私への報復として、怪我をさせようとしたあげく……うっかり王族のどなたかが被害を被ったら、やっぱり私、牢屋行きでは? 嫌すぎる。


「それにしても、なぜスキル持ちを使いつぶすのですか?」


 利用するだけなら、まだ理解できるのだけど。


「エルヴァスティ伯爵が、王家とも仲が悪いからだよ。以前、王家の負債がふくらんだ際に、エルヴァスティ伯爵がさんざんな態度で利子をつけたあげくに貸したらしくてね。その時に伯爵が関わった黒い話もいくつか、潰させたそうなんだ。おかげで王家は伯爵を疎ましく思っている」


 何しているの、うちの父は……。

 多少なりと融通を利かせるのはまぁあることとしても、そこまで嫌われるような態度だったのだろうし、自分の悪行まで黙認させるなど、要求が過多では。


「かの伯爵の評判が悪いのは、王家が噂を立てるようけしかけている部分もある」


 アシェル様の言葉に、私は納得した。さもありなん。

 そこでカルヴァ大神官補佐――予想以上に高位の神官だった――が、口をはさむ。


「ところでこの令嬢のスキルの内容は確認済みですか? あまりに微妙な内容のスキルだと、私としてもやりようがないので、先に詳細を知らせてもらいたいのですが」


 そう言うのだから、カルヴァ大神官補佐は『スキルを持っているらしい』ぐらいの話しか聞いていないようだ。ラースは答える。


「詳細はまだです。彼女が自分の望んだ人を近づけない能力を持っていることは、間違いないのですが。……ね?」


 視線を向けられる。ラース様とカルヴァ大神官補佐の両方だ。

 私はぼそぼそとスキルについて答えた。


「あの、私が指定した人の声を遮断したり、相手の接近を遮断する能力です。あと、物も……」


「物も遮断できると?」


 カルヴァ様の疑問に、私はうなずく。


「……だからか」


 アシェル様がぽつりとつぶやいた。


「学院で、君の側でバケツの水が撒かれた時、何一つ被害を受けていないようだった。あれは水を避けたんだな?」


「そのようです。とっさに……濡れたくないと願ったら、そうなりました」


「思うだけで、か」


 カルヴァ様がなにごとか考え込む。


「場合によっては、大神官様の行幸時に使えるか……」


 仕事に利用できるかどうかを考えていたようだ。補佐としては間違っていないし、大神官様を守ろうとしているのでしょうけど、できれば口に出してほしくなかったわね。


「そこまでのスキルだとは思わなかった。いわば遮断ブロックスキルなのだね」


「はい」


 ラース様に私はうなずく。


「いかがですか、カルヴァ大神官補佐殿」


「他でもない公爵閣下の頼みですから、元から受けるつもりではありましたが、これは予想以上です。ただ火を出したりするよりも、使いようがあるでしょう。それに本人の状況的にも、対外的には秘匿しておくことに同意します」


 カルヴァ様の返答に、ラース様もアシェル様も、ほっとしたようだ。

 にしても、大神官補佐様がこんなことを言うのだから、ラース様は神殿にも一定の発言力がある方らしい。


(そんな方とお知り合いになれてよかった……)


 しかもにっちもさっちもいかない状況で、助けてくれるような素晴らしい人だ。日々感謝して生きて行かなくては。


「父親は、神殿の私が後見することを承知していないと聞きましたが?」


「大丈夫です。本人に聞かせるのは忍びないのですが……。呪われた娘など家においていても仕方ない、好きにしていいと言うので。僕も念のため、一筆書いてもらってきましたよ。なのに後見をあなたに頼みたいのは、年齢差が近すぎる養女というのもおかしいなと思いまして」


 ラース様は「預かるだけならいいんですがね」と続ける。


「誰を後見にしても問題ないのなら、彼女が令嬢としての地位を確保したまま、証拠の確保ができるようにしたいと思っています」


「なるほど」


 カルヴァ様が納得したらしい。

 父の件についても、ある程度の説明は受けているのだろう。


「では聞いたお話の通り、この娘を後見しましょう。そして兄伯爵の養女とする手続きを進めるということで。その上で元の家から何かがあれば、公爵閣下にお任せしますぞ」


(私、本気で今の家から離れられるの?)


 それはすごく嬉しい。

 どんなにこのカルヴァ大神官補佐から冷たくあしらわれても、あの家の人間ではなくなれるのなら、がんばれそうだ。

 思わず笑みをカルヴァ大神官補佐に向けたら、彼は一瞬困った表情になって視線をそらした。


(……私に悪意があるわけではないようだし、きっと大丈夫)


 しかも暮らすのは、ラース様の家だ。

 神殿を避けようとしてたから、神官が出てきてどうしようかと思ったけど、これはかなり上場な結果ではないだろうか。


(ここまでしていただいて、本当に私、お菓子を食べるだけでいいのかしら?)


 疑問に思った私は、その日からラース様の『協力』の内容を知ることになる。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] この40話までしか読んでないですが、この時点までにラースがスキルの詳細を把握しようとしていない点、それなのに大神官補佐に後見人の依頼をしている点、そして40話中で大神官補佐がスキルの実…
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