第63話 有名人
無言で待っていると時間の経過というものはとてもわかりづらく、現在あれからどれくらい時間が過ぎたのだろうか。体感では30分以上立った気がするんだが実際は5分とか10分なのかもしれない。
「そろそろいいかな…」
その間ずっとタッチパネルの方向を見たままだったファーナさんの口が開く。何やら確認というヤツが済んだみたいだ。
「じゃあ説明お願いしていい?」
「もちろん。えーとあの2人なんだけど、私の世界の人たちなのね。それで…」
「あ、じゃあやっぱりあの2人はこの間言ってた貴族の…!?」
「ううんっそれはわからないんだけど、かなり有名な人たちなの」
どうやら俺の予想は外れていたらしい。首を横に振りファーナさんが否定している。まあ、わからないといっているから確実ではなさそうだが、今のところ貴族のほうは心配しなくてもいいみたいだな。
「で…あの2人なんだけど、まずは我がまま自己中なミネルヴァ、彼女にかかわるとろくな目に合わないと言われているわ。それと破壊神リノル。回復をするのがメインのはずなのに杖を振り回し壊しまくる。そう言われている…」
「…たった2回会っただけでその片鱗が見えるとかやばいな」
「そんな2人だから誰もパーティに入れてくれず、ずっと2人で組んでるという話よ」
「うへぇ…つまり強いから放置でいいってことだな?」
あまりかかわりたくないという理由はわかった。だが、2階層へ来た理由がわからない。普通に狩りをするなら3階層へ向かったほうがいい。それなのにあえてここへきたのは一体何故か?
「それはわかったんだけど、それよりなぜこの階層へ?」
「あーうん。多分あの2人は3階層へ行くと思うの。あのまま私達も3階層へ向かったらなし崩しに一緒に行動することになりそうでしょう?だから一旦2階層に来て、時間を空けてから3階層に向かおうかと思ってね」
なるほどな…そんな人たちだとするとファーナさんが関わりたくないと思っても仕方がないだろう。俺も健太も納得できたところで俺達は3階層へ移動することになった。
前回と同じくファーナさんは浮き輪を抱えているのでまた俺がバランスを崩さないようにしながら水上へと連れて行く。水面のほうへ視線を向けると思わず噴出しそうになってしまった。さっき分かれた2人がまた水面に浮かんでいたのだった。
息が漏れそうになった口を慌てて押さえ、まずファーナさんを地上へ運ぶ。その後俺と健太は再びミネとリノを水から引き上げ、治癒をかけてからファーナさんを連れて昨日とは反対側の右へと進み始めた。右のほうはすぐ下へと道が折れておりその先に生えていた木の陰に隠れ俺達は双子の意識が戻るのを待った。




