第5話 ダンジョンを見つけた
目の前の壁が振動しながら開いていく。遠くに外の明かりが見えていて少しだけ眩しく感じた。
「で、出れた…」
思わず口から言葉がこぼれた。はっとして今出てきた先を眺める。このままだともしかしたらあいつらが出てきたりとかしないだろうか。
「なあ、よっすー俺火傷薬塗ってくるけどどうする?」
「ちょっと怖いけどここが閉じるの確認してから出るわ」
「わかったんじゃなー」
健太が火傷の処置のために階段を上がって外へと出て行った。1人残り開いている入り口をただひたすらに眺める。もし出てきたら…どうしようか。
そんな心配は必要なく1分くらいで勝手に閉じた。中に入ったときも閉まるのが早かったことを思い出してちょっとバカらしくなってしまったのは言うまでもない。
閉じたのを確認したので俺は階段を上がりプレハブに戻った。
「あっつう…中涼しかったんだな」
そんなことにすら気がつかないほど俺は動揺していたようだ。ほっとしてお尻が汚れるのも気にせずその場に座り込む。
「なにしてんだ?」
「…いやその言葉そのまま返していいか?」
戻ってきた健太の見た目が酷かった。リュックを背負い、何故か左手には鍋の蓋…足元は長靴を履きこの暑いのに長袖を着て頭にはヘルメットを被っている。しかもライトがついているやつ。
「なにって…探検?だってそこにダンジョンがあるんだぜぇ~男なら冒険するしかないだろう!?」
「ダンジョン…?」
「どう見てもダンジョン以外ありえねぇだろうっ普通じゃない地下へと続く通路、洞窟みたいなところにスライムだぜ?」
頭痛くなってきた…そうだこれは暑さのせいだ。外でうるさいほど蝉の鳴き声が聞こえている。
「どう、片付けはかどって…何遊んでるの??やらないなら表にだしたものしまいなさい!!」
頭を抱えていたら母さんが来て怒られた。
「あー暑くて水分とったら再開するよ…」
「ほんとに?まあ片付けなければ使えないんだからしっかりね」
それだけ言うと母さんは家に戻っていった。
「なあダンジョンは?」
「……片付け終わったら考えるわ」
「お、じゃあ手伝うよ。そしたら早くダンジョンいけるしな!」
健太はわかっているんだろうか。俺は一言もダンジョンに行くなんて言っていないことに。そもそもダンジョンとか言われても現実味がなさすぎだろう…?
水分を補給した後は言ったとおりプレハブの片付けと掃除にせいをだした。主に健太が。俺もまあ多少はやったけどな?
掃除が終わるころには空が赤く染まり始めどう考えても夕食の時間になってしまうため、健太は泣く泣く自宅へと帰っていった。
「夏休みはダンジョンでエンジョイだぜーひゃっほう!!」
帰り間際頭の痛いことを叫んでいたが俺はその言葉を無視した。