表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/19

17.騎士の誓い

「あ、私も護身術とか習おうかしら!」


「コホン……護身術、ですか。そうですね、身を護る(すべ)を持つのは良いことだと思います」


 よし、笑いのツボからは逃れられたみたいね。


「そうよね~、またいつ痴漢に遭うか分かったもんじゃないし……」


「ち、痴漢?! シェリーさん、痴漢に遭ったんですか?!」


「ええ、つい一週間ぐらい前に学院でね」


 加害者も今さっきそこにいたわ。


「そ、そんな……シェリーさんが痴漢に?!」


 セーリオ君は大きな衝撃を受けているようだった。

 学院という学び舎でそんな蛮行が行われていたなんて、真面目なセーリオ君にとっては相当ショックよね……。


「でも大丈夫よ! 私の機転で事なきを得たから!」


「そうでしたか……いや、でも……!」


 ホッとしたり義憤(ぎふん)に燃えたり、とっても忙しそうね。

 相手は距離感がズレまくった俺様王子様だし、制裁も加えたし、私としてはもうそんなに怒ってないのだけど……。


 私がそんなことを考えていると、セーリオ君は何かを決意したように真剣な面持ちになった。


「シェリーさん、僕を……貴女の騎士にしてください!」


「騎士……?」


「その、僕はまだ騎士見習いにもなっていない学生の身ですが……」


 大仰(おおぎょう)なことを言っていることを自覚しているのか、セーリオ君は少し照れ気味だ。


「騎士になれると言ってくれた貴女を……僕を信じてくれた貴女を、守りたいんです」


「セーリオ君……」


 可憐な美少女顔なのに、なんて男らしいセリフ……!

 その想い……受け止めるわッ!


「分かったわ、セーリオ君」


「シェ、シェリーさん……!」


 セーリオ君は(こぼ)れんばかりの大きな瞳をうるませ、キラキラと輝かせた。


「練習台の役目、立派に努めてみせるわ!」


「……えっ?」


「騎士になるために人を守る練習までしようだなんて、素晴らしいと思うわ。私が練習台になることでセーリオ君が本物の騎士に近づけるのなら、協力は惜しまないわよ。なにせ、騎士になれるって言ったのは私だものね!」


「あ、あの……」


「ん? 何かしら」


 あら、セーリオ君が何か言いたげな顔をしていると思ったら……いつの間にかラフィが来てるじゃない。

 空気に徹するのはやめたのかしら?


 ラフィは私ではなく、セーリオ君に近付く。

 そして何かを耳打ちしていたかと思ったら、ススス……とまた離れていった。


 何? 何を言ったの?


「コホン……シェリーさん!」


「えっ、はい!」


 セーリオ君はおもむろに私の手を取った。

 その顔は真剣で、(ひざまず)く姿はさながら本物の騎士のようだ。


「今はまだ、本物じゃない。でも僕は……いつか本物になってみせます。それまで、貴女の仮初(かりそめ)の騎士になることを許して頂けますか?」


「セーリオ君……!」


 ああ、やっぱり立派ねぇ~!

 まだ若いのに、そんなに真剣に騎士になることを考えてるのね!


「ええ、もちろん許すわ! あなたの騎士道を応援します!」


「……はい」


 セーリオ君は嬉しさと寂しさの入り交じる、儚くも可憐な笑顔を浮かべた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ