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発病

 どうしよう、どうしよう、どうしよう!

 姉さまが血を吐いて倒れた。

 発病してしまったんだ!



 近ごろ姉さまの体調はおもわしくなかった。

 急に冷え込んだせいもあるのかもしれない。

 よく咳をして、怠そうにしていた。


 私は白い光にお願いして姉さまを回復していたけど、いつも側に居られるわけじゃないし、むしろ邪魔しないようにと遠ざけられることが多かった。

 私はまだ赤ん坊だし、仕方ないのだろうけど……。


 姉さまはだんだん寝込むようになって、高熱にうなされることもよくあった。


 心配だけど、ベビーベッドは一人ではおりられない。

 姉さまに会いたい、と兄さまに必死で訴えて、何度か見舞いには行けた。


 でも、光にお願いしても姉さまはなかなか良くならなくて……。


 そして、今日。


 姉さまはひどい咳をして血を吐き、昏倒してしまった。


「アリサ! ああ、あなた、アリサが!」

「おちつくんだ、エマ! すぐにハサム神父を呼んでくる!」


 父さまは姉さまをベットに寝かせると、家を出ていった。

 母さまは姉さまの吐いた血を拭い、服を着替えさせる。


 その様子を、私は蒼白になった兄さまに抱きしめられながら見守ることしか出来ずにいた。


「ベル、どうしよう。アリサが……」


 兄さまは震えていた。

 何を言ったらいいのかわからずに、私は兄さまに抱きつく。

 どうしよう、どうしたらいい?


 そうだ、鑑定!


 ハッと気がついて、急いで姉さまを鑑定する。


【アリサ・ロシュフォード 人族 女】

【HP10/15 MP0】

【状態:病(魔欠病)】

【スキル:無し】

【加護:無し】


 魔欠病?

 ステータスの欄が増えているけど、それは今はいい。

 それより、魔欠病ってどんな病気なんだろう。


 考えていると、玄関のドアが乱暴に開いて父さまと神父様が入ってきた。


「エマ! アリサは!?」

「意識が戻らないの! 神父様、どうかアリサを……!」

「今すぐ診ましょう」


 神父様はベットの側にしゃがみ込み、アリサ姉さまを診察し始めた。

 

「風邪では無いようですね。肺の病なのだろうか?」


 違うよ! 魔欠病だよ!


「あー! まーきぇつぼー!」

「ベル?」

「どうしたの、ベル」

「神父様の邪魔になる。リオン、ベルを連れていきなさい」

「あうー! まーきぇつぼー! まーきぇつぼーあのー!」


 私は必死になって叫んだ。病気を間違って初期治療が遅れたら、手遅れになるかもしれない!


「まーきぇつぼー……、魔欠病?」


 神父様が目を見開いた。

 やった! 気付いてくれた!


「ハサム神父?」

「ロイド様、もしかしたらですが、病がわかったかもしれません」

「なんですと!?」

「神父様、アリサは何の病気なんです!?」


 父さまと母さまが神父様に詰め寄る。

 神父様は躊躇いがちに口を開いた。


「魔欠病、かもしれません」

「魔欠病? それはいったい……」

「……奇病です。病になる者が少ないため、まだ研究が進んでおらず、病の原因さえはっきりしていません。魔力を持たない者に発生することが多いので、魔欠病と呼ばれていますが……」


 奇病。

 嫌な予感に胸がどくどくする。


「魔欠病……それで、治療法は?」

「治療法は……」


 神父様は苦渋の表情を浮かべた。


「高位の神官ならあるいは……。私は病気の進行を抑えることはできますが、……申し訳ありません」

「高位の神官様。その方をお呼びしたら助かるのですか!?」

「ええ、おそらくは。しかし……高位の神官は、王都にしかいません。ここへ来てもらうとしても、数ヶ月はかかるかと」

「ーー数ヶ月……では、ではアリサは」

「……残念ですが」

「ーーそんな」


 神父様の言葉に、母さまが床に崩れ落ちる。

 私は呆然と神父様を見つめた。


 高位の神官様じゃないと治せないのに、来てもらうのに数ヶ月もかかる。

 

 それって。

 じゃあ、姉さまは。


 真っ暗になる視界の中、苦しそうにうなされる姉さまだけが浮かび上がっていた。

 


 



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