11.仲直りして欲しいの!
アルカです。事件です。大変です。パパとママの様子がおかしいんです。
昨日の夜、いつものように帰ってきたパパは、なんだか少し怒っているみたいだった。アルカと話してくれる時は普通なんだけど、そうじゃない時は真剣な表情で何かを考え込んでいたの。
その時はアルカも変だなーくらいにしか思わなかったけど、ママが夜ご飯を持ってやってきたときにわかった。
だって、二人とも口もきかないし、目も合わせないんだもん。食事中はずっとアルカに話しかけてきて……一生懸命笑顔で答えたら二人は笑っていたけど、本当に笑っているようには見えなかった。
いつもならアルカが「何かあったの?」って聞くんだけど、今回は聞かなかったよ。……だって二人とも少し怖いんだもん。
今朝もパパはママが来る前に「確認したいことがあるから」って先にお仕事に行っちゃった。こんなこと初めて。どんなことがあってもママと一緒に出かけてたのに……。
いつもの時間にママがやってきて、その事を伝えると「そうですか……」って一言だけ。でも、その顔はなんだかとっても寂しそうだった。
ママと二人で朝ご飯。ママはいつも通りにアルカに接してきてくれたけど、アルカの目から見ても無理しているのが見え見えだったの。そのまま食べ終えてお片づけをしたらママは少しだけ迷ってたみたいだけど、お仕事に行ったんだ。
本当にどうしちゃったんだろう……アルカは二人が仲良くなきゃ嫌だよぅ……。
「で、どうしたらいいかわらかないから、あたしのところに来たってわけだ」
マキちゃんが箒に顎を乗せながらアルカを見ている。やっぱりこういう時は少し年上のお友達に聞くのが一番!
「うーん……詳しく聞いてないからわからないけど、いつも通り痴話喧嘩なんじゃないの?」
「ちわげんか?……それはわからないけど、いつも通りじゃなかった、と思う……多分……」
「へー……アルカがそう感じた理由はある?」
理由かぁ……なんとなくそう感じたっていうのがそうなんだけど…あっ、でも理由があるとすればあれかな?
「パパとママが喧嘩することは時々あるけど、いつもはママが怒っていて、パパがビクビクしながらママの顔色を見ているんだ」
「……指揮官様ぇ……まぁ、でもセリス様は怒らせたら本当に怖いしなぁ……」
なんかマキちゃんが難しい顔でぶつぶつ言ってる。まな板がどうとか、アルカは子供だからよくわからないよ。
「じゃあ、今回指揮官様はビクビクしてなかったんだ?」
「うん。多分パパも怒っていたんだと思う……二人ともそれを隠そうとしてたから、はっきりとはわからないけど……」
アルカはそう言いながら昨日の事を思い出した。お互いにお互いをいないように振る舞う食事。なんだか悲しくなってきた。
「家での事が原因ならアルカが気づくから、そうなって来ると仕事関係だねぇ……ねぇ、アルカ。今指揮官様とセリス様はどこに視察に行っているの?」
「えーっと……確かフローラルツリーっていう精霊さんたちがたくさんいるところ!」
「フローラルツリーってことは……あっ……」
マキちゃんが何かに気がついたみたい!流石マキちゃん!でも、なんでそんなに困った顔をしているの?
「二人がよそよそしい原因わかった?」
「あー……なんとなくは。でも、そうなってくると解決は難しそうだねぇ……」
「マキちゃんその原因を教えて!」
アルカはマキの目をしっかり見つめる。原因がわかれば二人を仲直りさせるとこができるかもしれない!
「あくまで仮定の話なんだけど…………多分セリス様のヤキモチが原因かと」
「やきもち?」
聞いたことのない言葉。アルカは首を傾げる。
「うーん……例えばアルカぐらいの女の子が突然現れて、指揮官様と仲良くなったらどう思う?」
「それは……なんか…………」
なんかそれは寂しい。パパがアルカ以外の女の子と仲良くしているのを想像したら、なんだか胸がむずむずしてくる。
「しかも、アルカの代わりにその子を娘にするとか言いだしたら?」
「それは絶対嫌っ!」
アルカは大きな目に涙を浮かべながらマキに詰め寄った。その勢いにマキは若干たじろいでいる。
「パパはアルカのパパなの!パパがパパじゃなくなったらアルカはっ!!」
「わかった!わかったから泣かないで!アルカを泣かせたって知られたらあたし、あの二人に殺されちゃうよ!」
マキが必死にアルカを宥める。アルカは少し落ち着いたのかしょんぼりと肩を落とし、顔をうつむかせた。
「今のは例え話だから。でも、今アルカが感じたような気持ちをセリス様も感じているんじゃないかなってわけよ」
そうなんだ……ママはこんな苦しい気持ちになってたんだ。パパはそのことに気がついてないのかなぁ……?
「なんたってフローラルツリーの長はフレデリカ様だからね」
「フレデリカ様?」
「とっても美しい女性の方よ。そして、セリス様とあんまり仲が良くないことで有名」
ママと仲良くない人……その人がパパを奪ろうとしているのか。なーんだ、だったら簡単な話だね!
「じゃあそのフレデリカ様をやっつけちゃえば、二人の仲は元どおりだね!」
「発想が怖いよっ!魔王の考えだよっ!将来有望過ぎるよこの子!!」
せっかくいい案だと思ったのにマキちゃんに止められちゃいました。残念。でもマキちゃんはすぐに元どおりになるって言ってくれたよ!
「お互い素直じゃないからねぇ……でも、あの二人なら大丈夫っしょ!むしろあの二人が離れるところが想像つかない」
「そうかな……?」
「そうよ!マキお姉ちゃんの事を信じなさい!」
マキちゃんが自信満々に自分の胸をドンと叩いた。それを見たらなんだか本当に大丈夫な気がしてきた!
「ありがとうマキちゃん!」
「いえいえ、お二人によろしくね〜」
アルカはマキちゃんにバイバイして小屋に戻ろうとしたけど、その時にパパに言われた事を思い出したんだ。今も相談に乗ってもらったし、ちゃんと恩返ししないとね!
「マキちゃん!そういえばパパがマキちゃんにお礼がしたいって言ってたよ!」
「お礼!?お礼大歓迎!!指揮官様は何をくれるんだろう?」
マキちゃんがクリクリの目をキラキラと輝かせてる。やっぱりマキちゃんは可愛いなぁ。でも、喜んでもらえてアルカも嬉しい!早速お礼の内容を伝えてあげなきゃ!
「いつもパパとアルカがやっている朝の稽古に是非参加して欲しいんだって!!」
「…………えっ?」
マキちゃんが笑顔のまま固まってしまいました。そんなに嬉しかったのかな?本当に良かった!
「そ、それってどういう……?」
「うーんとね、アルカが前にマキちゃんが言ってたパパのあだ名を教えてあげたら、パパ笑っててね!」
「ちょ、ちょっと待って!あだ名ってなに!?」
「えーっと、どんかんむしんけいぼくねんじん」
「あっ…………」
それを聞いたマキは全てを悟った。
「それでパパは朝の稽古でお礼をしたいって」
「お礼ってそっちかい!!」
なにやらマキちゃんが怖い顔してる。そしてとても慌てているよ。どうしたんだろう。あっ、もう一つ伝えなきゃいけない事があるんだった。
「アルカ……とっても嬉しいお誘いなんだけど、アルカと指揮官様の時間を邪魔するのは……」
「そういえばパパが『さんかしないときゅうよさていにはんえいする』って言ってたよ。どういう意味なんだろう?」
「給与査定に反映……」
マキはがっくりと肩を落とし、逃れられない己の人生を呪った。
「ありがたく参加させていただきます……」
「本当に!?マキちゃんが来てくれるのはアルカも嬉しい!」
パパと二人っきりもいいけどたまにはお友達とも稽古をしてみたい!
アルカは、なぜか顔が梅干しさんみたいにシワシワになったマキちゃんに手を振りながらおうちに帰りました。





