第7話:大魔王に育てられています? 5
心底今回しでかした事を悔やみ涙を流して、何故か歩いて行くアレスの方を見て謝罪した。
すると、セリカとレイカに抱き付かれていたアレスが、アデルに向けて念話で。
『僕に謝っても意味無いよ、お兄さん。僕に謝るより今まで失敗した事を繰り返さないようにしないと。亡くなった人達が可哀想だよ』
その念話をアデルは聞き、驚いたが首を横に振りアレスに念話を返した。
『いや、俺は酷い事をやり過ぎた。恐らく死罪になり二度と復活出来ないと思う。それに最後に君に会えた事に感謝する。後、もしよろしければ、名を教えて貰えないだろうか』
『うん。僕の名前は、アレスだよ。それに・・・いや、後のお楽しみだよ』
『???。でも最後に君にアレスに止めてもらえて、良かったありがとう。未来の大魔王』
そして、先程までとは、打って変わりアデルは、大人しくなり抵抗する事無く自分から玉座のある壇上に向け歩いて行き。
大魔王の参謀にして親衛隊ヴァルキリーのセシリーとマリーベル、そして魔王達がいる方を見てからアデルは、頭を下げて今までの行いを正直に話した。
「此度の件は、すべて私個人による所業で御座います。そして先程は御見苦しい姿を見せてしまい真に申し訳御座いません。此度の罰に関しては謹んで受けたく思います。故に今まで私が酷い仕打ちした民達に救いの手を差し伸べて頂きたい。お願いいたします」
その光景を見ていたすべての者達は、今までの彼の行動と態度が一変して変わった事に驚き。
そして、そう言う変化をもたらしたアレスの方を見て、この子は何者なんだと思い。
アレスの方を向き何故か全員が大魔王エリザにしたように、だが恐怖とか威圧とかでなく、自分から頭を下げていた。
そんな事とは、知らずアレスは、セリカとレイカから抱き付かれていたのから逃げ出し謁見の間より出て行った。
この時、セシリーとマリーベルだけは、アレスの素性を知っており、それを公にする事はしなかった。
そう、アレスには勇者の称号が発現し。
そのうえ勇者としての力が目覚めていた、そして何故か魔王の称号まで発現していた。
なのでこの時点でアレスは、聖なる力と魔なる力の両方を習得していた。
実際はありえない事なのだ、相反する力を両方持ち、それを同時に制御するという事は、出来ないはずなのにアレスはそれを当たり前の様に制御を行なっている。
恐らくそれは、赤ん坊の時それも大魔王エリザと出合った時にエリザの魔素を吸収したのが原因なのだろうがその事は、誰も知る事はない。
そして、今回の飢饉の首謀者がアデルであるのと、それを収めたのが偶然やって来たアレスの話が、セシリーにより大魔王エリザに伝えられた。
「えぇー、アーくんがそんな事を?あの子そんな事、全然教えてくれなかったわよ」
その話を聞いて驚いていたが、アレスは何もその話はしてくれなかったと頬を膨らまして不満そうに答えた。
「それは、恐らくエリザ様を心配させたくなかったのだと、思いますよ」
「うぅん、まっいっか。それで、それでアーくんどうだった。ねぇセシリー」
「はぁいぃ、それはもうカッコ可愛かったですよ。ホントに見せて差し上げたかったですぅ」
アレスの勇姿をウットリしながら答えたセシリーだった。
「いいなぁ、私も見たかったなぁ。残念」
そのような話をしてそれから、今回の首謀者であるアデルをどうするかを決めていると。
「そいつ反省しているのでしょ。それにアーくんが粛清したのなら、死罪までする事ないわね。まあ領土と魔王候補の称号を取り上げて、一時の間牢獄で謹慎にさせた後、軍にでも入れて位置から学ばせなさい。それで今回の件は水に流しましょう。亡くなった者達と皆には、申し訳ないけど」
「はい、私もそれで良いと思います。それに恐らく皆も納得すると思います」
「えっ、何故?普通納得しないでしょ」
恐らく皆から反感の講義が来ると思っていたが、その考えとは違う答えが返ってきたので不思議になり聞き返した。
「いえ、実は先程の話に戻りますが、首謀者であるアデルを静め改心させたのがアレス様でありまして。最後にアデル自ら前に出てきて正直に申した後、他の皆が自分からアレス様に頭を下げていたのですよ」
その話を聞いてエリザは、ますますその光景を見たかったと心底残念がって。
突然立ち上がりセシリーに向けて言葉をかけた。
「あなた達だけずるい。その話はもういいわ。後はお願いね」
「えっ、エルザ様は何処へ?」
「今日は、もう寝ます。今からアーくんのところに行って。添い寝して貰うの」
そう言って執務室より出て行き、アレスの部屋に一直線に向かっていった。
そしてこの夜、アレスは自分のベッドに入って来たエリザに、嫌がる事無く一緒に寝ていた。
まあ実際、アレスは赤ん坊の時からずっと、この城の中で一番エリザの事が好きであるからだった。
これからもアレスが好きであるのと同じくらいに、大魔王エリザもアレスの事を好きで愛おしくて大切に育てていたのである。